2024年 5月 8日 (水)

パソコンのフリーズ現象と「5月病」との関係

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   前回は、「5月病」の正体とその予防のポイントをお伝えしましたが、今回は「5月病かな?」と思った時の具体的な対処法をご紹介します。ポイントは「一度たたんで、ひとつひとつ整理して進めなおすこと」です。

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「ワーキングメモリ」の容量には限界がある

人間の脳も「フリーズ」することがある
人間の脳も「フリーズ」することがある

   パソコンを使っていて、いくつものソフトを同時に立ち上げたり、ファイルをたくさん開いたりすると、画面が固まって「フリーズ」することがあります。そんな時は、ウィンドウを一つひとつ閉じたり、電源を入れ直したりすると、再び動き始めます。

   フリーズの原因は、パソコンのワーキングメモリ(作業領域)の容量を超えて、ソフトなどを起動しようとしたからです。これと似たような現象は、人間の脳でも起こります。5月病も、新しい事がいくつも重なって自分の脳が処理不能になった状態と考えてみると、その対策が理解しやすくなります。

   人間の「ワーキングメモリ」は、どこにあるのか、ご存知ですか。現在の脳科学の知見では、前頭葉のなかの一番前、おでこの裏側にある「前頭連合野」と呼ばれる部分が、その機能を担っていると分かってきています。

   前頭連合野は、脳内の多様な領域(パソコンのハードディスクのようなところ)にアクセスし、情報を選択的に取り出して全体の制御をしています。しかし、パソコンのワーキングメモリと同じように容量が限られているので、大量の案件を同時に脳内で処理しようとすると、限界を超えてパンクしてしまうのです。

   やることがいくつもあって「いっぱいいっぱい」になってしまったら、パソコンの「フリーズ」が起こったと考えましょう。いったん仕事を脇に置き、一息ついてから再度ひとつひとつこなしていくことの有用性が、経験的にも理解していただけると思います。

張り切りすぎは禁物。「今すべきこと」だけに絞る

   5月病も、これと同じメカニズムで起こります。新しい環境で慣れないうちから、あれもこれもと頑張りすぎると、ある日、頭が働かなくなることも。やる気がなくなってしまったり、仕事に行けなくなってしまったときには、

「脳の中のメモリがパンクしてきたんだな」

と考えれば、その対策はおのずと考えつくでしょう。とりあえず手を止めて、やることをひとつずつ整理し直したり、リフレッシュしたりすることが有効なのです。

   社会人の本分は仕事ですから、まずは今しなければならない仕事を最優先し、それ以外は自分に余裕があるのかどうか考えながら、必要に応じて手をつけましょう。

   資格取得のための勉強も、免許取得のための講習も、人脈拡大のための交流も、ひとまず脇におき、後に回せる事は回します。

   意外と大した方法ではないと感じるかもしれませんが、シンプルな方法ほど効果も大きいものです。本格的な「5月病」になる前の対処法として、参考ににしていただければ嬉しいです。


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今回の筆者:笹原 信一朗(ささはら・しんいちろう) 2003年筑波大学大学院医学系・博士課程修了。医学博士。職域におけるうつ病の予防医学研究に従事。現場の産業医と精神保健指定医の経験を積み、05年4月より筑波大学大学院講師。予防医学のリテラシー教育にも積極的に取り組んでいる。

筑波大学大学院・松崎一葉研究室
高度知的産業に従事する労働者のメンタルヘルスに関する研究を行い、その成果を広く社会還元することを目指している。正式名称は筑波大学大学院人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ。グループ長は松崎一葉教授(写真)。患者さんを治療する臨床医学的な視点だけではなく、未然に予防する方策を社会に提案し続けている。特種な過酷条件下で働く宇宙飛行士の精神心理面での支援も行っている。松崎教授の近著に『会社で心を病むということ』(東洋経済新報社)、『もし部下がうつになったら』(ディスカバー携書)。
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