Xに毎日のように投稿し、「ツイ廃」(ツイッター廃人)を自任する国民民主党の玉木雄一郎代表が2026年9月19日、「連休終了までデジタルデトックスします」と宣言し、SNSから姿を消した。
2日後、事務所が明らかにした行き先は、ロシアによる侵攻が続くウクライナの首都キーウだった。侵攻開始後、現職の野党党首として初の訪問だ。
「デジタルデトックス」は単なるSNS休止ではなかった。通信傍受や不正アクセスを警戒して普段のスマホを日本に置き、同行した深作ヘスス衆院議員(党国際局長)がレンタル端末を使用。経由地のポーランドでは当局者から「サボタージュに気をつけろ」と警告されたという。キーウ滞在は15時間。空襲警報は8回鳴り、2人の兵士の葬儀を目にした。
訪問の目的は、法の支配を守る日本の姿勢を与野党を超えて示すことと、ドローンを使った最前線の情報と知見を直接得ることだった。玉木氏は、安価なドローンを高価なミサイルで迎撃し続けることは難しいとして、日本の防衛予算について「半分ぐらいはもうドローンに全振りしたらいい」と語った。インタビュー後編では、戦地で見聞きした現実と野党外交の役割、日本が学ぶべきポイントを聞いた。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)
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ウクライナ・キーウの屋内施設で話す国民民主党の玉木雄一郎代表(手前)と深作ヘスス衆院議員(奥)。胸元には日ウクライナ友好のピンバッジが見える(写真提供:深作ヘスス事務所) -
キーウ市内で展示されたロシア製攻撃ドローン「ゲラン2」。翼にウクライナ語で「触るな」と書かれている(写真提供:深作ヘスス事務所) -
ウクライナの民族衣装・ヴィシヴァンカを着用した国民民主党・玉木雄一郎代表(手前)と深作ヘスス衆院議員(奥)。壁一面に並ぶ兵士の遺影と献花が、長期化する戦争の犠牲の大きさを示している(写真提供:深作ヘスス事務所) -
キーウで発令された空襲警報を知らせるスマートフォンの画面。最寄りのシェルターへの避難を呼びかけている(写真提供:深作ヘスス事務所) -
キーウの建物内に設けられたシェルターへの通路。壁には英語とウクライナ語で避難場所を示す案内板が掲げられている(写真提供:深作ヘスス事務所) -
キーウ市内でロシア軍の攻撃で被害を受けた建物。上部が崩落し、内部が露出した状態だ(写真提供:深作ヘスス事務所)
ロシアからの通信傍受や不正アクセスを警戒、普段のスマホは日本に
―― 玉木代表が「デジタルデトックス」を宣言し、怪しいと思ったらウクライナ訪問。驚きました。「ツイ廃」なのに、なぜスマホを日本に置いていこうと思ったのですか。
玉木: さすが......!端的に言うと、ロシアからの通信傍受や不正アクセスへの警戒です。ウクライナ訪問の前後に立ち寄ったポーランドでも、当局者から「サボタージュに気をつけろ」と言われました。安全保障分野でいうサボタージュは、鉄道の破壊や国会議員の暗殺なども含む、さまざまな破壊・妨害工作です。一政党の党首なので、非常に慎重に行動しなければいけない。個人端末を置き、レンタル携帯を使ったのは良かったと改めて思いました。
―― 現地で最も印象に残ったことは何ですか。
玉木: キーウ市内に入ると、街は本当にきれいで、一瞬、何もないのかなと思います。でも、私たちがいた15時間の間にも2人の兵士の葬儀が行われ、泣きじゃくる奥さんや恋人、若い女性がいました。ここは戦地なんだと、まざまざと感じました。
借りたスマホに入れた空襲警報アプリは8回鳴りました。集合場所に使ったホテルで最初に確認するのは地下シェルターで、「何かあったらここに入ってください」と説明されました。キーウは最前線から離れていますが、戦争をやっている国なのだと強く感じました。
一応ロシアに通告していたので、我々がいることは(ロシアは)多分知っていましたが、私がキーウを出た翌日には市内がドローン攻撃を受け、死者も出ました。元副大臣経験者から聞いた「(兵士の)戦死だけでなく、4年半も緊張の中に置かれ、国民みんながどこか心を病んでいる」という言葉が一番印象に残っています。
高市政権がロシアに宥和的な政策へ傾いているのではないか
―― 23年には、岸田文雄首相(当時)がキーウを訪問しました。野党党首が訪問する意義をうかがいたいです。政府と異なるメッセージを出せば「二重外交」との批判もあり得ます。
玉木: 今回の目的は二つありました。一つは、「力による現状変更を許さず、法の支配を守る」という日本のメッセージを、与野党を超えて示すことです。岸田首相はキーウを訪問しましたが、特に26年に入り、高市政権がロシアに宥和的な政策へ傾いているのではないかという疑念がありました。5月に経済ミッションを連れて政府高官がモスクワに入ったり、サンクトペテルブルクに学生を連れて行ったり......。(石油や天然ガスなどの資源開発プロジェクトの)「サハリン2」といった日本の権益を守る必要はありますが、G7(主要7か国)が一緒になって制裁を科している中で、「力による現状変更を許さず、法の支配を守る」という我が国の外交方針と反対のメッセージを出せば、ウクライナだけでなく国際社会から疑念を持たれます。
ヨーロッパで起きていることは、明日アジアで起き得る。日本は常にウクライナとともにあり、法の支配を守るという姿勢を、与党だけでなく野党も含めて伝える意義があります。森英介衆院議長、私、小野寺さん(小野寺五典・元防衛相)、与党、野党、与党(が相次いで現地入りした)という形で、超党派の支援を示せたのは良かったと思います。
―― もう一つの訪問目的は何ですか。
玉木: ドローンを使った新しい戦い方で、この4年半持ちこたえている最前線の情報と知見を直接得ることです。太平洋戦争は約3年8か月でしたが、ウクライナは大国ロシアを相手に4年半も持ちこたえています。ドローンとデジタル、AIを徹底的に活用しているからです。我々は真摯に学ぶべきだと思います。この年末に防衛3文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画の安保3文書)の見直しがあって、(ドローンなど無人アセットの大量運用をうたった)「新しい戦い方」と言っていますが、正直言うと、ちょっと生っちょろいというか......。
―― 現地で知見に触れて印象に残ったのはどういった点ですか。
玉木: スピードの速さです。現場でドローンが機能したりしなかったりするわけですが、それがすぐにフィードバックされ、良ければポイントが付いて次の入札で有利になる。ECサイトの「欲しいものリスト」のように、現場が必要な装備を注文してすぐに届ける仕組みもあります。そういうデジタルを組み合わせた最新の戦い方があるので、その知見を日本はもっと生かすべきです。
航続距離3000キロ?北朝鮮、中国もジェット推進型攻撃ドローン生産か
―― 逆にロシア側も、ドローンに関する知見を蓄積していそうですね。
玉木: ロシアと、兵士を派遣する北朝鮮も最新の戦い方の知見とデータを蓄積しています。ウクライナやポーランドでいろいろ教えてもらいましたが、逆に聞かれたのは、ほとんどが北朝鮮についてでした。日本は北朝鮮をどう認識し、どう対抗するのか。彼らからすれば、ロシアと北朝鮮が組んで戦っていると映っているからです。
現地で接した情報では、北朝鮮や中国もジェット推進型の攻撃ドローンの生産体制を整えています。時速500~600キロ、航続距離3000キロに及ぶといいます。
―― もし日本が標的になったら、あっという間ですね。
玉木: あっと言う間です。かつ、我々は(飛んでくるのは)弾道ミサイル、巡航ミサイルという前提で迎撃体制を整えていましたが、そのジェット推進型の攻撃ドローンが来たら、それはドローンで迎撃するしかありません。例えば1機500万円のドローンで500億円の施設を攻撃する。これを1発何億円もする(艦船発射型迎撃ミサイルの)SM-3とかで迎撃していては割が合いません。安い兵器には安い兵器で対応する必要があり、ジェットドローンを迎撃するドローンが必要です。
ウクライナ側は迎撃率の低下を非常に心配していました。かつては9割以上でしたが、ロシアがジェットドローンを使うようになり、6割を切っているといいます。10月8日の代表質問では、防衛当局間でドローン技術協力の協定を結べないか提案しました。
(日本のドローン開発大手)テラドローンさんが迎撃ドローンをウクライナに納入すると報じられ(テラドローンが10月14日に発表。連結孫会社の現地企業が納入)、ロシアが反発しています。日本はウクライナの知見とデータをしっかり生かして、日本にとって真に必要な防衛体制を整備すべきです。日本もドローン何百機入れました、という規模ではなく、北朝鮮や中国が攻撃型ドローンで戦闘態勢を整えるのであれば、日本も圧倒的にやるべきです。日本も予算をこれから増やしていくとのことですが、変な話、半分ぐらいは、ドローンに全振りしたらいいと思いますね。何兆円もかけるイージス・システム搭載艦が「令和の大和、武蔵」になるのではないかと心配しています。ああいうお金をAIやAIによる戦い、迎撃型ドローンといった分野に全振りした方がいい。
かつ、クイックな運用の見直しができる体制にする必要があります。整備計画を立てて3~5年かけて(導入)というのとは(現地では)周期が違って、3~4週間でアップデートしています。 防衛省は「新しい戦い方」と言っていますが、導入ペースも規模も、日本は遅すぎます。変化のスピードに対応できていません。
―― こういった話は現地で聞くからこそ解像度が上がりますね。国連総会のタイミング(現地時間9月22日)で高市早苗首相とゼレンスキー大統領の首脳会談が実現しました。今回のキーウ訪問が後押しした、という見方もあります。
玉木: キーウで大統領府の担当者と話した際、「本当はゼレンスキー大統領と高市首相が会ってほしかったが、今回は会えなかった」と、もう過去形で話していました。このまま会わなければ、国際社会に明らかに誤ったメッセージを出すと思い、会談すべきだとの声明を出して外務省にも伝えました。結果として短時間でも会談が実現したことには、多少なりとも貢献できたのかなと思います。
玉木雄一郎さん プロフィール
たまき・ゆういちろう 国民民主党代表。1969年香川県生まれ。東大法学部卒。93年旧大蔵省入省。2009年の衆院選で香川2区から初当選し、現在7期目。旧民進党幹事長代理、旧国民民主党共同代表を経て18年9月から同代表。20年9月に分党を経て新国民民主党設立、代表に就任。