ゴーンもタレブも「レバノン人」 なぜすごい人物が出るのか

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   カルロス・スリム。メキシコの「電話王」。2010年、ビル・ゲイツを抜いた世界一の富豪(米フォーブズ誌による)。

   カルロス・ゴーン。言わずと知れた仏ルノーと日産自動車の会長兼CEO。

   ナシーム・タレブ。ベスト・セラーとなった『ブラック・スワン』で金融危機を予言した。

   この3人は、世界の経済を語る時に欠かすことのできない人たちと言ってよいだろう。実は彼らには共通点があるのだが、お気づきであろうか。それは3人とも「レバノン人」であるということだ。

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人口は四国並み、複数言語を話せる

日本人は平均的知能は高いはずだが
日本人は平均的知能は高いはずだが

   何故レバノン人から、こんなにすごい人物が次々と出てくるのか。どうして彼らのような日本人はいないのか。今回はそれを考えてみたい。

   レバノンについておさらいしておこう。レバノンは地中海に面する中東の国で、イスラエルと国境を接している。

   人口は400万人ほどで、日本の四国をやや上回るくらい。宗教的には6割がイスラム教徒で、4割がキリスト教徒だ。1人当たりGDPは約1万ドル、日本の4分の1未満。

   1943年にフランスの支配から独立したが、その後も中東戦争のあおりを受けて政情は不安定。つい最近もヒズボラ問題が再燃し、先行き不透明な事態となっている。

   レバノン人が日本人と最も大きく異なる点は、以下の3つだろうと思う。


1.外国語が達者

   中東では複数の言語をしゃべれるのが一般的だ。ましてゴーンやタレブのようなインテリともなれば、4、5か国語を使えるのは当然といえる。Wikipediaによると、タレブは英語と仏語が母国語レベルなのはもちろん、古典アラビア語の読み書き、イタリア語・スペイン語の会話、さらにギリシャ語、ラテン語、アラム語、古代ヘブライ語、カナン文字の読解ができるそうだ。

2.(平均的)知能は決して高くない

   日本人の平均IQは105とされている。これは国別にみると香港、韓国についで世界第3位の高さだそうだ。一方、レバノン人の平均は86であり、決して高いとはいえない。だから統計的にみて、これらのレバノン人に負けないだけの頭脳を持った日本人は数多く存在しているはずである(国別IQの数値は、Wikipediaの“IQ and the Wealth of Nations”の項を参照した)。

3.ディアスポラ(離散)

   レバノン国内に住むのは400万人だが、海外にはそれを大きく上回るレバノン人が居住している。特にブラジルには1000万人近くのレバノン人が住んでいる。カルロス・ゴーンは、そんなブラジル生まれのレバノン人の一人だ。

決定的な違い「頼りになるのは自分だけ」

   ゴーンは、父親がレバノン人で、母親はフランス人。8歳のときにブラジルからレバノンに移り、フランスで高等教育を受けた。現在はヨーロッパ最大の自動車会社ルノーと日産自動車でトップを務める。

   こういう境遇に生まれた彼は、自分のアイデンティティについて常に悩み葛藤してきたことだろう。

   日本のような世界トップクラスの経済力と一億人を超える人口を有する国に比べれば、レバノンなどは(失礼ながら)「吹けば飛ぶような存在」である。

   だからこの3人が「レバノン国を頼る」などと考えたことは、つゆほどにもないだろう。結局、頼りになるのは自分だけなのだ。

   ひるがえって、日本人はどうか。「親方日の丸」で甘い汁を吸うことばかりに汲々となっていたりはしないだろうか。団体ではいばるくせに、一対一では外国人にからきし弱い、というような輩はいないだろうか。

   ヘーゲルは、生命を危険にさらす勇気を持続したものを「主人」、生命の危機に恐怖して闘争から降りたものを「奴隷」と呼んだ。

   今の日本には、あまりにも多くの「奴隷」がいるように思えてならない。願わくば、エリートと呼ばれる官僚や大企業の幹部くらいは「主人」であり続けてもらいたいものだ。

   「主人」なしに「奴隷」は存在できないのだから。

小田切 尚登

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小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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