「出るも地獄、残るも地獄」 雇用流動化が進まない日本

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   J-CAST会社ウォッチの以下のコラムが話題となった。

「『あれは使えないな』 試用期間中に新人を解雇できるか」

   日本の労働法制を考える上で、とても興味深いテーマだ。

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「新卒一発勝負」が企業と個人を不幸にする

   仮に、この会社が文字通りの「終身雇用」が保障される日本型雇用の二階建て部分(いわゆる安定した日本企業)だとする。「出来が悪い」という程度の理由でクビには出来ないから、会社は彼を定年まで40年程度雇い続けなければならない。生涯賃金で3億円以上、もろもろの経費を含めれば6億円程度の大損失だ。

   一方、新人の彼も決して得をしたわけではない。日本は今のところまだまだ新卒重視の国なので、同クラスの企業に転職しようとすれば、今の職場でそこそこのスキルとキャリアを身につけないといけない。しかし会社から評価されていないわけだから、それは彼には難しいだろう。

   広い世間にはきっと彼に相応しい職場があるはずなのだが、それに挑戦する機会が、日本型雇用ではなかなか手に出来ないのだ。結局、彼はあと40年間を今の職場で耐えるか、一か八かで転職市場に己を投げ込んでみるしかない。

   一つアドバイスしておくと、事情にかかわらず試用期間で離職した人間を、現状では普通の会社なら採用はしないと思われる。

   こういった形で双方が不幸になってしまうのは、要するに日本に労働市場が存在せず、新卒の一発勝負になってしまうからである。

雇用流動化で「新卒市場主義」はなくなる

   仮に、日本にも流動的な労働市場があったとしよう。会社は一定の補償金と引き換えに、彼を金銭解雇するだろう。彼はそれを原資に就職活動をこなしつつ、より自分にあった就職先を見つけられるはずだ。

   なぜなら、雇用が流動的である以上、新卒至上主義など意味がないから、既卒者にも門戸は開かれている。終身雇用ではないから、敷居もずっと低い。

   こうして、企業も個人も、今よりずっと満足のいく結果を手にするはずだ。

   このケースのようなリスクは、どんな社会でも普通にあり得る話だ。問題は、それを規制で見えないように押し隠すか、市場を通じて見えるように取引するか、である。

   どちらが良いかは言うまでもない。彼ほどではないにせよ、

「新卒一発勝負はおかしい」
「もう一度タイムマシンで戻ってやり直したい」

そう思っている2、30代ビジネスマンは少なくないはずだ。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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