2024年 4月 25日 (木)

「職能給」と「職務給」の違いを正しく理解しよう

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   たまに「職能給」と「職務給」の違いについて聞かれるので、簡単にまとめておきたい。

   職能給については、特に説明の必要はないだろう。日本企業の99%はこれで、能力に応じて賃金が上がっていく「属人給」の一種だ。

   本来なら能力によって差をつけるものなので実力型になりそうなものだが、日本においては勤続年数をベースにする慣習がある。「長く勤めるほど経験も積んで優秀だろう」という素朴な思想が元になっていて、そういう意味では儒教的と言えるかもしれない。言うまでもないことだが、現在の年功序列制度を形成しているのが、この職能給である。

   一方の職務給とは、担当する業務内容で処遇を決める方法で、人ではなく「仕事に値札がつく」と考えればいい。単純に能力ベースなので、勤続年数やバックボーンはほとんど関係ない。

   「具体的にイメージできないよ」という人もいるかもしれないが、実際には誰でも毎日目にしていると思われる。というのも、非正規雇用労働者のほとんど全ては、この職務給であるためだ。

   たとえば、うちの近所のコンビニのバイトは、セブンイレブンからam/pmまで、どこでも時給1000円だ。20代だろうが50代だろうが、男だろうが女だろうが、そして業界一位だろうが赤字企業だろうが、中央区でレジをうつという仕事に対して、相場が確立しているわけだ。

仕事に値札がつく「職務給」で多様な人材に活躍の場を

   一見すると、長く勤めれば勤めるほどお給料の上がる職能給の方が働きやすそうに思える。ただし、全員のお給料を毎年上げ続けるなんてそもそも無理な話だ。バブル崩壊後の92年から非正規雇用が拡大したのは、無理を承知で職能給体制を維持しようとした結果に過ぎない。結果的に、非正規雇用・中小下請けといった層から、大手を中心とした中高年正社員層へ所得移転が行なわれているわけだ。

   さらにいえば、年齢で処遇を決める職能給だと、一度レールを外れた人間はリベンジが効かない。就職活動でこけた元新卒、卒業時がたまたま不景気だった氷河期世代はもちろん、出産・育児で休職した女性もキャリア形成で不利となる。

   そう考えると、実は職能給のメリットというのは意外に少なく、デメリットの方が目に付く時代であるのは明らかだ。若い労働者が豊富に溢れ、欧米先進国というお手本があった時代ならともかく、少子化で経済も成熟した今、多様な人材に活躍の場を提供できる職務給の方が望ましいだろう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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