パート社員が「宗教の勧誘」に熱心すぎます!

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   不況の影響で、日常生活が受ける打撃が大きくなっている。こういう不安の多い社会では、人間の力を超えた「宗教」に頼りたくなる気持ちが高まってくる人も増えそうだ。あるスーパーでは、同僚に対して熱心に布教するパート社員が現れて、店舗の売上にまで影響が出てしまっているという。

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「何で休憩時間にまで口出し?」と抗議されて・・・

――小売業の人事担当です。当社は都内に食料品のスーパーを数店舗構えていますが、そのうちの1店舗の業績が、ここ数ヶ月で急激に悪化しました。原因を調査したところ、この店のイメージを落とすような噂が出回っていて、お客が店を遠ざけていることが分かりました。

   どうやら噂の元は、以前当社に勤めていたパート社員で、「あそこのスーパーは怪しい宗教を布教している人がいるから行かない方がいい。油断していると買い物中に勧誘されるわよ」と近所に言いふらしているようです。

   そこで社内を調査したところ、半年ほど前に入社した女性パート社員のAさんが、他のパート社員に対してある宗教の勧誘をしていることがわかりました。勤務態度には問題が無いようなのですが、休憩時間になると熱心に布教活動をしています。

   店長には「Aさんと一緒のシフトにしないで下さい」と申し出をする人も現れているようですし、長年勤めているパート社員からも「対応してくれなければ辞めます」と言われています。悪い噂を流した退職者も、しつこく勧誘された末に、嫌気が差して辞めたのだそうです。

   Aさんには勧誘をやめるよう口頭で注意したのですが、「仕事はきちんとやっていますよ! 何で休憩時間にまで口出しされなければならないんですか?」と抗議されてしまいました。しかし、このまま放置しておけば、社員のモチベーションも低下するし、お客も減って店はつぶれてしまうでしょう。どうすればよいのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「就業規則」で「職場内の宗教活動」を禁止できる

   日本人は宗教に対して差別的なイメージを持つ人は少なくないですが、憲法20条は「信教の自由」や「宗教的行為の自由」を保障しており、パート社員の信教自体を問題にすることは避けなければなりません。

   ただし、職場の秩序が保たれないことを理由に、職場での宗教的行為を禁止することは認められうると思います。そのためには就業規則での規定が必要になり、「職場内での政治活動や宗教活動をしてはならない」といった条項がよく使われています。これを定めた上で、従わなければ指導や処分を行うことができます。デリケートな問題で「言った言わない」という争いになりやすいので、指導を行う場合には複数の社員が同席した方がよいでしょう。

   パート社員の意見を放置すれば、モチベーションは下がり、「あの店長には何を言ってもやってくれない」と見放されてしまいます。まずは社内の対応をきちんと行い、それから噂の源になっている退職者に、悪い噂を流さないようにお願いする必要があります。

臨床心理士・尾崎健一の視点
一人ひとりの「適切な自己主張」で対処することも必要

   不況になると、宗教の勧誘が増えます。生活が不安定になると何かよりどころが欲しくなるという心理を狙ったもので、今後増加する可能性はあります。今回のケースでは、会社の取り組みは野崎さんが説明したとおりですが、それ以外に「個人での対応」が考えられます。信教は個人の自由なので、勧誘に対して「私は興味がないから、もう勧誘しないで」という意思を表明することも自由です。そして、断った人に対して繰り返し勧誘すれば、「迷惑行為」というクレームの対象になりうるでしょう。

   トラブルを避けるポイントは、相手の信仰そのものは否定せずに、自分の主張を伝えることです。このような「適切な自己主張」のことを「アサーション」と言います。ビジネスの現場においては、往々にして「自分が優位に立つためにいかに威圧するか」もしくは「自分をどれだけ押し殺すか」という立場を取りがちですが、「自分を大切にしながら、相手も大切にする」言動のスキルが最も重要です。

参考図書:畔柳修著『「言いたいことが言えない人」のための本―ビジネスではアサーティブに話そう!』(同文舘出版)

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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