500円だった天丼が730円...「てんや」深刻な客離れ 「庶民の味方」も値上げ続いて2か月連続で客数約1割減

   「庶民の味方」として親しまれてきた天丼チェーン「天丼てんや」で、客離れが進んでいる。2026年8月の既存店客数が前年同月比9.4%減、9月は10.9%減と、2か月連続で約1割落ち込む異常事態となっているのだ。それ以外の月でも、26年は3月を除いて客数がすべて前年割れとなっている。

   これまで客数の減少を、値上げによる客単価の上昇でしのいできたが、その戦略が崩壊しかねない状況だ。かつて500円で具材たっぷりの天丼を提供し、多くの人に愛された人気チェーンに何が起きているのか。

  • 天丼てんや(写真:西村尚己/アフロ)
    天丼てんや(写真:西村尚己/アフロ)
  • てんや新業態「おにどん」(左)(ロイヤルホールディングスの発表資料より)
    てんや新業態「おにどん」(左)(ロイヤルホールディングスの発表資料より)
  • 天丼てんや(写真:西村尚己/アフロ)
  • てんや新業態「おにどん」(左)(ロイヤルホールディングスの発表資料より)

ワンコイン→730円、天丼の価格が46%上昇

   親会社のロイヤルホールディングスが公表した月次資料によると、てんやの国内直営既存店は26年8月、客数が前年同月の90.6%、同年9月は89.1%に落ち込んだ。両月とも客単価は約8%上昇したものの、売上高は8月が2.0%減、9月が3.8%減だった。

   客離れは以前から続いている。25年も年間の既存店客数は前年比3.3%減。一方、客単価は9.1%上がり、売上高は5.5%増えていた。つまり、利用客の減少を値上げで補ってきた格好だ。だが、ここまで客離れが顕著になると、カバーできなくなる恐れがある。

   利益にも陰りが見える。てんや事業の25年の売上高は122億7600万円と前年から増えたが、経常利益は7億3500万円から6億6300万円へ減少。26年上半期も増収減益となった。原材料費の高騰が経営を圧迫している。

   てんやは1989年、東京駅八重洲地下街に1号店を開業した。それまで高級な専門店で食べるイメージが強かった天丼を、手頃な価格で日常的に食べられる「庶民の味」として提供することに成功。オープン当初は連日行列ができるなど天丼の大衆化を支え、2006年にロイヤルHDの傘下に入った。

   その人気を支えたのが、看板商品の「ワンコイン天丼」だった。海老、いか、きす(または赤魚)、かぼちゃ、いんげんの天ぷら5種類が載り、みそ汁付きで税込み500円。それが22年6月に530円、25年2月には620円と何度か値上げが繰り返され、グランドメニューの刷新を経て、26年6月から「元祖てんやの天丼」が730円で販売されている。

   「元祖てんやの天丼」の具材は海老、きす、いか、なす、いんげんの5種類で、かぼちゃがなすになったものの、以前の天丼と基本的な構成はさほど変わっていない。だが価格は、2022年まで続いたワンコイン時代から4年ほどで46%も上昇した。

   現在、天丼の最安値は「鶏と舞茸の天丼」の630円で、とり天、まいたけ、なす、れんこん、いんげんが載っている。しかし、かつてのように海老や魚介類が入った定番の天丼をワンコインで楽しむことはできなくなった。

国内店舗数はピーク時から大幅減

   もちろん、材料費や人件費などが上昇していることを考えれば、本来なら730円でも専門店の天丼としては十分に格安といえる。ただ、てんやはワンコイン時代のイメージが強く残り、その価格を武器に支持を広げてきたチェーンだ。それだけに、値上げによる反動は他の外食チェーンより大きいと考えられる。

   店舗数も大幅に減っている。19年6月末に国内206店を展開していたが、26年6月末には国内149店に縮小した。店舗減はコロナ禍の影響が大きいとされるが、ワンコイン時代から相次いだ値上げも決して無関係ではないだろう。

   てんやは現在、定番メニューの刷新や店舗改装、ブランドロゴの変更などを進め、味やサービス、居心地の向上を図っている。しかし、このまま客離れが続けば、国内店舗のさらなる縮小にもつながりかねない。

   物価高は落ち着く気配がないが、かつて高級料理だった天丼を庶民の味に変えた先駆者だけに、「気軽に立ち寄れる店」という魅力を失うことは大きな痛手だ。

   食材や調理法にこだわって価格に見合った満足感を高めるとともに、普段使いの客が納得できる「お得感」をどう取り戻すか。再起の鍵はそこにあるのではないだろうか。

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