グチや悪口を我慢するな! 吐き出せば健康が回復する

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   グチや悪口を言うことは、一般的にはあまり好ましくないこととされています。しかし、不満を抱えていると、いつまでも嫌な気持ちを解消することができず、心の健康にはよくありません。時には思い切って吐き出して、スッキリしてみましょう。

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科学的に証明された「カタルシス効果」

「バカヤロー!」と叫んでストレス発散
「バカヤロー!」と叫んでストレス発散

   日本の祭りには、悪口が登場するものがあります。

   例えば、日本三大毘沙門天のひとつである、栃木県・足利市の最勝寺(大岩毘沙門天)の「悪口(あくたい)まつり」。江戸時代から続く伝統行事で、大晦日の晩から元旦の未明にかけて1年間積もった鬱憤を「バカヤロー!」と叫んで発散しながら、行進するのだそうです。

   石川県・能登町の菅原神社には、大鏡餅に向かって参拝者が「角が丸くないな」「白すぎてカビが生えたようなモチだ」などと悪口を言うことで、翌年の豊作や健康を祈願する「いどり祭り」があり、450年の伝統があるそうです。

   どちらも長年にわたって続いている、日本の伝統行事です。心のうちにある不安やイライラ、苦悩や怒りなどの感情を言葉にして表現すると、苦痛が解消されて安堵感や安定感を得ることができるとされています。

   これは、精神心理学的には「カタルシス効果」と呼ばれます。グチや悪口の効能は、科学的にも証明されています。

   ストレスのある環境に置かれた受付嬢は、休憩時間に給湯室でグチを言い合うと、ひとりで休憩した場合に比べて、唾液中のストレスホルモンがずっと少なくなります(テレビ東京系「たけしのニッポンのミカタ!」で私も参加した実験結果です)。

   人はストレスを感じると、血圧の上昇や動悸などの興奮反応を起こします。それが続くと、不眠症やうつ病など心の病気にかかるリスクが高まります。そこでグチや悪口でストレスを発散すると、心身が健康な状態に回復することができるのです。

2つの対処法を組み合わせる

   こんな大きな効能のあるグチや悪口ですが、活用には気をつけなければならない点があります。

   言うまでもなく、グチや悪口を言っているだけでは、「嫌だ」「辛い」という感情を和らげることはできますが、問題の根本的な解決にはつながりません。一時的には気持ちが落ち着いたとしても、結局ストレスフルな状況から抜け出せません。

   とはいえ、問題解決に絶えず努力し続けることによって、心身が疲弊し、行き詰まりを迎えてしまうこともあります。ストレスが不可避な現代社会においては、この2つの対処法をバランスよく用いることが重要なのです。

   例えば、誰もがやりたくないプロジェクトを押し付けられたときに、不満のある気持ちを抱えたまま取り組もうとしても、なかなか身が入らないことが往々にしてあります。その状態が続くと、仕事も進まず、さらに大きなストレスを抱えてしまいます。

   このようなときには、できることならば理解ある同僚や友人に頼んで、上司のグチや悪口を聞いてもらいましょう。ストレスを発散し(情動処理型)、スッキリした気分でプロジェクトに向かう(問題解決型)ことが重要です。

   このように、問題解決に向かう気持ち作りにグチや悪口を活用するのは、精神心理学的にも有効な方法といえるでしょう。


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今回の筆者:吉野聡(よしの・さとし) 筑波大学大学院 社会医学系 助教(精神科医、医学博士、法務博士)。うつ病からの職場復帰と、企業におけるメンタルヘルス不全の予防法務が研究テーマ。東京都知事部局健康管理医、筑波大学附属学校教育局、キリンビール取手工場など多くの職場で産業医を務める。著書に「それってホントにうつ?」(講談社)、「現役精神科産業医が教えるうつからの職場復帰のポイント」(秀和システム)。

筑波大学大学院・松崎一葉研究室
高度知的産業に従事する労働者のメンタルヘルスに関する研究を行い、その成果を広く社会還元することを目指している。正式名称は筑波大学大学院人間総合科学研究科 産業精神医学・宇宙医学グループ。グループ長は松崎一葉教授(写真)。患者さんを治療する臨床医学的な視点だけではなく、未然に予防する方策を社会に提案し続けている。特種な過酷条件下で働く宇宙飛行士の精神心理面での支援も行っている。松崎教授の近著に『会社で心を病むということ』(東洋経済新報社)、『もし部下がうつになったら』(ディスカバー携書)。
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