「有害サイト」アクセス制限したのはいいけれど・・・

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   マーケティングコンサルティングの会社を経営するSさん。数年前に独立し、順調に業績を伸ばしてきました。独立した頃は3人だった社員も、クリエイティブ関連の協力会社からの常駐社員、中途採用組と、15人を超えるようになっています。

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   ある日、大きな展示系の仕事をやっていた時のこと。連日、徹夜で作業が続いていいかげん疲れていたところへ、最後の最後に小さくはない変更が入ってしまいました。

   変更案に対するクライアントからの返事を待つ間は手持ち無沙汰な時間です。

「ふと、若手が何をやっているのかを見てみたところ、メッセンジャーにオンラインゲーム、オークション。一番びっくりしたのが、創業メンバーのTがエロサイトを見ていたことでした」

   これを放っておくとクセになる、と考えたSさんは、さっそくセキュリティソフトを導入しました。

「アダルトフィルターにマルウエア(=不正ソフトウェア)などの警告、任意のサイトへのアクセス制限ができるものです」

   制限を解くパスワードは、絶対に他人が想像できない文字列ということで、奥さんの名前と生年月日、それに血液型を組み合わせたものにしました。

   事実上、Sさんしか制限を解くことはできません。間もなく、社内でオンラインゲームやオークションをしたり、エロサイトを閲覧する者はいなくなりました。

「パソコンやネットなんてなかったら良かったのに」

「ところが、しばらくして、子供向けにフラッシュゲームをつくってくれ、というクライアントが現れた。『事例をもってきてほしい』と言われたのはいいんですが、担当社員のパソコンからはゲームサイトへアクセスできません。かといって、パスワードを公開するわけにもいかず、したかなく共用のマシンを1台つくり、必要な時には私がパスワードを打ち込むことにしたんですが……」

   スケジュール共有ソフトに「いつの何時までに共用マシンの制限を解いておいてほしい」とのリクエストが山のように書き込まれるようになりました。ちゃんとした業務のことだとわかれば、解かないわけにはいきません。

「外出していても、電話で呼び戻されたりするんです。それに、嫁さんとケンカした次の日とか、パスワードを打ち込むたびに顔や言われた嫌みなんかを思い出して、どうにもいたたまれなくなっちゃう」

   いっそ、パソコンやネットなんてなかったら良かったのに、と無い物ねだりをしてみたくなるのだとか。

   あちらをたてれば、こちらがたたないというのは、いつの世も変わらないことなのかもしれません。

井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。TBSラジオ「アクセス」 毎週木曜担当。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社刊)「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文芸春秋社 刊)など。
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