「ユーザー課金」が熱い!ネットで金を儲ける7つの方法(上)

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   インターネットでお金を儲けるにはどうすればいいか。これまでは無料でサービスを提供して広告で稼ぐモデルが中心だったが、最近はサービス利用者にお金を払ってもらう「ユーザー課金」にも熱い視線が注がれている。そのノウハウを発表する公開セミナー「第3回マネタイズHacks」(主催ライブドア)が2009年6月24日、六本木で開かれた。ミクシィやはてななど、業界の先端をいくネット企業の企画・営業担当者7人がそれぞれの「錬金術」を披露した。

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その1「使い続けてもらうプラットフォーム設計が重要だ」
――ヤフージャパン研究所・柿原正郎氏

   「ネットサービスの業界ではいま、ユーザー課金が注目されている。景気が悪化している中で、広告市場全体が小さくなり、ネット広告も成長が鈍化している。広告は重要な収益源の一つだが、それに加えた新たな収益源の確保が大きな問題になってきている。

   ネットサービスの収益モデルは、(1)広告モデル(2)手数料モデル(3)テナントモデル(4)課金モデルの4種類がある。これまでは広告モデルが中心で、ユーザーに直接お金を払ってもらう課金モデルは存在感が小さかった。

   広告モデルは、サイト利用者と広告主という異なるユーザーグループがいるマルチサイドなマーケットだが、課金モデルは顧客と直接対峙して、サービスや商品の価値を見出してもらってお金を支払ってもらうという、1対1の相対取引マーケットが前提。

   お客と1対1の直接取引をする課金モデルでは、サービスや商品を継続利用してもらうことが新たなベネフィットを生み出すような仕組みづくりが非常に重要。使い続けてもらうプラットフォーム設計が重要になってくる。

   ユーザー課金の類型としては、利用者登録料をもらう方式と、コンテンツやサービスの購入料を払ってもらう方式がある。コンテンツ・サービス料は、従量課金と定額課金などをうまく組み合わせ、お金を払ってもいいなと思ってもらうことが大事になる。

   ネット業界では、ウェブのユーザー行動にばかり目がいきがちだが、我々の生活はウェブの内側で完結するわけではない。ウェブサービスを利用する場合でも、リアルワールドで動機やニーズが発生し、ウェブを利用した後に再びリアルワールドに戻ってくるという流れがある。リアルワールドとウェブワールドの連続した行動の流れ、すなわち"行為ストリーム"をきちっととらえて分析することが重要ではないか」

その2「サイトで人気がある機能は有料化しないほうがいい」
――ピクシブ社長・片桐孝憲氏

ピクシブ社長・片桐孝憲氏
ピクシブ社長・片桐孝憲氏

   「ピクシブ(pixiv)はイラストを投稿するコミュニティサイトで、2007年9月にスタートした。ユーザー数は約100万人。イラストが一日1万枚~1万5000枚投稿されている。月間で7億1000万PV。ピクシブを支えるサーバは基本的にビックカメラで買って組み立てて調整している。約140台あって、半分がデータベースサーバとなっている。

   最初はマネタイズよりもインフラを安く作るのに集中していて、1年ぐらいまったくマネタイズのことはやらなかった。会員数が30万人を超えたあたりからマネタイズを始めた。現在のピクシブの収益源は、(1)純広告(2)オーバーチュアを使ったコンテンツマッチ広告(3)アマゾンのアフィリエイト(4)有料会員(月額525円)。いまはアフィリエイトと有料会員に力を入れている。

   ピクシブには、アニメ・ゲーム・フィギュアや、絵を描くことに関心が高いユーザーが多く集まっている。アマゾンでよく売れた商品は、(イラストレーターhuke氏のオリジナルキャラクターをフィギュア化した)「ブラック★ロックシューター」と、『萌えキャラの上手な描き方』という書籍。あと、ピクシブ関連の本も売れている。

   いろいろ試した結果、平等にいろんな商品を紹介するよりも、売れている商品を集中的に出すほうが効果的だとわかった。ユーザーが1個ちゃんと買えば、ついでにいくつか商品を買うので、それによってアフィリエイトの収益があがる。

   よく売れるのは発売前・発売直後の商品で、どこよりも早く紹介するというのがポイント。ユーザーの関心が高ければ、値段が1万円だろうが2万円だろうが関係ない。そのほか、ピクシブ通信というブログで、人気の商品を紹介して収益化をはかっている。

   今後はユーザー課金(有料会員)にも力を入れようと思っている。有料機能にしたほうがいいと思っているのは、自己PR・自己表現・自分用カスタマイズに関係するもの。自分のページのレイアウトをかえたり、背景の色を変えたりとか。コミュニケーションのための機能も、消費しやすいのでいい。

   有料機能にしないほうがいいものは、サイトの中で人気がある機能。たとえば、イラストのランキングを1~300位まで出しているが、それを有料化してしまうと、サイト自体の魅力がなくなってしまう。一般の人にはどうでもいいニッチなものを有料機能にしていこうと思っている」

その3「ゲーム系SNSでは友達招待の仕組みをうまく使え!」
――ウノウ社長・山田進太郎氏

ウノウ社長・山田進太郎氏
ウノウ社長・山田進太郎氏

   「ウノウでは、『まちつく!』というケータイで自分の町を育てるゲームを提供している。自分の町の掲示板でコミュニケーションするほど、早く町を育てることができるということで、ソーシャル要素が入っているのが特徴。基本的に無料だが、有料部分もアイテム課金という形で取り入れている。2009年5月リリースで、現在のユーザーは1万3000人ぐらい。

   ゲームのアイテム課金は、自分で運営してみると非常に面白い。実際やってみないと分からないことがたくさんあったので、6つほど学んだことを紹介したい。

   1つ目は、「ポイント=お金」にしないということ。たとえば、グリーの「きせかえジュエル」という仕組みは、2100円で購入するとアバターの上に宝石が表示されるものだが、さらにオマケゴールド(G)が2000Gもらえるようになっており、「ポイント=お金」という単純な仕組みではない。欧米のソーシャルゲームはポイントをお金で買う仕組みが主流だが、この分野に関しては日本のほうが進んでいると思う。

   2つ目は、消費パターンを知ることが重要だということ。 (1)ポイント購入(2)サイト内で自慢できるアイテム(3)サイト内で有利になるアイテム(4)時間短縮(5)友達へのギフトといったものが考えられるが、これだけではないはず。もっと消費パターンを知ることで、価値を作っていくことができる。

   3つ目は、長く楽しめるようにすること。売り切りのパッケージゲームと違い、ケータイゲームでアイテム課金をするためには長時間楽しんでもらうことが必要。『毎日少しずつでもこれだけ長く遊んでいるんだから、お金を使ってもいい』と思ってもらうようにする。

   4つ目は、友達招待を有効に使うこと。ゲーム系SNSでは、招待者にアイテムやポイントをプレゼントするのは非常に有効な手段。そして、ポイントよりもアイテムのほうが圧倒的に価値が高い。(人から人へクチコミで広がっていく)バイラル性はすごく重要な仕組みなので、今後はミクシィアプリのバイラル性にも注目していきたい。

   5つ目は、スポンサーサイト登録をうまく使うこと。これは、スポンサーサイトに登録するとポイントなどが獲得できる仕組みで、ケータイサイトではほぼすべてのサービスが用意している。スポンサー登録が有効なのは、300ポイントに300円払うぐらいなら、300円のサイトに登録して300ポイントをもらおうという思考が働くからだと考えている。

   6つ目は、『調整!調整!調整!』。ゲーム内は小さな世界なので、日々ユーザー動向をチェックして、ポイントやアイテムの流通量をコントロールしていく必要がある。ゲームマスターのセンスがすごい重要。また、できるだけ早く始めたほうが有利だ」

その4「つくったものは無駄にならない。あとからでもマネタイズできる」
――面白法人カヤック企画部クリエイター・玉田雄以氏

面白法人カヤック企画部クリエイター・玉田雄以氏
面白法人カヤック企画部クリエイター・玉田雄以氏

   「カヤックは、鎌倉にあるウェブの制作会社。『つくる人を増やす』というのが経営理念で、アイデアと発想力を重視したサービスをつくっている。

   新サービスの制作期間は短いもので1日で、長くても1ヶ月ぐらい。新規事業開発チームの年間サービス作成数は、07年が77サービスで、08年が88サービス。09年は99サービスを作るのがミッション。3日に1個ぐらいの計算なので、あまり時間はかけられない。

   なにが当たるか分からないから、作ったら放置して次の制作に入る。でも放置しているだけでは収益にならないので、作って放置してからマネタイズを考える。マネタイズの方法は3つある。

   1つ目は、人気が出たものを伸ばす。放置していたものが盛り上がってきたら、どう伸ばすか考えて、ユーザーの声を取り入れながら拡張と改修を繰り返す。サービスにユーザーがつけば媒体価値が上がって広告を置けるようになるし、機能追加による課金化もできる。実践例としては「ポケットフレンズ コンチ」などがある。

   2つ目は、サービスの独自性を生かす。サービスを生かして商品開発したり、同じスキームをつかったパッケージを販売したり、サービスそのものを売ったりする。たとえば『こえ部』では、『愛を読む人』という朗読をテーマにした映画にひっかけて、世界の名作を読み上げてもらう企画を実施して、最後に目の不自由な方の団体にCDを配布した。

   3つ目は、受託制作への転用。たとえば『16小節のカブソング』という株の騰落グラフを音符に見立てて音楽にするサービスがあるが、これをサンプルとして企業のプロモーション企画を受注したり、プログラマーのトレーニング用に使ったことのない技術の導入実験としても活用できた。結果として、受注増につながったり、工数や教育コストが最終的に下がる効果が得られてコスト削減につながった。

   我々は『つくったものは無駄にならない』と考えている。いっぱい作ってゴミの山のようにもみえるが、なんだかんでお金にはなっている。とにかく作ってみることが大事。あとは、楽しくやること。

   また、『あとからでも十分にマネタイズできる』とも考えている。そのためには、考えることをあきらめない。作ってそれで終わりではなく、そのあと、どうやってマネタイズしたらいいのかとか、ほかのサービスをどうやって生かしていったらいいのかとその後の提案や開発に商品転用に頭を使う。

   ただ、新サービスを作るときによくあるものを作ってしまうと、最終的に転用先がなくなる。できるだけ独自の方向性をもたせていくことが重要だと考えている」

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