2024年 4月 26日 (金)

「大学院出の私が?」雑用をやらない社員に手を焼いています

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   「最近の若者は礼儀を知らないし、仕事の姿勢もなっていない!」とは、大昔からいわれていること。だから、少しは大目に見てやるものだというのが相場だが、調子に乗って仕事の選り好みをしているのなら、黙ってはいられない。とはいえ頭ごなしに叱っても、望んだとおりに動かないのが人間の面倒なところだ。ある企業の管理職は「入社2年目の子がプライド高くて手を焼いている」という。


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「派遣社員の方に頼んでもらえます?」

――商社のマーケティング部の管理職です。入社2年目の社員に手を焼いています。彼は国立の大学院を出ており、何かというと学歴の話を持ち出して、ルーチン業務や雑用を進んでしようとしません。
   マーケティング部の仕事といえばカッコ良いイメージがありますが、実際には地道で根気のいる作業が多いのです。効率的にレポートを作成するためには、日常的に必要な資料を収集・分析したり、データの抽出などを整備しておかなければなりません。
   また、機密文書をシュレッダーにかけたり、そのゴミを処分したり、各部署と書類のやり取りをしたりファイリングをしたり、さまざまな雑用仕事もあります。
   こういった仕事は、基本的には若手中心に分担していますが、急に仕事が発生することもあり、そういうときに彼に頼むと、
「え、私がやるんですか? 院卒の私がやるような仕事ではないと思うのですが。派遣社員の方に頼んでもらえます?」
などと言って、やろうとしないのです。
   あきれた先輩社員が何度か注意しても、その場では聞いているような素振りを見せますが、陰では勝手に女子社員や派遣社員に振って、自分ではやりません。他の仕事のスピードや正確性も、まだまだ優れているとは言えず、知識や経験も足りません。
   しかし、エベレストのように高いプライドからか、同僚には、
「なんで部長は、俺に重要でない仕事ばっかり回すんだろう。きっとこの会社には、俺を正当に評価できる人間がいないんだろうな。まあ、いつまでいるか分からないし、別に評価なんて気にしていないけどさ」
などと言っているそうです。
   そんなわけですから、大きな問題行動を起こしているわけではないのですが、彼の言動によって部内の雰囲気が悪くなっているのは事実です。自信過剰の彼をどのようにすれば更正させることができるのか・・・。それが今一番の悩みです――

臨床心理士・尾崎健一の視点
マネジメントの目的に立ち返り「おだててでもやらせる」

   賢い人は、ルーチン業務や雑用の中に、戦略策定など重要な仕事をするために必要な知識や経験が含まれていることに気づくでしょう。身の丈に合わないプライドの持ち主はいるものですが、今回の場合は周りの人に仕事のしわ寄せがいっており、迷惑を掛けていることになります。

   ところで、管理職の仕事であるマネジメントの目的は「部下に最大限の仕事をしてもらうこと」です。彼は、重要な仕事を見分けられるのはよいことなのですが、それしかやりたがらないのでは組織が回りませんし、必要な知識や経験を積むことができません。こういう人にはワンパターンの叱責よりも、「賞賛」と「お願い」を合わせ技にして「やらせる」のが王道です。「この資料、全部キミが集めたのか。ご苦労さま。これならレポートに使うデータの抽出は、すぐできそうだね。終わったら不要な資料のシュレッダーまで頼んだよ」「このプロジェクトは君の基礎分析のおかげで、ここまで来れたよ。とても助かっている。あとは資料の製本だ。よろしくね」。ついでに、他の社員もほめましょう。そうすれば部署全体の雰囲気も自然に良くなります。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「自分が思っているほどできていない」ことを分からせる

   このような自信過剰の社員は、「シュガー社員」でいえば「俺リスペクト型」に該当します。おだててやらせるのもときには有効ですが、調子に乗って態度が悪化した場合には厳しく対処しなければなりません。日頃の仕事の成果物や、それにかかった時間などを報告させて、先輩方の仕事と比較したりしながら、業務上の問題点を具体的に指摘します。

   生意気な若者ほど、自分で気づけばモノになる人が多いとも聞きます。また、小さな挫折を若い頃にさせておかないと、大きなプレッシャーを受けたときにダメージが大きくなります。彼の成長のためには「自分が思っているほどできていない」ことを理解させることは必要なステップです。根気よく面談することで信頼関係ができ、急速に成長する人もいますが、自分を客観視できないまま辞めてしまう人も出てくるでしょう。しかし、周囲への影響もさることながら、せっかく採用した高学歴者の能力を十分に発揮してもらわなければ、会社としても損失になります。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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