常務が「お気に入りの女性部長」のストーカーになっています!

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   重役の言うことにはすべて従わなければならない、特に労働市場がほとんどなかった時代には、いくら嫌なことがあっても会社にしがみつくしかない時代がありました。しかし今では、優秀な人は他社から引き抜きもあります。ある会社の人事担当は、有能な女子部長から「常務がつきまとってきて困る」と訴えを受け、どう対応してよいのか困っています。

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夜な夜な「君の家のそばまで来ている。出てこないか?」

――外資系金融機関の人事担当です。当社では昨年、40歳の独身女性をマーケティング部長に抜擢しました。彼女は有能で美人、本国の経営陣からの評価も高く、将来は会社の顔になることを期待されている人物です。
   この女性を、60代の常務が気に入り、客先や夜の接待に連れまわすようになりました。彼は当社がまだ日系企業だったころからの叩き上げの営業幹部で、会社への永年の貢献は認められますが、いまの会社のカラーには馴染めなくなっているところがあります。
   最初のうちは仕事と割り切って同行していた部長も、仕事の忙しさを考慮してくれない誘いの多さと、エスカレートするセクハラまがいの行為に辟易とし始めました。
   昼食時にはランチミーティングを勝手に入れられ、ランチに同席させられることがしばしば。大勢での出張時にも、隣の席を強制されます。どうやらチケット予約を担当する社員に、常務から「必ず隣にするように」と指示があるようです。
   そのうち、酔っ払った常務から夜遅く「君の家のそばまで来ている。出てこないか?」とメールが来るように。断ると、必要性が薄そうな海外出張に同行するように言われました。これも何とか理由をつけて断りましたが、彼女はすっかり疲れてしまいました。
   そこで人事部長に相談し、常務へそれとなく仕事の忙しさなどを伝えてもらいましたが、「彼女を抜擢するように社長に進言したのは俺だ」「俺の人脈を引き継いでもらわないと困る」などと悪びれる様子もありません。
   その後も、夜の接待同行やメールなどは続いており、ほとんどストーカー行為のようになっていますが、相手が役員だけに、部長も面と向かって苦言を言うことをためらっています。どうすればよいのでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
役員といえども「二次被害」に注意し厳正に処分すべき

   有能な従業員の仕事へ悪影響を与える行為は、会社にとってかなりのマイナスになります。相手が役員といえども、女性部長の業務環境や生活を守ることを優先して考えましょう。対応する担当者が双方から事実関係を詳しく確認する前に「気にしすぎでは?」とか「我慢して丸く収めて」などと軽々しく言うことは避けるべきです。彼女に退職されては、会社の力も信用も落としてしまうことになります。

   セクハラは再犯率が高い問題とも言われています。反省の度合いにもよりますが、事実であれば厳しく対処しましょう。外資系は訴訟リスクや人権問題には敏感ですし、会社のリスクを考えれば、社長や本国に報告して退任してもらう方向で進めた方がよいと思います。その際、セクハラの報告をしたことで部長が仕事をしにくくなくなったり、中傷を受けたりする「二次被害」が起きないよう、状況をフォローすることも大切です。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「取締役の処分」には社員と異なる手続きが必要

   ここでは常務の処分を前提に考えます。まず、取締役は社員ではないので、就業規則に基づく懲戒処分ができません。役員規程で懲戒に関する定めを設け、それに沿って処分を行います。また、取締役の解任は株主総会で決議する必要があります。ただちに解任する場合には臨時株主総会を招集することになりますが、この場合も役員規程で懲戒事由を定めておくと無用なトラブルが避けられます。

   ただし、任期途中での解任は損害賠償を請求されるリスクもあるため、まずは社長から厳重注意をしてもらい、減俸処分をするのが現実的です。その上で、次回の定時株主総会で任期満了なら不再任とするか、辞任をうながして身を引いてもらうことになるでしょう。処分の際には、女性部長の業務の妨げをしないように注意したり、常務の人脈は社長があいさつ回りをして引継ぎをするなどの対応も重要になります。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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