2024年 4月 20日 (土)

「取引先のコネ」で社員を採用したのですが・・・

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   不況の中、就職先が見つからない人が多い。父親が会社社長で、取引先に対して大きな影響力を持っている、なんていう状況があったら、やっぱり頼んでしまうかも・・・。でも、働きが期待外れだと、受け入れたほうも困ってしまう。

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「ウチの息子を、よくもコキ使ってくれたな!」

――土木業の人事担当です。昨年、取引先の社長から、当社の専務宛に

「ウチの息子をなんとか御社に入れてもらえないだろうか」
と依頼があり、断れずに引き受けることになりました。形式的に人事で面接をしたものの、職歴もアルバイトばかりで、正社員で入った会社を3ヶ月で退職したばかり。なのに、面談中から「僕は得意先の息子だぞ!」という尊大な態度が表れていました。

   結局、専務の指示で本社の営業部門に配属になり、現場を知るための現場研修に赴くことになりました。そこで道路工事の現場に派遣したところ、初日が終わったころ、現場監督から激怒の電話が入りました。

「こんど研修に来た若いヤツ、全く使えねえじゃないか。注意すると舌打ちしてにらんでくるし。何でこんなヤツを採ったんだ!」
   専務からは「縁故入社は周囲に知られないように」と指示を受けているので、今のところ人事以外は事実を知りません。平謝りをしてその場を収めましたが、よほど叱られたのか、翌日から息子は出社しなくなりました。

   その代わりに、親である社長が文句を言いに来ました。

「ウチの息子を、よくもコキ使ってくれたな。何も知らない新人を、頭ごなしに怒鳴ったそうじゃないか。息子は気分が悪くなったと言っている。どうしてくれるんだ!」
   その場は話を聞いて帰ってもらいましたが、1週間後に息子から「うつ病」と書かれた診断書が送られてきました。「休職させて下さい」という手紙も同封されていました。

   私は「親の会社で雇ってもらえばよかったのに!」と心の中で叫んでいましたが、専務からは「だから慎重にしろと言ったのに」と叱られるし、挟み撃ちになっている私は、今後どうすればいいのでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
「基本は規則どおりの対応。良くも悪くも特別扱いしない」

   縁故入社の中にも、しっかり仕事をしている人たちもたくさんいますが、そうでない場合もあります。そのとき、ビジネス的な判断を優先して特別扱いをしすぎれば、周囲のやる気を損なってしまいます。バランスを見ながら、普通の社員と同じ対応とすることも必要です。このケースでは、まずはルールどおり休職の手続きを取り、期間満了の際には退職となることを、あらかじめ専務に伝えておいた方がいいでしょう。あとは専務の判断次第です。

   また、今回はいきなり休職ということですが、対応に慎重を要する人の育成については、日々の指導履歴を具体的に記録して残しておくことも、トラブル回避・解決のためには有用です。専務や取引先の社長に「会社としては、息子さんをここまで指導してきましたが、改善されませんでした」と示すためです。このような対策は、部長や部門長などしかるべきレベルの人と話し合って決めて、逐次報告しておかないと、担当者が責任を取らされるおそれがありますので注意が必要です。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「縁故採用は慎重に。雇った会社の責任は重い」

   今回のケースでは、問題を起こした息子が「使えない」のも問題ですが、責任は採用を了承してしまった会社にあります。縁故であっても、形式的な面接しか行わず、十分に適性を見極めていないのは失敗ですし、適性がないと分かった場合には、上司に報告して採用を取りやめてもらわなければいけません。このような「原則」を守らなければ、会社は成り立ちません。それでも採用するときには、相当な覚悟が要ります。配置にも細心の注意が必要でしょうし、教育にも配慮しなければなりません。取引先の子息であれば、トラブルが原因で会社の業績が悪化するかもしれません。万一のことがあった場合の対処について、あらかじめ内部で相談しておくべきです。

   ただ、現場監督の指導にまったく問題がなかったかどうかについては、確認しておく必要があるでしょう。何も知らない若者を現場に放り込んで「使えねえ!」と怒鳴られても、息子さん本人としては(いくら能力がないといっても)戸惑うのは当然で、パワハラと感じているかもしれません。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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