「職場で笑ってはいけない」 ある出版社の「奇妙なルール」

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   いつの時代もマスコミ業界は人気があって、どんな会社でも門を叩く人が絶えない。でも、いざ中に入ってみたら想像していたのと全然ちがってガッカリした、という話をよく耳にする。期待と現実のギャップが大きい業界なのだ。これから紹介する出版社のケースも、そんなミスマッチの一例である。

先端的なイメージの人気出版社に入ってみたら・・・

オフィスの外観が近代的だからといって、内部もそうとはかぎらない(写真はイメージ)
オフィスの外観が近代的だからといって、内部もそうとはかぎらない(写真はイメージ)

   東京の有名私大を卒業した中田理香さん(仮名)はファッション関係のライターを経て、その出版社に就職した。社員数は100人程度と中規模だが、50年以上の歴史がある老舗といえる出版社で、マスコミを目指す学生ならば誰もが知っている。都内の一等地にあるオフィスビルは洗練された外観で、ブランドイメージも先端的で好ましいものだった。

   中途採用ではあったが、学生のときから憧れていた会社に入ることができた。狭き門をくぐり抜けて採用通知をもらったときは本当にうれしくて、編集部に記者として配属された中田さんの胸は希望にあふれていた。

   しかし実際に働きだすと、外から見ていたのとは全く違う、その会社の「本当の姿」が立ちはだかった。先端的で自由なイメージとは正反対の封建的な社風。それを象徴するのが、奇妙な5つのルールだった。

ルール1:職場で笑ってはいけない

   入社してまもなく、情報通の女子社員にトイレで「この会社では笑ってはいけないんだよ」と教えられた。社内で楽しそうに振る舞ってはいけない。大きな声で笑うのはもちろん、何かの話題で盛り上がったりしてもいけないのだという。正直「バカみたい」と思ったが、みんなそうしているので、会社では笑わずに過ごすことにした。「笑いのない編集部に面白い雑誌が作れるのだろうか」という疑問をいだきながら・・・

ルール2:名物編集長よりも目立ってはいけない

   この会社の看板雑誌の編集長は、テレビにもときどき登場する有名人。外では最先端を行く女性編集長としてチヤホヤされている。社内では独裁的な権限をもつ彼女には、誰も面とむかって意見を言うことができない。口だけでなく、服装の面でもみな自粛気味で、女性の編集部員はみんな地味な黒いスーツを着ている。聞けば、編集長より目立ってはいけないのだそうだ。

ルール3:社長を廊下で追い越してはいけない

   ある日、中田さんが急ぎの用事で廊下を早足で歩いていたとき、たまたま社長と並ぶかたちになった。そして、中田さんの足がちょっと前に出たとたん、「君、失礼じゃないか!」と社長に怒鳴られた。一見どこにでもいそうなメガネをかけた優しいおじさんで、入社前の面接でもフランクな感じだった社長だが、社内ではニコリともしない人だった。このときの叱責も冷酷な言い方で、思わず背中がゾクっとなった。

ルール4:12~13時以外に食事をしてはいけない

   取材や編集の仕事は相手しだい。予定通りに進まないことも多い。だから記者や編集者の食事は、各自バラバラにとるのが普通だ。しかしこの会社ではどんなに忙しくても、昼食はきっちり12時から13時の間にすませないといけないのだ。ある女性記者が取材から戻ってきて自分の机でパンを食べていたら「1時すぎているから食べちゃいけないんですよ!」と同僚に怒られたこともある。「臨機応変」という言葉はここでは死語のようだった。

ルール5:ブラインドの高さはきっちり揃えないといけない

   この出版社のオフィスは全面ガラス張りで、どの窓にも遮光用のブラインドが据え付けられていた。ブラインドの高さは、すべての窓で同じ高さにそろえないといけなかった。各窓の光の入り方とは関係なく、ブラインドの下端が一直線になっていることが不可欠。見た目を重視する社長の趣味ということだった。もし一つの窓だけブラインドが他より下におりていたりすると、社長から内線電話がかかってきて直すように注意されるのだ。

「植物みたいな人が多いですよね」

   自由で活気のあふれる職場を想像していた中田さんは「なんて意味のないルールに縛られている会社なんだろう」と幻滅せずにはいられなかった。こんな会社で感情を押し殺して働いているとだんだん生気が失われていく気がしたが、外出先でもこんなことを言われた。

「あなたの会社の人は植物みたいな人が多いですよね」
「ロボットみたいな感じの人がたくさんいますよね」

   もともと感情豊かなタイプの中田さんにとって、この状況はきつかった。目に見えないロープでがんじがらめに縛られているような感覚。会社では自分の席に座っているのも辛く、家に帰ってもよく眠れない。ストレスからくる衝動食いで体重も増えたし、「あの会社、大変でしょう?」と取材先の人に心配されて思わず泣いてしまったこともある。

「笑うことを禁じられた職場で過ごすうちに、いつのまにか、笑いを忘れた人間になってしまいました」

   入社して半年後、彼女は辞表を出した。



   【会社ウォッチ編集部より】
   ※あなたの会社の「奇妙なルール」を教えてください!   >>>情報提供はこちらへ

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