2024年 4月 19日 (金)

待望の初契約と思ったら大損失! どうケジメつける

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   のどから手が出るほど欲しい売上と新規取引先。しかし、欲にかられると周囲が見えなくなって、思わぬ落とし穴に落ちることもある。ある会社では、若手営業マンの待望の初契約が、なぜか幻に終わってしまったという。

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社員に責任を取らせ辞めさせていいのか

――中小繊維メーカーの営業課長です。ここ数年は景気が悪く、顧客の仕入れ量も減少続きで製造も絞らざるを得ません。そんな中、中途採用で昨年入社した若手営業マンのA君が、繊維卸売のB社から数百万円の新規受注案件を持ってきました。
   彼が自信満々で「あの会社は大丈夫です。前の会社でも何度か取引がありましたし」と言うので、私もGOサインを出しました。上司として最大限サポートしたいという気持ちもあり、夜遅くまで付き合って提案書や商品選定を進めてきました。
   無事納入を済ませてから2か月後のある日、経理担当から「B社の入金が遅れている」と連絡が入りました。A君に電話させると、担当者と連絡が取れません。嫌な予感がして事務所に走らせましたが、すでにもぬけの殻。
   B社が倒産して夜逃げしたのか、当社がいわゆる「取り込み詐欺」に引っかかってしまったのかは、まだ詳細が分からず、調査を進めているところです。いずれにしても金額が小さくないので、社内処分なしには済まされない空気です。
   ただ、A君の落ち込みようは激しく、「責任を取って、すぐにでも辞める」とも言っていて、問題発覚後3日経ったいまも自宅に篭り、出社していません。詳しい話はできていないのですが、通常このような場合は、どのような処分とすべきなのでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
チェックを怠った部長の責任は重い

   A君は、転職先で実績を作ることに必死だったのでしょう。部長も、その気持ちを十分に理解した上で、応援はしても足を引っ張ることはしたくなかった。そこに隙ができたと言わざるを得ません。原因は新規の大口受注にもかかわらず、与信管理が甘かったことに尽きます。本来は部長が「与信のチェックはやったのか」「手が回らなければ他の者にやらせよう」と確認するべきでした。部長の思いやりの気持ちは分かりますが、相談内容から判断すると、入社したてのA君よりも、チェックを怠った営業部長の責任が重いでしょう。

   重大な報告漏れなどがない限り、A君は譴責(始末書の提出)、部長は「過失により会社に損害を与えた」として減給が適当と思われます。処分の重さは就業規則に基づいて決めます。恣意的な重すぎる処分は、後から損害賠償を請求されるおそれがあります。

臨床心理士・尾崎健一の視点
もしかすると騙されたのかもしれない

   気になるのは、A君が「B社とは、前の会社でも何度か取引があった」と言っていること。もしかすると旧知のB社と共謀して、会社を騙しているのかもしれません。退職を認める前に、A君には契約に至るまでの経緯を必ず確認しましょう。共謀詐欺の疑いが濃くなれば警察に届けます。その場合も営業部長は「騙された」では済まされず、管理不行き届きで処分とならざるを得ないでしょう。

   なお、不正を引き起こす要素には、「個人的な金銭問題」「業績や競争に対する過度の圧力」「業務のノーチェック体制」「評価への不満」などが考えられます。社員が個人的な借金を抱えている場合や、会社が極度の緊張状態に置いて社員にプレッシャーをかけている場合には、売上の水増しなどの不正が生じるリスクが高まるわけです。常日頃、服装や言動などにも注意を払い、不審な点があれば同僚から聞き取りをしたり、本人にさりげなく質問するなども必要です。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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