おとなしい女子社員が「ウソ」で社内を大混乱に

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   一見普通な社会人なのだが、あるきっかけで「トラブルメーカー」として、周囲を巻き込んで大騒ぎを引き起こす人がいる。なぜ、急にそんなことが起こるのか。社内カウンセラーは、誰もが持つ人格の一部が突出した「人格障害」ではないか、というのだが・・・。

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課長の「ストーカー行為」に対する苦情が一転して・・・

――商社の人事担当です。普段はあまり目立たない事務職のA子から、「隣の部署の妻子ある課長が付きまとってきて困る」という相談を受けました。「夜中に今から会えないか?と何度も電話をしてくる」「朝、待ち伏せして一緒に出勤しようとする」「断ると暴力を振るうことがある」など、迷惑なので何とかして欲しいという話でした。

   これはストーカー行為だと、青くなって課長本人に聞いてみると、きょとんとして「妻とは離婚してA子と結婚することで話がついている」と言うではありませんか。なんでも、すでにマンションを購入し、同棲も始めているとか。

   A子の上司に最近の状況を確認したところ「体調が悪いようなので、産業医に診てもらおうかと思っていた」とのこと。調べてみると、確かに急な休みが多かったり、残業命令に従わずに帰宅するなど、業務に支障が出ている様子でした。

   ただ、同僚に聞いてみると、A子は出社している日には男性社員と元気に世間話をして仕事をしていない時間が多いとか、上司の家を夜遅く訪れて関係を持っているらしいとか、怪しい噂も出てきました。

   そこで、事実関係を確認しようとA子を呼び出しましたが、突然「ストーカーの話はウソでした。対応の必要はありません」と言って部屋を飛び出し、翌日から会社を休んでしまいました。数日後、上司には「体調不良で通院中」と連絡が入ったようですが、同棲中のマンションには帰っておらず、課長も連絡が取れずに困っています。

   どうしてよいか分からず社内カウンセラーに相談すると「人格障害のおそれもある」ということでした。私は担当として慎重に情報収集をし、警備会社の手配を準備をしたりして、A子に良かれと思ってやってきたあげくに「ウソでした」と言われて、一体どうしていいのやら――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「会社の風紀を乱す社員は放置できない」

   社員同士の私的なトラブルには、会社側からアクションを起こすことは難しく、目に見える生産性の低下や労働環境への悪影響で判断するのが通常です。不倫でもめていても介入しにくいですが、「付き合っている2人の行為が目に余る」とか「妻が会社に乗り込んで大騒ぎになった」とかいう苦情があった場合には、人事担当の出番です。就業規則には、あらかじめ「他人に不愉快な思いをさせたり、会社の秩序、風紀を乱したりする行為をしてはならない」という趣旨の条項を入れておき、それに基づき対処しましょう。

   今回のケースでは、まずは上司に「噂」の存在を知らせ、行動を注意した方がいいでしょう。そのうえで、A子さんの出社後に、上司と共に呼んで、体調不良があれば事実確認したうえで、無断欠勤や遅刻、勤務態度について注意すべきです。「ウソでした」ということについては、担当者は多大な迷惑を被ったでしょうが、残念ながらそれ自体は処分の対象とするのは難しく、注意、指導するにとどまるでしょう。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「人格障害の判断は慎重に。チームで連携して対応」

   人間は、自分をよく見せたい、注目されたい、攻撃的な言動をとることでスカッとしたいなどという側面を少なからず持っています。これは誰しも持つパーソナリティ(人格)の一部です。しかし、それが突出し、社会的影響を及ぼしてしまった場合には「人格障害」という診断が下されることがあります。A子さんが「ウソ」を言ったり不可解な行動をとったりしたのも、何かのきっかけがあったのだと思いますが、カウンセラーの指摘はあり得ることだと思います。

   ただ、注意すべきなのは、人間は多様であることや、人格は基本的に尊重されるべきものだということを理解することです。今回のケースでは業務が困難であれば、最終的には退職もやむなしという判断もありえますが、「あの人は人格障害だから社会に適応できない」などと非難することはあってはならないことです。なお、人格障害への対応は、多くの人がバラバラの情報に振り回される事が多いので、関係者で連携を取りながら対応することが必要です。会社の場合、産業医・カウンセラー・上司・人事・同僚・家族などと情報共有して進めます。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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