「社員が風俗店でアルバイト」と通報を受けました

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   給料が上がらない、ボーナスもカット…。会社からの収入で生活できないとなると、就業時間後のアルバイトも考えなくてはならない。

   ただ、どんなアルバイトでも許されるのかというと、会社も迷うところがあるだろう。ある総務担当者は「社員が風俗店でアルバイトをしている」と通報を受けて当惑している。

「就業規則違反だから解雇も当然」と息巻く

――大手メーカーの人事総務担当です。先日、営業部のA君から、同じ部のアシスタントをしているB子さんが風俗店でアルバイトをしている、という連絡を受けました。
   話によると、B子さんは就業時間後に歓楽街のキャバクラで働いているようです。A君は、

「会社の風紀を乱すし、世の中にバレれば会社の評判が悪くなる。マスコミにかぎつけられないうちに辞めさせるべきだ」
と訴えます。また、副業や二重雇用は就業規則違反だから、解雇も当然と指摘しています。
   確かに、現状の就業規則ではアルバイト禁止となっていますが、これをどこまで厳しく運用するかについては難しいところがあります。折りしもこの不景気で、生産ラインは自宅待機となる日も生じており、人事部ではちょうど「アルバイト容認」の規定を作ろうと検討していた矢先でした。
   そこで、B子さんに詳しい話を聞こうとすると、A君は、
「この話は自分から聞いたということを伏せて欲しい」
ということでした。ただ、他の人からの情報によると、A君はB子さんと付き合っていて、A君がキャバクラで偶然B子さんを見かけて別れ話に発展したということでした。
   そう考えると、通報には個人的な感情も含まれているようです。でもB子さんの行為にも問題がないとはいえません。どのような対応をすれば迷っています――

臨床心理士・尾崎健一の視点
アルバイトのガイドラインを作った方がよい

   最近では、若い女性の「憧れの職業」の上位にキャバクラ嬢が入っているそうです。お小遣いかせぎにもなるということで、この手の問題は多いのではないでしょうか。

   就業規則に「副業禁止」の項目を設ける理由は、おもに「心身の疲労により会社の業務に支障が出ること」「会社の信用・評判の悪化が出ること」「会社の機密情報・ノウハウが漏洩すること」を防ぐためです。したがって「遅刻、早退、欠勤はどの程度か」「仕事に影響が出ているかどうか」などを確認し、本人と話をしておくべきです。その上で、その種のアルバイトを辞めてもらうよう促す方向でしょうか。このご時勢ですので、アルバイト容認の方向かもしれませんが、会社も、どのような職種であれば認めるのか、ガイドラインを持っておいたほうがよいかもしれません。

   また、単に就業規則違反というだけでは、一般的に即解雇は難しく、「初犯」であれば戒告などで済ませることが多いようです。しかし、戒告後も続けていた場合や、副業により何らかの問題が生じていることが確認できれば、厳しい処分で臨むことになるでしょう。

社会保険労務士・野崎大輔の回答
就業規則違反を通報した人への配慮も必要

   会社は、社員の違法行為や社則違反行為に関する情報は、いち早く収集して対応したいところです。この仕組みを作るには、通報者に不利益が及ばないことを保障することが必要です。そうでないと「会社に通報しても損をするだけ」と悪い評判が立って、情報が集まらなくなるからです。

   担当者はA君との信頼関係を築き、十分な配慮を払っておきましょう。そして、対応の過程で「B子さんには、誰からの通報か分かってしまうかもしれない」ことを事前に伝えておいた方がよいです。B子さんには、遠まわしに「こういう噂がある」として注意する程度の気遣いは必要です。その上で、調査結果をふまえて、社内規程に則り粛々と対応を進めていくことになります。A君はB子さんからは「最低!」とののしられるかもしれませんが、会社としてそこまでのフォローは難しいです。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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