2024年 3月 30日 (土)

就職活動における「アナログ回帰」のススメ

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   新卒の就職難と合わせて、求人と応募のミスマッチがクローズアップされる機会が増えている。これは良いことだ。できれば、硬直した労働市場という構造的な課題にまで踏み込んで報道していただきたい。「大変だぁ~、大変だぁ~」というのは90年代で聞き飽きた。

   一方で、学生の選り好みを指摘する向きもある。一部の大手企業に学生が列をなす一方で、人手不足を嘆く企業が存在しているのも事実だ。こういった企業と学生のミスマッチはなぜ起こるのだろうか。

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「プライドの高いFラン大生」ホントにいるのか

   よく言われるように、大学生が社会の需要以上に増えてしまったという点は一理ある。だから、大卒と言うプライドを捨てて就職活動しろというロジックだ。

   ただ、プライドの高いFランク(無名)大学の学生というのに、筆者はお目にかかったことがない。たいてい彼らは、

「いえいえ、名乗るような大学のもんじゃあございません」

くらいのスタンスで、はっきりいうとあまり学歴に触れたがらない人が多い。

   そういう人がいざ就職活動に際して「俺様は大卒なのに、こんな瑣末な仕事ができるか!」と選り好みする姿は、正直いってあまり想像できないのだ。

   というか、実際は早慶クラスでもそういう人は少ない。早慶なんて1学年1万人近くいる量産型なわけで、みな自分の市場価値というものをよく理解している。本気で勘違いしているのは、一部の東大くんくらいだろう。

   では、なぜお高くとまっているわけでもない普通の学生と普通の企業は、すれ違ってしまうのか。最大の理由は、「デジタルとアナログのミスマッチ」だろう。

   正直に言うと、大手企業に新卒で就職するためには、マーチ(MARCH。明治、青学、立教クラス)以上でないと難しい。そのライン以下は「大卒とはみなさない」という企業も珍しくない。

   中堅以下であればそこまでハードルは高くはないが、それでも彼らなりのデッドラインを引いている企業もある。

   そして、ここが重要な点だが、たとえば「リクナビ」に求人出すような会社は、ある程度高めにデッドラインを引いていて、デジタルに絞り込みたいという企業が中心だということだ。

   逆にいえば、そうやってデジタルにフィルター処理したいから、高い金を出してその手のサービスを利用しているということになる。

デジタルの世界にこもるから切り捨てられる

   つまり、本人のプライドが云々よりも、デジタルでばっさり切り捨てられてしまいがちな人まで、白黒二択の世界に突撃&玉砕しているというのが実態ではないか。

   個人的な意見だが、キャリアの中で学歴が占める割合と言うのは、それほど高くはない。

   僕はFラン出身で超大手企業に入社し、バリバリ活躍している人を大勢知っているし、中には大卒ではない人もいる。

   でも、彼らはみな、「アナログのルート」を通じて、二階建てに這い上がったという共通点がある。

   たとえば、リクナビがなかった90年代以前に世に出た人は、もちろん学歴フィルターはあったが、手書きの履歴書や志望動機等、オリジナルな内容で勝負する余地があった。職歴が最重要視される中途採用については、これまでもこれからもアナログのままだろう。

   というわけで、

「理由はわからないけれども、ネットでエントリーして何十連敗中だ」

と言う人は、とりあえず就職課やハローワーク、地域主催の合同説明会等に顔を出してみるといい。

   デジタルでは何十敗しても何も残らないが、アナログで10敗もすれば、面接のコツや対人事における空気の読み方、企業側の求めるモノ等、それなりの財産が残っているはず。

   「失敗は成功の母」とはよく言うが、その失敗から学べなければ何の意味もないということだ。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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