いま流行の「社内SNS」 本当に必要なのか

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   Aさんは、多角的な事業を展開するサービス系企業に勤めています。昨年、Aさんの会社で、「流行りの社内SNSを導入しよう」という話が若手から持ち上がりました。

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「月に10時間の損失」と経理担当が反対

「もともとは、各事業部門にいる社員のマップをつくろう、というブラインドコンセプトだったんです。アルバイトやパートも含めて、人材配置の最適化や異能人材の発掘をして、社内の風通しを良くし、活気のある組織にしよう、と」

   そのために、業務課題を糸口としたコミュニケーションの活発化を企図したのです。

   ところが、これに異論が出てきました。経理を担当する上司でした。プロフィールの写真やイラストをはったり、掲示板や日記に書き込むなんて、仕事をサボっているのと変わ らない、というのです。

「毎日、30分を社内SNSの利用に費やしたとして、そのぶんは生産性がないのだから、月に10時間の損失だ、その10時間にも給料は出ているんだ、と言うんですね。そう言われてしまうと、それはそうなんですけど、今よりも生産性を上げようということで考えたわけですから、こちらも簡単に引き下がれません。いまの30分の損失が将来の1時間分の生産性向上につながるという考え方もできるじゃないですか、と反論したんです」

「社内横断プロジェクト」も悪くない

   ところが、コストカットが必須のご時世に、コストを投入してさらにサボりの口実を与えるとは言語道断、と一向に議論がかみ合いません。さすがに業を煮やし、思い切って内々に社長に直訴してみました。

「社長は一言、『いいんじゃないの? 面白そうだし』って。拍子抜けしましたが、『ただし、利用や運用のルールをきちんとつくって、経理担当氏をちゃんと説得しなさい』と」

   Aさんらは、発案者グループの一人だった総務担当者に管理人を依頼、ルールづくりの会議を業務時間外に繰り返しました。注意したのは、社内SNSを会社裏サイト化させない、という点だったとAさん。安く導入できる社内SNSパッケージも探してきて、なんとか経理担当氏の首を縦に振らせました。

「いま思えば、社長と経理担当氏はグルで、ぼくらを試した、鍛えてくれたのかもしれません。若手にすれば初めての社内横断プロジェクトでしたし、企画を発想し、具体的に実行プランを詰め、説得して突破するというプロセスは、まさに仕事そのもの。その過程で、実際に異能人材も見つけましたしね(笑)」

   いまは一人で仕事をしている私も、思わず、会社員時代が懐かしくなりました。

井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。TBSラジオ「アクセス」 毎週木曜担当。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社刊)「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文芸春秋社 刊)など。
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