新聞社によるコピペや誤報が横行するのはなぜか?――情報通信学会レポート(上)

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   新聞社をはじめとするマスメディアを中心に回ってきた「ジャーナリズム」の世界が、インターネットという新しいメディアの登場によって激変している。現在のような「多様なメディアが相互に連結して、クモの巣上のコミュニケーションが現出している社会」のことを、学習院大学の遠藤薫教授(社会情報学)は「間メディア社会」と名付けて研究しているが、その研究発表が2009年6月28日、東京・町田の桜美林大学で開催された情報通信学会大会のなかで行われた。

   発表の場には、ブログ「ガ島通信」で知られるジャーナリストの藤代裕之さんも登壇し、旧メディア「新聞」と新メディア「ブログ」の間にみられる「共振・依存関係」について語った。そして「間メディア社会」を象徴するかのように、その模様は、敬和学園大学の一戸信哉准教授(サイバー法)によってミニブログ「Twitter」で生中継された(tsudaられた)のだ。

   ここでは、Twitterで中継された二人の研究発表の内容を、一戸准教授の許可を得て掲載するとともに、発表を聴いた同准教授の感想を紹介したい。

>>Twitterからジャーナリズムは生まれるか?――情報通信学会レポート(下)

「ほとんどの情報は発信されても、人々に届くことなく消えていく」

Twitterの一戸信哉准教授のページには、藤代さんや遠藤教授の発言が次々とアップされていった
Twitterの一戸信哉准教授のページには、藤代さんや遠藤教授の発言が次々とアップされていった

   「<間メディア>社会におけるジャーナリズム」と題された研究発表は28日午後2時45分から約1時間にわたって行われた。まず遠藤教授から、次のような研究会の趣旨説明があった。

遠藤: ありとあらゆるコミュニケーションが多元的に併存している環境のなかで、「ジャーナリズム」とは何なのか。ビジネスとしての新聞についてはわからないが、それらにつらなる社会に関する記述は、残していかなければならない。それはどのような形なのか。

   このようなテーマ設定を受け、藤代さんの発表が始まった。藤代さんはブログの登場で爆発的に増えた情報量の大きさを示しながら、米国のソーシャルニュースサイト「digg」に代表される「ミドルメディア」の存在意義について説明した。

藤代: 国内のブログ数は1690万、記事総数13億5000万。情報通信政策研究所の調査より。選択可能情報量はこの96-06年で530倍に。いまやほとんどの情報は、単に発信されただけで、人々に届くことなく消えてしまう。

藤代: 参入障壁の高かったメディアの寡占状態が消えてしまった。どうやって届けるかが重要な時代になった。

藤代: 2006年にミドルメディアという概念を提唱した。マスメディアと個人メディアの中間にあるメディア。おばさんの口コミなども含む。

藤代: プラットフォーム提供型(diggなど)。これは情報量の増大を背景にしたもの。メディアの3層構造の中で、マスメディアは4マスだが、ラジオはそろそろミドルに落ちてきたか。ミドルメディア、マイクロメディア・パーソナルメディア。

新聞とブログの間でおきる「共振・依存関係」

   ミドルメディアがつないでいるのは、新聞に代表される「マスメディア」とブログをはじめとする「パーソナルメディア」だ。2005年ごろまでは新聞にとってブログはとるに足らない存在だったが、ここ数年は両者の間に「共振・依存関係」が生じている、と藤代さんは語る。そこには、いくつかの問題があるという。

藤代: ブログ初期の状況。ネット上の言論は便所の落書きだ、という批判が強かった(新聞業界)。2003-2005年ぐらいまで。現在は、マスメディアも巻き込まれていっている。

藤代: メディア「間」の共振、依存関係があらわれている。ネットの情報がマスメディアに、マスメディアの情報がネットに、というような循環。

藤代: この状況の背景。1.ミドルメディアの登場 2.新聞社のネット事業本格化(ネットで取材する記者も出てきている。情報ソースにもしはじめた)。中高年のデスクのリテラシーが不足しているために、「特ダネ」化(俺が知らないから特ダネ)。記者の中には自作自演を2ちゃんねるでやって ...

藤代: 楽天の個人情報販売問題。読売が取り上げる2週間前に、Gigazineに出ていた話題。読売は、ネットがソースであることを明示していない。

藤代: 毎日の厚労省次官殺害の犯行予告「スクープ」。ウィキペディアの記事を見て、GMT時刻を日本時刻とみあやまった。

藤代: この件もネットでさんざんたたかれた。循環の事例。

藤代: コピペ、誤報の記事が横行している。これは新聞社がやるべきことなのか?ブロガーの立場は弱く、批判した個人・団体は守られるのか。

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