2024年 4月 24日 (水)

最初は大嫌いな男だったのに(下)

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   全国各地に支店や支社をもつような大企業に勤めることは、給料やステイタスの面で恵まれており、恋愛でもプラスに働くことが多い。しかし、マイナス面もある。いつどこへ飛ばされるか分からない「転勤リスク」だ。どちらか一方が遠くに転勤となれば、過酷な遠距離恋愛のはじまり、はじまり……。しかも転勤先が海外ともなると、結婚か破局かの「究極の選択」を迫られることだってある。「社内結婚必勝法」の第1回に登場した園田絵美さんと坂本健一さんの場合もそうだった。

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「結婚して一緒にきてほしい」

   粘りに粘って、同期入社の絵美さんの愛をゲットした健一さん。しかし、つきあい始めて3年ほどたったとき、アメリカへの転勤辞令が出た。

   独身者は最低でも4年は駐在しないといけないと言われた。遠距離恋愛で乗り切るのはむずかしい、と考えるのが普通だろう。

「結婚して一緒にきてほしい」

   そのとき26歳だった絵美さんに、健一さんはプロポーズした。しかし絵美さんは、渡米することに踏み切れなかった。

「日本と違ってアメリカは広いので、駐在者はかなり広いエリアを担当することになるんですよ。月曜の朝、飛行機に乗ってどこかの州に行って金曜まで帰ってこない。平日は夫が家にいない生活です。一方で、駐在の奥さんは行動制限があるので、働いたりすることもできない」

   彼と一緒に行っても、自分は何もすることがなくて成長できないのではないか。そんな漠然とした不安があった。

「もし運命の人だったら、またきっと縁がある」

「子供でもいれば違ったんでしょうけど、まだ26だから、子供がどうとか考える年でもなかったんですよね」

   絵美さんの消極的な態度をみて、健一さんも一度は転勤を断ろうとしたという。すると、二人の共通の上司だった部長から電話がかかってきて、怒られた。

「お前が反対してんのか! お前が一緒に行かないからあいつが行かないんだ。お前も一緒に行け! 手当てがたくさん出るようにしてやるから」

   パートナーに加え、上司からも説得されたが、それでも、やっぱりアメリカに行く気にはなれなかった。一緒に行くか行かないか。さんざんモメにモメて、健一さんが渡米するころ、二人の関係はグチャグチャ。相手のことが好きなのか嫌いのか。それすらもよく分からなくなってしまった。そして、絵美さんは彼に告げたのだ。

「別れよっ。一回別れて、その間にそれぞれ好きなことをしよう。もしお互いに運命の人だったら、またきっと縁があるよ」

離れて暮らした「それぞれの5年間」

   梅雨空のもとの成田空港。新しい任地へと旅立つ健一さんのそばに、絵美さんの姿はなかった。会社のおかげで出会った二人が、会社のために別れることになった。

   それからまた、二人それぞれの生活が始まった。健一さんは飛行機に乗って見知らぬ土地を飛び回る毎日。一方、日本に残った絵美さんは以前と似たような暮らしを送りつつ、新しい彼氏ができて、しばし付き合ったりもした。

「自分の中ではもう完全に『別れた』という気持ちでした。でも、向こうから電話がかかってきたりして、なんだかんだで連絡は取ってましたね。『別れたけど仲のいい元カレ』という感覚。友達と一緒にアメリカに遊びに行ったときは、観光案内をさせたりして……」

   異国で久しぶりに会った健一さんは、以前よりも頼もしく見えた。手持ちの現金がなくなり困っている絵美さんのために、クレジットカード会社に電話して、現金を用意してくれたりもした。自分が全然知らない土地でたくましく生活している。その姿を見て、素直にすごいと思った。

   結局、健一さんの駐在期間は5年近くに及んだ。しかし、アメリカや日本で何度か会うことを重ね、帰国するころには再び元のような関係になっていた。

「ほかの人とつきあったりもしたけど、やっぱり彼が一番あうのかなと思ったんですよね。自分と全然違う考え方をして、自分に持っていないものを持っているところがいいんだな、と」

やっぱり「結婚は勢いとタイミング」

「もうお前ら、いいかげんに結婚してもいいだろ!」

   日本で再びつきあい始めた絵美さんと健一さんに、部長がハッパをかける。でも、二人はあいかわらずスローペース。「私たちもそろそろ結婚するのかね~」とどこか他人事だった。

   それでも周りがあまりにもうるさいので、試しに結婚式紹介センターに出かけてみることにした。一番最初に紹介されたホテルに行くと、「半年先の式場のキャンセルがたまたま出た」という。

「なかなか空かないですから、とりあえず仮押さえだけしたらどうですか?」

   そう薦められて、申込書に名前と住所を書いた。そのときは本気で結婚式をあげるつもりは全然なかったが、モタモタしているうちに時間がすぎ、キャンセルが難しくなってしまった。「早く結婚しろ!」という周囲の勢いにも押され、とうとう覚悟を決めるしかなかった。

「結婚は勢いとタイミングって言いますけど、それは本当だと思いますね。結婚式場を見に行ったとき、たまたまキャンセルが出ていなかったら、あのタイミングで結婚していかなかったと思う。勢いのほうは、私たちの場合、本人たちよりも周りのほうがすごかったんですけど(笑)」

   アットホームな雰囲気で行われた結婚式。そのとき、絵美さんは32歳。健一さんと出会ってから10年以上がたっていた。

社内結婚必勝法 其の2

    外国でのピンチに強い男はカッコいい。英語は仕事以外でも役に立つ。

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   ※記事中の人物名は仮名です。社内結婚必勝法第1回「最初は大嫌いな男だったのに(上)」もご覧ください。次回(第3回)は10月27日に掲載予定です。



社内結婚必勝法

社内結婚を果たした人たちを取材して、どのようにして出会い、交際を育み、結婚にいたったのかを聞く。「婚活時代」といわれる現代の、新しい恋愛法則が見つかるも!?

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