「制服がアロハ」の旅行代理店で働くことになった理由

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   大学を卒業してすぐに入った芸能プロダクションでは、日常的に線路に飛び込みたくなる衝動に駆られるプチ鬱状態。それを思い出しながら書いた前回は、ついつい暗めのトーンになってしまいました。今回は、そこを辞め、2社目となるウッキウキ旅行会社に入った経緯をお話しします。

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辞めることすら言い出せない

「この仕事は、どぉ考えてもあたしに向いてない――」

   映画版「NANA」で宮崎あおいが言うセリフが、なぜか耳について離れません。

   初めての会社で出来ないことだらけだった自分に、果たして“向いてる”仕事なんてあるのだろうか? 大きな不安に覆われていた当時の私は、あおいちゃん演じる「ハチ」のように軽やかなノリではなかったですが、明らかに芸能界に“向いてる”同期の男子を目の当たりにし、一方でプレスリリースやチラシ作りといった数少ないデスクワークならばそれなりに出来たという感触もないことはなかったので、ハチと同じ理由で辞めることにしたわけです。

   決意したはいいが、なにせ人に声をかけるのが苦手な私。上司に話を切り出すタイミングを逃しに逃すこと数週間。今日こそは、と決意して臨んだ日も、現場では結局言い出せず、帰りの電車で並んで座るという絶好のチャンスにもやはり勇気が出せません。私より手前の駅で降りる上司が「じゃあね」と言って席を立ったとき、ついに言いました。「あ、わ、私も降ります!」と。

   「は?」という顔の上司とともに下車して「ちょっとお話が」と喫茶店に連れだし、とつとつと胸の内を吐露し始めた私。そんな怪しい後輩に彼女は「事務仕事が得意なら、そういう仕事をすればいいだけ。芸能界は自己アピール力が特に必要な世界だから、無理しないで自分に合った仕事すればいいんだよ。そんな職場いっぱいあるよ」とあっさり受け入れてくれて、無事退職が決定したのでした。

「無職」の重みに青ざめて

   会社を辞める人にはよく「ゆっくり羽を伸ばして」などと言うものですが、2カ月半じゃあ伸ばすべき羽すら育っちゃいません。

   辞めてすぐ、貧血で倒れて救急車で運ばれたことがありました。救急隊員に名前と年齢、そして職業を聞かれ、朦朧とした意識の中で「フ、フリーター…(正しくはただのフリーなのですが)」と口にしたあの瞬間の絶望感は、今でも忘れられません。無駄に健康で入院すらしたことのない私の唯一の救急車体験が無職のときだったというのもまた、私の人生の間の悪さを物語っている気がしてなりませんが、それはさておき。

   敷かれたレールの上をまっすぐ歩んできた人生で初めて道を踏み外したという実感、なぜもうちょっと頑張れなかったのだろうという自己嫌悪、身分がない心許なさ。さらには、いくら喉元を過ぎたからといってそんなにあっさり忘れなくてもいいものを、あの苦しかった2カ月半があろうことかちょっと恋しくなったりまでする始末で、バイトでいいからとにかく働こうと思いました。

   映画業界はすっぱり諦めて、大学時代の就活時に2番目に希望していた旅行業界でデスクワークをしよう。そう考え、売ってる就職雑誌なんておこがましい、私には無料の情報誌で十分だわ、とタウンワークをパラパラとめくっていたところ、目に止まったのが南の島専門の旅行会社でした。

アロハに癒されたい

   履歴書を送ったらほどなく電話がきて、面接に行くことになりました。ドアを開けてまず目に入ってきたのは、まばゆいばかりの原色のシャツに身を包んだ従業員たち。そう、南の島専門だけあって、会社の制服がアロハシャツだったのです。そのウキウキっぷりに惹かれ、ここで働きたい、癒されたい、と思ったことを覚えています。

「なんで2カ月半で辞めちゃったの?」

   その後の転職人生で定番となる質問を初めて受けたのはこのときです。芸能プロダクションの面接で自分を偽って失敗した経験から、すべてを正直に話すことにしました。

   「それは貴重な経験をしましたね」――自分も映画が好きだという社長の優しい一言に、こんな私にもできることがあるかもしれないという希望がわいてきました。そして、翌日からバイトとして働くことになったのです。

鈴木松子
都内の某私立大学を卒業後、20代の7年間に、芸能プロダクション→旅行会社→映画 雑誌編集部→新聞系制作会社と転職を繰り返し、今また新しい会社で働き始めたアラ サー女。せめてコラムの連載中は、同じ会社に勤め続けられるといいのだが・・・
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