2024年 4月 19日 (金)

ネット時代のケンカのお作法――5つのポイント

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   「お前なんて役立たずだ!」

と公衆の面前でケンカを売られようものなら、誰しも気分はよろしくないものですし、反論の一つや二つでもしたくなるのが人間の常です。さすがにいい大人になると、そんな言い方をされることは、あまりありませんが。

   ところが、昨年の夏、私はそのような体験をしました。「ライフネット生命は役にも立たない」というタイトルのブログ記事が書かれ、ネット上で話題になったのです。

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「我が子」への批判記事にどう反論するか、じっくり考えた

「ライフネット生命が別に安くないし、役にも立たない件について」と題された反論記事はネットで大きな反響を呼び、100件以上のはてなブックマークがついた
「ライフネット生命が別に安くないし、役にも立たない件について」と題された反論記事はネットで大きな反響を呼び、100件以上のはてなブックマークがついた

   ライフネット生命は、社長の出口と一緒に2年がかりで設立の準備を進め、去年営業を始めたばかりの会社。自分がゼロから作った会社というのは、自分のアイデンティティーそのもの、ないし自分の子どものようなものであり、それを面と向かって「役立たず」と言われることは、顔面パンチを食らったような気分でした。

   一個人のブログなので目くじら立てるべきではないのかも知れませんが、戦後初の独立系生命保険会社として、我々がネット上でちょっと話題になっていたこともあり、瞬く間に400近いはてなブックマークを集めました。

   生命保険会社の副社長という立場上、ポーカーフェイスで平静を装いつつも、どのように反撃をしようか、じっくり考えていました。

   結果的には、7か月経過した頃に自分のブログに反論記事を書いたのですが、その過程で、「ネット時代のケンカのやり方」ということについて考えさせられました。このことはブログで一度触れたことがありますが、ブログだけでなく、メールでのやり取りにも適用できそうなので、改めてポイントをまとめてみたいと思います。

1. 読んだ瞬間に反射的に反応せず、まずは一呼吸おく

最低、一晩はおく。できれば、もっと長い間、寝かせる。感情的に反論して、いい結果になった試しはない。効果的な反論をするためには、とにかく冷静になることが大切。ラブレターの類は勢いで夜中に書きあげるのが大切だが、電子的に議論をする場合には、時間を置く方が効果的。

2. 相手の文章を何度も読み返す

一番かっこ悪いのは、相手の文章をきちんと読まないで、批判をしたり反論したりすること。相手や第三者に「いや、そういうことじゃないでしょ・・・」と思われると、反論が効果的でないだけでなく、自分の株も下がる。むしろ行間を読んで、相手の真意を理解しようとする。あげ足とりはしない。

3. まずは相手の正しい点、いい点を半分くらいは認める

相手が100%悪くて自分が100%正しいということは、絶対にない。大抵は、6対4とか、51対49とかのせめぎ合いなのである。とすれば、まずは相手の主張のうちに正しいところをフェアに認める。そうすることで、正しくないポイントが明確になるだけでなく、相手や第三者に対する説得力も一気に高まる。

4. 戦い方は(1)ファクツ(事実認識)で勝負するか、(2)現場感で勝負するか、(3)ロジックで勝負するか、の三つしかない。自分はどれを選ぶのか、考える

相手を説得するためには、
   (1)そもそもの事実誤認を訂正したり、新たな事実を見つけてきて相手に突き付ける
   (2)相手が知らない、自分だからこそ知っている現場の話や生の声を提示する
   (3)相手の組み立てた論理の矛盾を追及する
のいずれかしかない。自分は今回、どれで戦う?

5. 罪を憎んで人を憎まず。攻めるべきは人格ではなく、その人の論であることを忘れない

攻めているのは相手という人間ではなく、あくまでもその人の主張だったり文章である。人に対する攻撃はしない。できたら、電話や対面などオフラインの手段で連絡を取って、言葉のケンカを本当のケンカにしないようにする。

   特に大切なのは、最後の5でしょうか。私はメールやブログで緊張感が生じると、すぐに電話をしたり、相手に会いに行ったりするようにしています。ほとんどの場合は、「話せばわかる」ですから。ちなみに今回のケースでは、反論記事の掲載後、ご本人からブログのコメント欄に心温まるバースデーメッセ―ジを頂いたり、ブログで出口の本をご紹介頂いたりして、すっかりお友だち状態だったりします。

   真剣に議論することは大切なことであり、時にはケンカしてしまうこともありましょう。しかし、大切なのは、上記のような「お作法」を守ってやることなのではないでしょうか。

岩瀬 大輔

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岩瀬大輔(いわせ・だいすけ)
ライフネット生命保険・代表取締役副社長。1976年生まれ。幼少期をイギリスで過ごしたのち、開成高校を経て、東京大学法学部卒業。在学中に司法試験合格。ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ホールディングスを経て、ハーバード経営大学院(HBS)に留学。日本人で4人目となる上位5%の優秀な成績(ベイカー・スカラー)を修めた。帰国後、元日本生命の出口治明氏と二人三脚で、今までの常識を打ち破る新しい生保会社「ライフネット生命保険」を立ち上げ、2008年5月に営業を開始した。近著に『東大×ハーバードの岩瀬式!加速勉強法 』(大和書房)、『超凡思考』(幻冬舎、伊藤真氏との共著)。
「生活者にとって便利でわかりやすく、高品質な生命保険サービスを提供する」という理念のもと、インターネットを主要チャネルとして、新しい生命保険を販売している。既存の保険会社に頼らない「独立系の生命保険会社」として戦後初めて免許を取得し、2008年5月に営業を開始。業界のタブーとされた「保険料の原価」を開示するなど新しい試みに挑戦している。
直球勝負の会社―戦後初の独立系の生命保険会社はこうして生まれた
直球勝負の会社―戦後初の独立系の生命保険会社はこうして生まれた出口 治明

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