ネット掲示板の「悪評」で内定辞退者が出てしまいました!

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   物心ついたころにはインターネットが当たり前に使われていた、という世代が入社し始めた。彼らは入社前から、ネット上での会社の評判を読んだり交換しあったりしている。中にはネット掲示板での「悪評」を読んで、内定を辞退してきた学生もいるという。


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「採用担当者の頭が悪い」など中傷じみた書き込みも

――大手製造業の人事担当です。仕事で、学生が書き込んでいる「就職掲示板」を定期的に見ています。そこには、学生が面接や試験に会社を訪れたときの印象について、書き込みが集まっています。
   ある日、掲示板を見たところ、当社の悪口がたくさん書かれているのに気づきました。「お茶がまずい」といった程度のものはよいとしても、

「採用担当者の頭が悪い」「社員の服装のセンスが悪い」
など中傷じみたものもあります。
   他にも「面接官の態度が上から目線だ」「問題の意味が分からない」「社内が臭い」などの書き込みがあり、これに影響されてしまう人もいるのではと心配していました。しかし、心当たりもないので、とりあえず状況を見守っていました。
   ところがある日、恐れていたことが起こりました。内定者から「ネット上の評判が悪い」という理由で、内定辞退の連絡が入ったのです。事実ではない情報を基に判断したと思われるので、あらためて説明をしましたが、本人の意思は変わりませんでした。
   このことがあってから、これを放置しておくと、学生だけではなく従業員にも悪い影響を与えるのではないかと心配になってきてしまいました。かといって、広いインターネットの世界の膨大なコメントをチェックして、一つひとつ削除を求めていくのも現実的ではありません。
   最近、ネット上の悪評を監視し、削除や報告をするサービスがあるようですが、イタチごっこになってしまうのではないかと恐れています。どうすればよいのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
書き込みを可能な範囲でチェックし「改善」の参考に

   ネット上の掲示板への書き込みは、すべて信用できるものではないということは常識です。元社員や他社の社員が、悪意を持って書いている可能性もあります。したがって、担当者はあまり神経質にならなくてもよいと思いますが、個人のプライバシーを侵害するなど悪質な書き込みについては、プロバイダ責任法に基づき掲示板の管理者に削除依頼を出すことも考えられます。

   基本的な考え方としては、もし書き込みが事実でないのなら「書き込み」自体と、それを過剰に気にする学生の神経質さが問われるでしょう。一方、もし書き込みが事実であったり心当たりがあるのならば、問題は「会社」にもあります。書き込みを可能な範囲でチェックし、改善の参考とすべきです。学生は社員が想像している以上に、会社や採用に関わる社員を詳しく観察し、厳しい目で見ています。学生と接するときは、人事部以外の社員でも、そのあたりを十分心得ておく必要があります。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「積極的な事実説明」が内定者の不安を軽減させる

   ネット上の情報に信頼できるものとそうでないものがあることは、ネット世代の若者は十分理解しているでしょう。一方で、ネットが生活に占める割合が高いために、上の世代よりもネット情報の影響を受けやすいという側面もあります。したがって、悪意のある書き込みを「バカバカしい」と放置していると、思わぬ風評被害に遭うおそれもあります。

   不安や誤解は、情報の不足によってもたらされます。内定者とのコミュニケーションを密にして不安を取り除く工夫も大切です。定期的にメールを送って今後の予定を知らせるとともに、内定者から「入社にあたり不安なこと」を聴取したり、掲示板の「虚偽の書き込み」にあえて触れたりして、積極的に説明することも効果があると思われます。そのほか、実際に働いている若手社員のコメントを取ったり、職場の写真入りコラムを書いたりすることも一つの方法になるのではないでしょうか。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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