「困ったときの精神論」をやめ「本質」に向き合う勇気を

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   「精神論」というものがある。それはえてして何も解決しないが、逆に既存秩序となんの摩擦も生まない。なので、とりあえずその場を丸く治めたい、だけれど無責任などと言われたくない人にとっては実に使い勝手が良い。

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責任者が「システム上の欠陥」を解決しなかった旧日本陸軍

   たとえば、旧日本陸軍の至宝、牟田口(むたぐち)中将の以下の訓示は、あまりにも有名だ。

「日本軍と言うのは神兵だ。神兵というのは、食わず、飲まず、弾がなくても戦うもんだ。それが皇軍だ。それを泣き言言ってくるとは何事だ。弾がなくなったら手で殴れ、手がなくなったら足で蹴れ、足がなくなったら歯でかみついていけ!」(『太平洋戦争 日本の敗因〈4〉責任なき戦場 インパール』より)

   偉そうなことは言っているが、「弾もメシも全然足りてない」というシステム上の欠陥はまったく解決されていない。要するに、責任者が面倒くさがって「おまえらで何とかしろよ」と言っているだけの話だ。精神論とは、えてしてこういった責任放棄の産物である。

   もちろん、わが国が世界に誇るこの美しい文化は、現代でも大活躍だ。筆者は20代の頃、業務の効率化を上に提案したら、

「いいか、仕事を減らそうとするやつは敗北主義者だ、いついかなる状況でも、仕事とは常に増やすものだ」

と部長に説教されたことがあるが、ああいうのも一種の精神論だろう。下手な業務プロセスの見直しよりも、彼のような高給取りの無駄飯食いをリストラするほうがずっと効率的である。

「日本型雇用」のままでは非正規雇用労働者に希望は生まれない

   困ったことに、政治家にも精神論者は多い。たとえば、先月の舛添大臣の「派遣村は怠け者」発言などは典型例だ。牟田口中将風に言うとこうなる。

「一件でも求人があるうちは応募し続けろ、職歴が無いならジョブカードで、それでもダメなら噛み付いていけ。それが正しい日本の労働者だ!」

   一方で、社民党や共産党が言っている「企業は全員を正社員にすべき」も、やっぱり精神論の域を出ない。

「経営者報酬をゼロにしろ、それでもダメなら配当もゼロにしろ、まだダメなら内部留保(実態は設備投資なのだが…)もすべて吐き出せ、とにかく一人のクビ切りも賃下げもするな、それが日本型雇用だ!」

   ハイ、これで終わり。ね、楽でしょ?頭も使わず汗もかかなくていいんだから。

   もちろん、問題はまったく解決していないから、状況は何も変わらない。ちなみにこの場合の本質的問題とは、「労働市場が硬直化していて、人材もお金も適所適材に割り振れない」という点にある。確かにはっきり口に出してしまうといろいろ面倒なことになるのだろうが、それをやらない限り非正規雇用労働者に希望は生まれないし、新産業も勃興しないから椅子の数も増えない。

   そういう意味では、舛添さんも志位さんも根っこは同じなのだ。二人とも日本型雇用という一つ屋根の下、問題の本質に目をつむりつつ「最後の一兵まで求人に応募しろ」「いや、全滅するまで雇用を死守しろ」と言って仲良く喧嘩しているようなものだ。

   "責任ある政治"を標榜するなら、本質に向き合う勇気が必要だろう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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