2024年 4月 20日 (土)

勝ちに不思議の勝ちなし スポーツに学ぶ「7つの教訓」

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   2008年に日本一になった西武・渡辺久信監督の著書『寛容力~怒らないから選手は伸びる』や、早稲田ラグビー部を常勝軍団に変えた清宮克幸・前監督の『究極の勝利~最強の組織とリーダーシップ論』など、スポーツの成功者のマネジメント論はビジネスの現場でも参考になる。

   海の向こうの米国では、ハーバード大学ケネディ行政大学院で教鞭をとるナンシー・カッツ准教授が、成功しているスポーツチームの「勝利の法則」を体系的に分析して論文にまとめている。『職場のモデルとしてのスポーツチーム(Sports teams as a model for workplace teams: Lessons and liabilities)』だ。この論文が示す「7つの教訓」は日本の会社でも使えそうなので、要点をかいつまんで紹介しよう。

教訓1:協力と競争をうまく組み合わせよ(Integrate cooperation and conpetition)

スポーツの「教訓」は仕事にも生かすことができる
スポーツの「教訓」は仕事にも生かすことができる

   成功するチームは「協力」と「競争」をうまく組み合わせて、チーム全体のモチベーションをうまく高めている。ポイントは「競争」を制限つきのものにすること。メンバーを競わせる場を「練習のときだけ」などと限定して、本番の試合のときは競争を必要最小限におさえることだ。

   プロダクトデザインを手がける米国の会社IDEOでも、制限つきの「競争」を取り入れて成功している。メンバー同士の競争は、一定の時間(たとえばブレインストーミングの間)や目標(たとえばアイデアの創出)、前提ルール(たとえば他者を非難しない)といった条件のもとで奨励されている。

教訓2:初期の勝利を組織化せよ(Orchestrate some early wins)

   先手必勝。チームの最初の勝敗は、その後の試合展開に大きな影響を与える。ある調査によれば、ホッケーで最初に得点したチームの3分の2は、そのままゲームをものにしている。

   これは会社でも当てはまる。つまり、小さな勝利をまず経験させて、好循環を作り出すことが重要だ。経営者には、課題を細かく分割したり短期間の初期課題を定めたりして、成功を繰り返し経験させるといった工夫が求められる。

教訓3:負けグセを破れ(Break out of losing streaks)

   こんな話がある。負け続きで立ち直る見込みがないと思われていたアメフトチームがある試合でやはり負けそうだったとき、一人の選手がチーム全体に「俺達は負けてるんじゃない。最も大事な状況にいるんだ」と呼びかけた。これが試合の機運を変え、結果的にそのチームは逆転勝利を収めたという。このように、失敗つづきの悪循環を変えるためには、その原因をさぐり、自らそれをコントロールしていくことが重要だ。

   経営者もチームのメンバーが困難に直面したときには、このアメフト選手のような役割を果たすことが期待される。壁にぶつかっている原因についてあらゆる角度から話し合える場を持ち、それをコントロール可能な構成要素に分解することで、メンバーの士気を良い方向に持っていくことができるのだ。

教訓4:練習のための時間を作り出せ(Carve out time for practice)

   プロスポーツのチームは、実践の場としての「試合」と学びの場としての「練習」を交互に繰り返している。ところが、会社のチームは往々にして「実践」に重点を置きがちで、「練習」がおろそかになってしまう。そこで会社の経営者は、学びの場となりうるような時間や場所を意識的に確保していく必要がある。

   たとえばコンサルティング会社のマッキンゼーは近年、1週間に1日は自宅で仕事をすることを推奨している。ふだんの仕事の現場では、コンサルタントはクライアントに常に良い印象を与えるように求められ、失敗は許されない。しかし自宅で仕事をしているときは自分の失敗や限界を認めやすく、新しいアイデアを論じることも可能なので、「学びの場」として活用できるのだ。

教訓5:ハーフタイムを設けよ(Call half time)

   スポーツの試合において、ハーフタイムの休憩はゲームの重要な要素である。ハーフタイムは時計のアラームのように、チームのメンバーたちがプレーの内容やその効果を見直すよい機会となる。

   一方、職場でもハームタイムのような「見直し」の時間がとられることはある。ある報告によれば、プロジェクトの締切が迫ったチームが自分達の戦略を問い直し、修正軌道を行うタイミングも、仕事の「中間点」で起こるのだという。会社チームを率いる経営者は、戦略を見直す「ハームタイム」をあらかじめ設定しておいたり、締切を細かく設けて適切なタイミングで介入する、といった工夫が必要だろう。

教訓6:メンバーを固定しろ(Keep team membership stable)

   チーム編成にあたってはメンバーをできるだけ固定化し、連帯を強める時間を取ろう。プロバスケットボールのNBAの14年分の試合記録の調査によると、メンバーの変動が少ないときほどチームは勝利している、という傾向がある。チームのメンバーが固定されることで、選手はお互いのコンビネーションについて学び合う機会を得られるのだ。

   一方、仕事の切り替えが早い今日の職場では、チームのメンバーを長期間固定することは難しい。しかし、チーム編成や役割分担などを経営者が工夫することによって、チームの安定度を高めることができるだろう。

教訓7:試合について復習せよ(Study the game video)

   試合が終わったあとでその過程の分析することは、新しい教訓を学ぶ機会を与えてくれる。プロスポーツのチームでは、選手たちに試合の直後にビデオを見せ、さらに同じ週の間に再び見せたりして、ビデオを用いた学習を一般的に行っている。

   米国の海兵隊は演習の最後に、隊員が自分たちの成功したポイントや失敗したポイントについて数分間ふり返る場を設けているが、これもビデオ学習と似た効果をもたらす。このように会社の経営者も試合のビデオを見返すのと同じように、職場のメンバーが自らの仕事ぶりをふり返るための「問い」を投げかける必要がある。

   以上が、カッツ准教授が抽出した「7つの教訓」である。この論文は経営者を意識して書かれたものだが、「ハーフタイムを設けて見直しをする」とか「負けグセを破るために失敗の原因を考える」といった教訓は、個人で取り組む仕事でも、積極的に取り込んでいけそうだ。

寛容力 ~怒らないから選手は伸びる~
寛容力 ~怒らないから選手は伸びる~渡辺 久信

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