乱世には「アルバイト出身」の経営者が向いている!?

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   首都圏を中心にチェーン展開をしているリサイクルショップで、アルバイト出身の取締役が誕生した。「入社当時は将来のことは何も考えていなかった」という新取締役は「アルバイトからの勤務経験が今に活きている」と語る。

当時は「その日がよければそれでよい」という感覚だった

「自分が成長できたのは自由な環境があったから」と語る大川新吾氏
「自分が成長できたのは自由な環境があったから」と語る大川新吾氏

   リサイクルショップ「エンターキング」を運営するサンセットコーポレイションは2009年6月29日、新取締役に大川新吾氏を選任した。大川氏は元フリーター。「エンターキング」にアルバイトスタッフとして入社し、12年目の今年、取締役への就任を果たした。

   1976年生まれの33歳。千葉県内の私立高校に入学したが、大学受験に失敗。専門学校に入学するも間もなく中退してしまい、しばらくは無気力でその日暮らしのフリーター生活を送っていたという。

「将来について考えていたことといえば、『背広を着て満員電車には乗りたくない』ということくらい。日払い・完全歩合給の仕事をしていたころは、必要な分だけ稼ぎ、あとは休みたければ休むという生活。その日がよければそれでよいという感覚でした。でも、25歳ぐらいになったら考え直そうということと、受験には失敗したけれど同年代のエリートには負けたくないという気持ちは常に持っていました」

「お店をどうすればお客様が喜ぶか、アルバイトさんが知っている」

   1997年に「仕事が楽そうだったから」という動機で、「エンターキング」にアルバイトスタッフとして入店。すぐに中古ビジネスの利益率の高さに驚き、一気に仕事内容に興味を持つ。3ヵ月後には正社員に任用され、1年後には店長に。99年には商品部のゲームバイヤーに抜擢される。

   そこでスタッフを育て部下を昇進させる喜びを知って、2004年に店舗統括部エリアマネージャーに就任。2007年店舗統括部長を経て、2009年営業統括本部長に就任。取締役に任命されることになった。大川氏は、

「当社では社員数の2.5倍のアルバイトさんに働いてもらっています。現場でお客様と接する機会が一番多いのはアルバイト。お店をどうすればお客様が喜ぶのか、彼らが一番よく知っている。私はアルバイト経験がある分、彼らが店長や会社をどう見ているのか、どうすれば彼らのモチベーションを上げられるか、普通の社員よりもよく理解できます」

と、アルバイト入社のメリットを語る。また、

「自分が成長できたのも、チャンスを与えてくれた上司がいたから。お店をお客様に合わせていくためには、店舗をまとめるマネージャーに権限を与えることが重要です。彼らに成長の場を与えたい」

と、現場出身者らしい視点でマネジメントを考えている。

「いまは無気力でもいいが、プライドを忘れないで」

   フリーター生活を送っていた大川氏は、かつて想像もしなかった昇進を果たし、より重い責務を負うことになった。いま、かつての自分と同じように無力感を持っている若い人たちに伝えたいことは何だろうか。

「現段階では無気力でもいいと思います。好きな事をやりたければやればいい。ただ、何歳になったら自分を見つめ直そうということは、ぜひ決めておくべきです。あとは、その時点で何者かになっていなくても、『自分は変われるんだ、頑張れるんだ』というプライドを忘れないで欲しいですね」

   また大川氏は、取締役の立場から、ひとこと付け加えた。

「当社のアルバイトさんには、私の経歴をみて、取締役までのキャリアステップがあることに希望や夢を持ってもらいたいです」

   アルバイト出身で経営者に就任した人といえば、最近ではカレーハウスCoCo壱番屋の浜島俊哉社長(2002年就任)や旅行代理店エイチ・アイ・エスの平林朗社長(08年就任)、ジャストシステムの福良伴昭社長(09年6月就任)などがいる。

   いずれも創業者社長からの若返りという意図も見られるが、以前の常識が通じない乱世には、エリート社員よりも、現場を良く知るアルバイト出身の経営者が向いているのかもしれない。

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