アナウンサーのストが「格差」を広げる

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   以前書いたメディア格差論について。先日、ある記者さんからこんなことを言われてしまった。

「みんな現状に胸を痛めていますが、編集と経営は別だから、私達にはどうしようもないのです」

   そんなことはない。編集と格差はちゃんとつながっている。そういえば先日、某テレビ局もストライキをうったことだし、テレビ局をモデルに説明してみたい。

【社内】
労組「一緒に連帯してストライキして、一時金を確保しましょう!」
アナ「ええ、いいわよ。ところで他のスタッフは?」
労組「ああ、あいつら制作会社だからいいっすよ」
 ↓
【労使交渉】
労組「資本家は、労働者の生活を守れ!」
社長「ていうか、僕オーナーじゃないし。ぶっちゃけサラリーマンだから」
労組「労働者の生活を守れ!」
社長「いやだから、僕の給料知ってるじゃん。中間管理職とそんなに変わらないじゃん」
労組「労働者の生活を守れ!」
社長「設備投資や配当削ったら君らだって困るだろ?」
労組「労働者の生活を守れ!」
社長「…ふぅ、わかったよ、なんとかするから」
 ↓
社内通達、下請け発注費一律○割カット
 ↓
【現場】
制作会社「またですか…これ以上カットされては、私たちは生きていけません…」
アナ「まあ可哀相に。でも、編集と経営は独立しているの。だから私たちにはどうにもできないの。ね、そうでしょ社民党?」
社民党「わんわん!」
【番外編】
共産党(揉み手をしながら)「今こそマルクス主義復権の好機!」

コストカットはすべて非正規雇用や下請けに向かう

   サラリーマン社長ばかりで資本階級も存在しない現代日本では、労使で交渉する余地と言うのは非常に少ない。本来なら業績に連動して人件費も変動すべきだが、正社員の処遇見直しは難しいため、コストカットはすべて非正規雇用や下請けに向かうことになる。先進国中、ほかに類を見ない大手と中小下請けの格差は、これが原因だ。

   一応フォローしておくが、これはなにもメディアだけの話ではなく、全産業共通のアングルである。人材の流動化には、企業規模の壁を崩すという意味もあるのだ。

   既得権を失うことを恐れる連合や、格差が無くなると食っていけない貧困活動屋さんは、いつも中小下請けの悲惨さを引き合いに出して「見て!こんなに正社員も苦しんでいるの!だから規制緩和なんて無理よ!」と言うが、なんのことはない、自分たちがケツの毛までむしった下請けを、さらに弾除けに使っているようなものだ。

   大手の理不尽なコストカットや天下りに直面している人は、正社員とはいえ流動化に賛成するメリットはあるはず。同時に、大手の正社員は「正社員と経営は別だから、我々は賃上げを要求する権利がある」と知らん振りする前に、胸に手を当てて考えて欲しい。その権利のとやらのために、どこかで誰かが苦しんではいないかを。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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