豊かなはずの日本人 なぜ「幸福度」が低いのか

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   世界で日本ほど、ひどい国もない――。いま、そう感じている日本人は案外多いのではないか。テレビや新聞は日本の問題点を繰り返し報道し、それが我々の頭に叩き込まれる。いわく、日本の政治は最悪である。総理大臣がくるくる変わり、与野党とも政治家の質は低く、外交は弱腰。

   強みであったはずの経済も、以前の元気はどこへやら。企業の競争力は失われ、雇用環境は悪化し、GDPは中国に抜かれる始末。さらに教育、年金、医療…。どれをとっても問題だらけだ。

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客観指標は高いのに満たされない人が多い

シンガポールにアジア1位の座を譲った(出典:レガタム研究所)
シンガポールにアジア1位の座を譲った(出典:レガタム研究所)

   しかし、私が今までに会った外国人の多くは、日本を絶賛している。途上国の人だけでなく、欧米の一流国の人々が口をそろえて「日本がうらやましい」「日本人は幸せだ」と言っているのだ。

   我々はこの認識の違いを、どのように理解すればよいか。いったい日本は諸外国に比べて、よい国なのか悪い国なのか?

   そこで今回は、日本人の幸福度・豊かさの度合いを見てみたい。幸福かどうかは主観的なものなので、それを測るやり方にもいろいろあるが、ここでは米フォーブズ誌に掲載された、2011年1月発表の英レガタム研究所(The Legatum Institute)による「豊かさ指数」(The Prosperity Index)のランキングを使うことにする。

   世界の主要国をすべて含む110カ国のなかで、日本は18位。前年から順位を2つ落とし、よいとも悪いともいえない微妙な位置だ。トップ3はノルウェー、デンマーク、フィンランド。躍進するシンガポールが17位でアジア1位だ。

   レガタムの日本の分析を項目別により細かく見てみると、以下のようになる。

・経済 11位

   日本は失業率の低さ、衣食住の質、労働者一人当たりの資産形成、市場の規模等々、経済力に関するほとんどの指標で世界のトップクラスにある。しかし、現在の生活に満足している日本人は65%に過ぎず、「豊かな国にしては非常に低い数字」(レガタム)とされる。

・国の統治 20位

   民主主義が浸透している点で、日本は世界1位。国民の声が政治に十分に反映している。しかし、政府に対する「信頼度」は98位と非常に低い。

・教育 24位

   国民が教育を受けられる権利では、世界トップクラス。しかし、地域での教育について満足している人は61%にしか過ぎない(平均以下)。

・健康 5位

   日本が最も優れている項目だ。寿命、幼児死亡率、衛生、医療費の低さ、病院のベッド数などで世界のトップクラス。しかし「自分の健康状態」に満足している人は68%に過ぎず、これは下位20%に属する。

   この他、安全が11位、自由が42位、社会資本が31位、起業と機会均等が19位となっている。

人が明るく前向きに生きられる社会を

   これらの日本の評価の特徴を一言でまとめると、

「客観的にみると世界のトップクラスにあるのに、日本人自身が強い不安・不満をもっているため、順位が低めになっている」

ということになると思う。思い当たるところもあるのではないか。

   コップに水が半分入っているとき、「半分もある」と考える人と「半分しかない」と考える人がいる。「まだ半分も残っている」という思考ができるような人は、人生を楽しく送れる可能性も高い。

   例えば、レガタムのランキングに入っていないが、「世界一幸せな国」といわれるブータンは、一人当たりのGDPが年1880ドルで世界最貧国のひとつ。識字率は47%という低さだが、国民調査によると9割以上が「幸福」だと答えるという。

   また、その隣国のネパールはレガタムのランキングは91位で、失業率46%。南北からインドと中国に蹂躙されるという厳しい状況にあるが、それでも人々は牧歌的な暮らしをしながら人生を楽しんでいるとされる。

   もちろん、ただ楽観的になればよいというものでもない。「水が半分しかない」と考える日本人は、そのおかげで継続して努力を重ね、今日の地位を築いてきた。

   しかし、悲観的な見方が「どうせダメだ」という自暴自棄の感情を引き起こしてしまっては元も子もない。明るく前向きに生きていける社会を作っていくには、どうしたらよいか。これが、我々が抱える最大の問題かもしれない。

小田切 尚登

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小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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