多様な人脈つくれる「社員寮」を見直そう

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   社員寮は一時、余分なものの代表のようにいわれ、手放す企業が多かった。だが、ここにきて、一転して独身寮の充実を検討している企業が増えているという。社員寮経験者としては、職場活性化の視点からも効果・効用が見直されてよいと思う。

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「人脈ができる」と新入社員の入寮希望者が増加

   最近の若者は、入社3年で会社を辞めてしまうという。その理由は、人手不足や偏った成果主義の運用によって、新入社員が放置されてしまっているところにあるのではないか。採用コストを考えればもったいない話だ。

   そんな中、新入社員に独身寮へ入ってもらい、先輩社員と交流する場を作ることで定着率向上を狙う会社がある。ある大手商社では、バブル期にほぼ全廃していた独身寮を2006年に復活させ、2008年度には大卒以上の新入社員約130人のほぼ全員が入寮したという。

   一時は「会社以外で社員の顔なんか見たくない!」と完全にソッポを向かれていたはずだが、最近では潮目が変わっている。「他部署の人や先輩とも話がしやすく人脈が築ける」という理由で、入寮を希望する人が多いのだそうだ。

   私自身も、新卒で独身寮に入って効果を体験した者の一人だが、寝食をともにした関係は、公私がミックスしているせいか親密度が増す。特に若い頃の仲間は、いつまでも仲間のままでいられる。人間が生きていくには、意外に共同体の要素が必要なのだ。

   仕事や部署ではない共通項で、人間関係を構築できるところがいい。何といっても同じ寮、隣の部屋という「偶然」がもたらす関係性があるし、そこで知った趣味や出身地などの話題から広がる関係性もある。そういう多様な人間関係が、情報のネットワークを豊かにするのである。

「同じ釜の飯を食った仲間」との関係は長持ちする

   わが独身寮は個室だったが、2つの個室に入り口がひとつという作りで、相部屋のようなルームメイトが存在した。私は同期社員のK・I氏と同室だった。当時彼は人事部で、現在でも会社に在籍して人材採用・開発支援の分野で活躍中だ。

   隣室には、姥谷芳昭氏とT・I氏というコンビがおり、総務部だった姥谷氏とは、のちに『伝わる化』(PHP研究所)という本を一緒に書いた。T・I氏は、独立して売り上げ50億円を超える広告会社を経営している。

   彼らとは仕事も生活時間も違っていたが、同じ釜の飯を食った仲間であるためか、20数年たっても「俺、お前」の関係でいられる貴重な存在だ。もし独身寮がなければ、こういう関係もなかっただろうと思うと、会社への感謝も気持ちがわいてくる。

   また、これだけ景気が悪くなると、会社の福利厚生に対する学生の目も変わってくる。「独身寮がある」というのは、優秀な求職者を集めるインセンティブにもなるだろう。

   ただ、社員寮で社員が固まってしまってもよくない。入社3年目くらいまでは社員寮に入ってもらい、同期や先輩・後輩のよい関係を作ってから住宅手当に切り替える。こういう施策は、職場の活性化につながるのではないかと思う。

大塚 寿

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大塚寿(おおつか・ひさし)
1962年群馬県生まれ。中央大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。ヤマメの養殖で留学資金をつくり、1991年5月より渡米、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)にてMBA(国際経営学修士号)を取得。現在、マーケティング・コンサルティングやオーダーメイド企業研修を行うエマメイコーポレーション代表取締役。『職場活性化の「すごい!」手法』(PHPビジネス新書)など、著書多数。
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