2024年 4月 27日 (土)

従業員のタトゥーにお客さんから苦情を言われました

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   就業規則に「茶髪は禁止」と書いておいたのに、新人が髪を染めてきたので注意したところ、「これ、茶色じゃないっすよ!」と逆ギレされたという話を聞いたことがある。ファッションをルールで縛ることは、なかなか難しい。

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「この店の雰囲気に合わないんじゃない?」

――都内で6軒の美容院を経営するものです。ある店に半年前に入ったA君について、お客さんからクレームが入ったと店長から報告がありました。
   A君は専門学校を出て入店し、いまは先輩についてアシスタントをしています。仕事に対する姿勢も真面目な好青年なのですが、この夏に彼が流行のタトゥー(刺青)を両腕に入れたことを不快に思ったお客さんが、店長に、

「あの子のタトゥー、この店の雰囲気に合わないんじゃない? 私的には、あれはないな」
と耳打ちしたのだそうです。
   当社では、採用時に「お客さんに不快感を持たせるファッションは避けるように」などと定めたルールを渡しています。ただ、どんなものが悪いかについては、具体的に示してきませんでした。
   仕事の性格上、社員には自由に働いてもらいたいですし、いろいろなファッションを試してもらいたいと個人的には思います。ただ、やはりサービス業ですので、お客さんのクレームには耳を貸さないわけにはいきません。
   A君にクレームについて伝えたところ、「うーん、正直いちおう自分なりに考えたんですけど、この程度だったら問題ないと判断したんで。じゃあ、どうしたらいいんですかね」と、やや不満顔です。タトゥーは洗って落ちるものでもないですし。
   店長からは、「再発防止には、細かくルールを作っていくしかないでしょう」と提案されました。そこで、タトゥー禁止を規程に明記し、「不快感を持たせるファッション」をしたA君を譴責処分にしようかと考えましたが、いかがでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「後出しジャンケン」の処分はよくない

   就業規則や社内規程で服装などのルールを定めている場合、それを破れば懲戒処分の対象になるのは当然です。タトゥーを禁止していると分かっているのに入れてきた場合には、解雇処分とすることもありうるでしょう。

   ただし、処分が不当なものであると反論されないためにも、業種や業務内容に見合った合理的なルールを設け、適切に運用していかなければなりません。今回は、あらかじめタトゥーを禁止していたわけではありませんし、美容師が「お客さんに不快感を持たせるファッション」であるかどうかもあいまいですので、処分は難しいと思います。「後出しジャンケン」のような運用は避けるべきです。

   ただ、お客さんからクレームがあったのは事実。長袖を着てタトゥーが見えないようにするなどの工夫が考えられます。お客さんにもその旨を伝えれば、「この店は自分の声を聞いてくれるんだ」と気づいてもらえ、長く通い続けてくれるお客さんになってくれるのではないでしょうか。

臨床心理士・尾崎健一の視点
店のポリシーを明確にし従業員と共有しよう

   「お客さんに不快感を持たせるファッション」かどうかは、人によっても時代によっても変わります。客観的な基準では判断できません。新しい流行もどんどん生まれるので、細かくルールを設けた規制にも限界があります。ファッションに厳しい規制をすること自体、美容師の働くモチベーションを著しく下げる行為ともいえます。

   したがって、最低限のルールを決めつつ、あとは従業員が自分たちで考え判断するよう仕向けるしかありません。店側が作り上げたい「店の雰囲気」や、ターゲットとしたい「客層」など、重視したい価値観について、ポリシーを経営者や店長が従業員に考えを伝え、反応に耳を傾けることだと思います。その上で、日々の身だしなみについて逸脱するものがあれば、店長がコメントするようにすれば、「暗黙のルール」が形成されていくでしょう。極論を言えば、ひとりのお客さんが不快に思っても、それが「パンクな店」であったのなら、A君のタトゥーが許容されることもあるわけです。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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