2024年 4月 25日 (木)

キャバクラに連れ回す上司に困ってます!

   「巣ごもり消費」という言葉に表されるように、派手な消費をしたがらない若者が増えている。一方で、好景気の時代から「仕事もプライベートもパワー全開!」という先輩たちもいる。ある会社では、上司のノリについていけない若手社員が頭を抱えている。

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いつの間にか「割り勘」で経済的にも負担

――中堅商社で営業3年目の社員です。いま困っていることがあります。それは、キャバクラに連れ回す上司のことです。いまでも毎週のように連れていかれます。
   半年ほど前、営業成績が伸び悩んでいるときに、残業中に課長に仕事のやり方を相談したことがありました。そのときは仕事を切り上げて喫茶店で1時間ほど話を聞いてもらい、親身にアドバイスをしてもらいました。
   おかげで業績浮上のきっかけとなり、隔週でミーティングの場を設けてもらうことになりました。ある日、ミーティングが終わって帰ろうとすると、
「じゃあ今日は、景気づけにキャバクラでも行くか!」
と言われ、相談に乗ってもらった恩もあるので後をついていきました。その日は課長におごってもらいました。
   次の週からミーティングが毎週になり、終わるとキャバクラへ行くのが恒例に。アドバイスは役立つのですが、キャバクラ同行がおっくうで仕方ありません。何度か「僕はキャバクラは・・・」と断ろうとしたのですが、
「何だよお前、いろいろ相談に乗ってやってるのに。だからお前は売れないんだよ!」
と言われ、仕方なくついていかざるを得なくなります。帰宅は午前2時過ぎになり、朝一番で出社するので睡眠時間が3時間ほどしか取れません。課長は元気いっぱいですが、自分は生活リズムが狂って就業時間中も眠くなります。
   それに、いつの間にか支払いが割り勘になったのも負担です。課長は独身だし、高給取りのはずですが。何より、私はキャバクラがそんなに好きではありません。どうすればいいのか困っています。良い対処法があれば教えてください――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
現状では「パワハラ」のグレーゾーン

   理由はいろいろあるようですが、要するに課長とキャバクラに行きたくないのですね。上司からすれば、一緒に遊べる部下を見つけたというレベルであり、いじめの目的が明確にあるわけではありません。したがって典型的なパワハラではありませんが、本人が嫌がっているのでグレーゾーンとは言えます。課長に行きたくない意思をはっきり伝え、それでも無理に連れていかれたり、断ったことで業務上の嫌がらせをされたりしたら、パワハラとなります。課長の上の上司や、人事部へその旨相談しましょう。

   報告の際には、いままでの経緯を事実ベースで時系列にまとめておきます。あまりに繰り返して行っていると「自分も進んで遊んでいたのでは」と疑われますので、本当に嫌であれば早めに手を打った方がよいでしょう。報告には躊躇する気持ちも起こるでしょうが、上司の指導は業務時間中に行うのが原則ですから、改善してもらうのは当然と考えてよいと思います。

臨床心理士・尾崎健一の視点
断るには「アサーション」という手法が有効

   上司は面倒見がよい人のようですが、相談者に対して甘えが出て自分の趣味に走ってしまったのでしょう。人間関係を壊さないようにしながらも、自分の意思を明確に伝えたいですね。相手と自分の立場を尊重しつつ伝えたいことを伝える「アサーション」という手法を用いるとよいでしょう。基本公式は「客観的な事実」→「自分の感じ方」→「こうして欲しいという要求」という順番で伝えることです。

   今回のケースですと、たとえば次のような感じです。最初に自分の感情を前面に出さないようにすると、話がスムーズに運びます。「課長、いつも相談に乗っていただき、ありがとうございます。おかげで仕事の能率も上がってきました。ただ、ミーティングの後に毎回キャバクラに行くのは、翌日の仕事にも差し支えますし、私の給料では金銭的に厳しいです。大事なストレス発散の場とは思いますが、毎回のキャバクラは遠慮させていただきたいのですが、ダメでしょうか?」。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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