2024年 4月 25日 (木)

「ブラック会社」と「シュガー社員」悪いのはどっちだ

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   悪質な違法行為とまでは言えないけれど、ちょっと怪しいグレーな会社の慣例を放置しておくと、権利意識の高いシュガー社員たちの非難の対象となります。社員の善意に寄りかかった経営は早めに見直して、健全さを高めておくことも重要な経営リスク対応となります。

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夜中まで会社にいたのに「時間外手当が支払われてない!」

   C子さんは、上場会社に5年間勤務していましたが、仕事にやりがいを見出せないまま退職し、転職サイトで見つけたベンチャー企業に再就職しました。転職先は経営者も若く、職場は活気にあふれていたので、C子さんは入社早々から張り切って仕事に打ち込みました。終電間際まで会社に残ることもしばしばでした。

   そして待望の給料日。給与明細を見たC子さんは、わが目を疑いました。時間外手当が一切計上されていないのです。出社時刻と退社時刻は上司も知っているはずなのに、計算ミスかなと思って総務に問い合わせたところ「上司の承認がない残業には手当ては出ませんよ」と言われてしまいました。

   確かに入社早々で勝手が分からず、仕事を教えてもらいながら何とかこなしていたので、通常よりも時間が掛かっているとは言えます。また、指摘されたミスを修正していて、結果的に会社に遅くまで残ることもありました。

   しかし、自分の未熟さにも原因があるとはいえ、会社にいたのは間違いないのだから時間外手当はすべて支払われるべき、というのがC子さんの考えです。さらに、緊急の用事で会社から突然呼ばれて出勤した日の「休日手当」もついていませんでした。

   上司にクレームを入れたところ、「休みの日に呼び出したのは悪かったけど、用事は2時間程度で終わったし、このくらいでは誰も手当てを付けていないんだよね」とのこと。C子さんは、確かに会社が利益を出すためにみんな頑張っているけど、私まで犠牲にならなくても、と不満を募らせてしまいました。

社員に犠牲を強いる「グレーな慣例」を放置するのは危ない

   そこでC子さんは「時間外手当が出ないのなら、残業は一切できません」と宣言して、定時ぴったりに席を立つことにしました。すると周囲の人たちからは「忙しい他の人たちの仕事を手伝うつもりはないのか」と言われ、上司からは「君は本当に協調性がないよね」と呆れられてしまいました。

   ついに堪忍袋の緒が切れたC子さんは、この会社とは今後一切かかわりを持たないと決心し、翌日から無断欠勤したまま出社をやめてしまいました。C子さんの自宅には会社から電話が入りますが、無視を決め込みます。退職届を返送するように、制服を返すように、との依頼も無視しました。すべて会社が悪いのですから。

   もちろん、会社側にも言い分があります。人事担当者は、

「管理職が指示または承認をした残業以外は認められないことを、入社前に本人に伝えてあります。他の社員に聞くと、彼女はネットでゲームをしていて帰りが遅くなる日もあったようです。引継ぎもせずに突然退職するなんて、本当に非常識な人でしたね」

と、困惑しています。

   しかし会社側も、社員の善意に寄りかかる経営の見直しが必要かもしれません。残業に上司の指示や承認が必要なのはよいとして、実際に残業が発生している場合には、実態を調べずに時間外手当を支払わないのはトラブルの元です。また、休日出勤には、振替休日を与えるか、代休を与えた上で休日労働に対する割増賃金を支払う必要があります。

   社員に犠牲を強いてばかりいる慣例を放置すれば、優秀な人材は流出し、退職時に後ろ足で砂をかけられることも増えます。それを「あいつはシュガー社員だったからな」で済ませていると、いずれ「あの会社、ブラックらしいぜ」と逆に噂を流されるリスクが高まると考えておくべきです。

田北百樹子

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田北百樹子(たきた・ゆきこ)
札幌市出身。田北社会保険労務士事務所所長。保険関係の手続や就業規則作成にとどまらず、人事考課制度導入や社員教育など、企業の人事労務を幅広くサポートしている。「シュガー社員」の名付け親で、09年3月にはシリーズ第3弾となる『ブラック企業とシュガー社員』(ブックマン社)を刊行。
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