「残業」がなくて「有給」使えて「終身雇用」な会社は

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   前々回の記事の影響からだろうか。「基本的に残業がなくて有給も消化できて、しかも終身雇用の会社を教えてください」という質問を貰った。常識で考えてあるわけないだろそんな会社、というかあったって君なんて採らないから余計な心配するなとは思ったが、面白いのでちょっと検討するだけしてみたい。

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条件を備えた職場がひとつだけ存在する

   まず、雇用調整の必要がないことが大前提となる。つまり、常に需要が供給を上回っている必要があるわけで、鉄道や電気といったインフラ系が代表だろう。昔の国鉄の職員なんて、時間尋ねるのにこっちが敬語使ってしまうくらいのオーラを漂わせていたものだ。ただし、少子化と資源価格上昇で、インフラ系といえど必ずしもこの条件を満たせるとは言えなくなってきている。

   続いて重要なのが、新規参入が少ないということだ。プレイヤーが増えてしまうと価格競争が起こるから、雇用や人件費を調整しなければならなくなる。というわけで、お上に保護してもらえる規制産業が有望となる。つい最近までテレビ局が代表だったが、Webという規制外からの侵略を受けてこちらも青息吐息だ。

   そして、輸入品がやってこないことも重要だ。新規参入はロビー活動で潰せるが、人件費10分の1のような国からある日突然競合製品が輸入されるとどうしようもない。WTOに加盟している以上、あまりお上には期待できないし。というわけで、新興国とかぶらない製品か、アウトソースできないサービス業が望ましい。

   では、これらの条件を満たしている会社があるだろうか。一見すると難しいが、実はひとつだけ存在する。それは公務員だ。公務員といってもキャリア官僚や地方上級は結構大変なので、その他のノンキャリということになる。

「希望の星」に経済をけん引する力はない

   目安としては、暇だけど組合組織率だけは高いような職場がおすすめだ。最近の公務員は以前ほどには昇給できないけれど、実家近くの自治体に就職すれば家賃が浮くから可処分所得は維持できる。民主党にも公務員リストラを主張する新自由主義者はいるが、組合入って選挙支援して恩を売りつけておけばリストラ対策もばっちりだ。

   これこそ日本型雇用における究極の理想像、労働者のユートピアである。自分自身でいうと、高校出て地元の周南市役所に勤めて、労働組合のイベントには欠かさず参加しつつ、選挙では民主党のビラ貼りという人生だ。書いててぜんぜん魅力を感じないのは、きっと僕の修行が足りないせいだろう。

   実際、公務員が就職ランキング一位という調査結果もあるほどだから、今の若者は彼らなりに合理的な選択をしていると言えるだろう。

   ところで、ひとつだけ困った点がある。日の丸株式会社は確かに日本で一番安全な会社なのだけど、彼らに経済をけん引するような力はない。「若者の希望の星は公務員」というような国に、明るい未来が感じられないのは気のせいだろうか?

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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