休職中なのに「マンションを購入したい」という職員がいるのですが?

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   ほとんどのビジネスパーソンにとって、仕事での付き合いと私生活のそれは別物だ。いくら上司でも、勤務先に迷惑が掛かるような事態でない限り、職員の私生活に強制的に立ち入ることはできない。

   しかし、病気による休職者の場合は、健康な職員とは違い、何らかの対処をすべき場合もある。ある公務員は「休職者の私生活にどこまで立ち入ることができるのか」と悩みを打ち明ける。

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「底値のうちに」と営業マンに勧められて

――ある地方自治体の人事担当者です。私たち公務員もご多分にもれず、メンタルヘルス不調による休職者が多発しています。休職者への対応は、人事部門と当該部署の管理職が連携して行っています。
   最近、休職して1年半の部下を持つ部長から、こんな話を聞かされました。久しぶりに自宅訪問をしたところ、その部下から、

「近々マンションを購入しようと思うのですが、どう思いますか?」
と相談されたというのです。
   部長は「体調が完全でないのに」と思いつつ、なぜいま高額の買い物をしようと思うのか、理由を聞きました。すると、
「実は、すでにマンションを2つ持っているのですが、このご時勢で値段が急激に下がってきているんです。これをカバーするには、底値のうちにもう1つ買っておいた方がいいと不動産会社の営業に勧められ、どうにも断れなくて…」
と言うではありませんか。
   部長は「そりゃあ、休職中なんだし、やめたほうがいいんじゃないか。だいたい、購入資金はどうするの」と聞くと、
「新しく買ったマンションを賃貸にして、その賃料で返済するので全然大丈夫です!」
と答えたそうです。
   体調を心配して訪問した部長が「開いた口がふさがりませんでした」と言うのも、よく分かります。まあ、以前は休職中にマルチ商法にはまって、従業員に鍋を買わせる「鍋パーティー」の勧誘をしていた職員がいましたが、それに比べれば周りに影響が出ていないので、まだいいかと思いましたが。
   買い物はいくら個人の自由とは言え、こういう常識を超えることをする職員に対して、このまま放っておいてよいものか悩んでいます――

臨床心理士・尾崎健一の視点
主治医に情報を伝えて治療の対象としてもらう

   なかなか難しい問題ですね、本人の意思といえば意思ですから。最終的には本人の判断なので無理に止めさせることは難しいとは思いますが、「人生を左右する大きな決定は、少なくとも病気が治ってからすべきだろう」とアドバイスするくらいは、最低限してあげてもよいのかなと思います。

   ただし、本人の判断がつかない状況につけ込んで、執拗に勧誘して買わせるなどの手法であれば悪質です。今回の件がそれに当たるかどうかは、休職者の病状によるでしょう。また、うつ病は「買い物依存」を併発するケースもあります。高価な買い物をしようとしているという情報を主治医に伝えて、治療の対象としてもらうことも考えられます。本人には病気の認識がない場合が多いので、医師やカウンセラーに相談することをお勧めします。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
従業員の不祥事は職場のイメージダウンにつながる

   社員の私生活については、会社の秩序を乱す行為でない限り、原則として会社は干渉できません。しかし、休職中に借金をしてマンションを購入するというのは、常識的に考えておかしな行為だと思いますし、放置するには会社にもリスクがあると思います。

   もし借金の返済が滞れば、それが原因で病気が悪化してしまうかもしれません。職員の自宅や職場に借金取りが来て周囲の人間に不安を与え、職場への不信感を招くことも考えられます。また、大企業の従業員や公務員の不祥事は、実名とともに職場の名前が報じられることが多く、イメージダウンにもつながってしまいます。

   本人が会社の助言に耳を傾けない場合には、家族の協力を仰ぐしかありません。このような場合に備え、入社時に家族(実家)の連絡先や、必要に応じて「身元保証人」の連絡先を確保しておくことが必要でしょう。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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