直接会って話をしろ!「メール禁止」を徹底する職場が実在した

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   ビジネスの場面に完全に定着した「電子メール」。これなくしては仕事にならない、という人も多い。しかし、メールを万能のツールだと考えていると、気づかぬうちにコミュニケーションが乏しくなり、非効率に陥ってしまうという指摘もある。

タイガースは「メール禁止令」で飛躍をねらう

「無意味な会議から開放されたい」人もいるが
「無意味な会議から開放されたい」人もいるが

   阪神タイガースの南信男社長は2010年1月5日、球団年賀会のあいさつで「メール禁止令」を宣言した。「最近はどの組織でもすぐメールでやり取りする。でも、それだけ突っ込んだ議論ができない。顔を合わせて話し合わないと、コミュニケーションは取れない」として、球団内や選手との直接的な対話を積極的に行っていく考えを示したという。

   この意見にネット上では、「なんだか古い考え方だなー」という感想がある一方で、

「メールという武器は、素晴らしい。しかし、それ以上に直接コミュニケーションの機会損失になってしまっては、全く意味が無い」
「会社で隣の人にメールを打っていた人、確かにいた。日本中の会社のスタッフは、メール公害で窒息しているな」

と、何にでもメールを使うことの弊害を指摘する声が見られた。

   しかし、これだけメールでの連絡が当たり前になっている中で、実際に「メール禁止」を徹底するのは現実的には無理だろう。ただのグチに終わるのでは――。そう思っていたら、タイガースのお膝元の大阪には、本当にメールを禁止している事務所があった。

   安藤忠雄建築研究所。世界的に有名な建築家のオフィスでは、「メール禁止」「FAX禁止」「各デスクに電話なし」「電話での打ち合わせ禁止」など、他の職場では考えられないルールが完全に徹底されている。

安藤事務所には「海外用にメールアドレスが1つだけ」

   雑誌『BRUTUS(ブルータス)』2009年11月15日号によると、事務所でメールを禁止しているのは、メールがコミュニケーションに不向きだからという。安藤所長はその意味を説明する。

「建築は人間がつくるものですから、人間と対話しなければならない。その対話が下手な人に建築はつくれない・・・。メールで対話ができますか?」

   海外用にメールアドレスが1つだけあるが、なるべく使わないようにしている。

「メールだと、思ったことをよく考えずに送ってくる。こっちも考える前に打って返す。・・・毎日、ほとんど病気ですね。そもそも、メールは速い速いと言いますが、直接言う方が速い」

   直接会って対話することを原則にしているので、電話での打ち合わせも禁止。各デスクには電話がなく、安藤所長のデスクの近くに並ぶ5台の共有電話で、立ったまま話す。FAXも禁止で、図面は郵送か、直接会って手渡しをする。

   このほか、終業は午後9時で徹底されており、日曜出勤もない。「時間がなくて本も読まない、映画も観ない、コンサートにも美術館にも行かないのでは、感性を磨きようがない」。普通の会社では、クライアントや従業員から不満の声も出そうだが、ここでは安藤所長のポリシーが完全に貫かれている。

「金曜日はメール禁止」で直接話をする習慣が復活

   ITがビジネスに浸透している米国でも、メールの利用に制限をかけている職場がある。lifehacking.jpの記事によると、ある携帯電話会社では「金曜日はメール禁止!」というルールを設けているという。

   電話による連絡や、直接の会話の促進をねらいに設けられたルールだが、最初は反対していた人たちも今では賛同し、金曜日以外の日でも、近くにいる人であれば電話をしたり直接会ったりするような習慣がうまれたという。

   実際に会って話すためには、同じ時間に都合を合わせなければならないという制約はある。しかし、メールに数十分かけて報告や説明をするよりも、実際に会って口頭で話したほうが速いのであれば、実質的な拘束時間は短くなる。そもそもメールは連絡には便利だが、対話や議論で使うには効率がよくないという見方もある。

   2009年に利用者が増えたツイッターなど、時間や空間の制約を超えるツールによって、新しいコミュニケーションの形が広がることは歓迎したい。しかし、モニターの前から離れることで、メールとは別の「質の高い対話」へ目を向けることも必要だろう。

BRUTUS (ブルータス) 2009年 11/15号 [雑誌]
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