休みがちな事務職員に上司オカンムリ 「現場作業に行ってくれ!」

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   大企業はいざしらず、「社内失業者」を抱える余裕もない中小企業では、体調を崩して休む人が現れると仕事の歯車が回らなくなることもあるだろう。ある会社では突発的に休む女性に対し、上司が「ウチにはいらない」と憤慨している。

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繁忙期に出てこられないなら使えない

――中堅製造業の人事担当です。先日、経理部長がやってきて、いきなり、

「うちの事務職員のAさんなんだけどさ、製造現場の作業員に異動させてくれないかな」
と言い出しました。話を聞くと、20代女性のAさんが会社を休みがちで困るとのこと。
   Aさんはメンタル面での問題ではないですが、子どものころから身体が弱く、たびたび会社を休んでいることは人事でも把握していました。ただ、有給休暇と生理休暇を組み合わせて休んでおり、休職するまでには至っていません。
   休むときには本人もとても申し訳なさそうにしていて、会社に出てきたときには一生懸命働いています。
   とはいえ、経理業務の繁忙期に、急に休まれてしまうと業務が回らないのも確かです。部長は日頃から「仕事に余裕があるときには、計画的に休んでいいから」と言っているそうですが、忙しいときに限って休むので困っているそうです。
   そんなおり、月末の繁忙期にもかかわらず、Aさんから「今日、休みます・・・」と電話があったことから、カッとなって人事部に乗り込んできたというわけ。
   仕事の負担自体は事務職員の方が軽いといえますが、経理部は少人数で回しているため、1人休むとダメージが大きくなります。その点、製造現場の作業員は人数が多く、1人の休みを他の人や機械の働きでカバーできる余地があります。
「おれはもう彼女に言うよ。月に3日休んだら工場に行ってもらうって。承知してよね!」
   しかたないかと思いつつ、何か違和感が残って返答に困りました。突然の休みが多いことを理由に、管理部門から作業員にするのは問題があるでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
懲罰的な配置転換は権利の濫用とみなされる

   有給休暇も生理休暇も、労働者に付与された正当な権利です。この範囲で休んでいるのであれば、会社が大きく問題にすることは、実務的にはなかなか難しいと思われます。会社に「時季変更権」はあるものの、生身の人間は機械ではないので、突然体調が悪くなることがあっても仕方ありません。1人休んで業務がストップしてしまう状態は、事務職員が誰であってもリスクが高すぎます。突発的な理由で人がいなくなる可能性を踏まえた上で、人員配置や仕事の分担をすべきでしょう。

   また、事業主は原則として、雇用契約に基づき社員を配置転換でき、社員はそれを拒否することができませんが、異動命令には業務上の必要性や合理性があることが前提となります。恣意的、懲罰的な配置転換は権利の濫用とみなされます。「お前はオレの言うことを聞かないから、××部送りだ!」というようなやり方では、パワハラで損害賠償を請求されるリスクもありますので注意が必要です。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「任に堪えないので異動」の判断もありうる

   野崎さんが指摘するリスクも分かりますが、有給休暇も生理休暇も、Aさんの取得のしかたによっては問題なしといえないでしょう。特に生理休暇の取得は、母性保護の観点から法令等で制限がありませんが、際限なく取られてしまうと業務に影響が出てしまいます。休みの頻度が著しいようであれば、体調面に問題がないか検査や治療する休暇を与え、結果次第では「任に堪えないので異動」と判断せざるをえない種類の業務もあると思います。

   もしも会社の都合で異動してもらわざるをえない場合には、異動先で活躍してもらえるよう納得してもらうことが重要と思います。仕事や同僚に与える影響をきちんと説明し、職場経営のためにこういう判断をしたと告げた上で、会社の期待を伝えましょう。Aさんは責任感の強い女性のようですので、異動先で無理なく仕事をしてもらいながら、できるだけ責任ある仕事で頑張ってもらえるように配慮したいものです。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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