新入社員の疑問 「不満を抱きながら働くのが当然?」

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   都内の中堅商社に就職したてのA君に、感想を聞くことができた。入社式の前日、人事部長から電話を受けたという。まさか、内定取り消し?――と思いきや、配属先が変更になるとのこと。

   希望していた本社マーケティング部から、関東地方のある県を担当する営業所へ。すでに配属されていた同期が入社を辞退したため、急きょ穴埋めが必要になったらしい。

「入社の条件として自分の専門が活かせる仕事を、と確認を取ったのに。いきなり約束破られて、辞めようかと思いました。でも、何社も落ちてここに決めたし、これから就職先を探すわけにも行かないので・・・」

「さあ前進!」「実行あるのみ!」に呆れる

   4月1日の入社式に出ると、5~6人の取締役があいさつに立った。社長は「これまでのやり方は通用しなくなった」「新たな発想で事態を打開しなくては、会社の未来はない」とゲキを飛ばした。A君は身を引き締めた。

   しかし、配属先の営業所長の口から飛び出したのは、「まず行動!」「さあ前進!」「実行あるのみ!」という威勢のいい掛け声ばかり。

「社長に『新たな発想』って言われたのに、なぜ『まず行動』なのかと噴き出しそうになりましたよ。考え方を新しくするんじゃなかったのかと」

   営業所は、本社ビルの隣の雑居ビルの一室。20人ほどのスタッフがいるが、本社で見た人たちと比べると表情が暗い。いきなり聞こえよがしにイヤミを言う先輩もいた。「本社でお払い箱になったヤツか」。まだ配属されてないのだから、お払い箱ではないのに。

   あいさつをしても、返す人もまばら。目も合わせない人もいる。これはとんでもないところに来た、配属先の変更なんてOKしなきゃよかった、と後悔した。

   配属先の部長に別室に呼ばれると「不安になったよな」と考えを言い当てられた。部長は、かつてマーケティング部で働いていたが、社内のゴタゴタで営業所に異動してきたという。「ここは左遷先なのか」と絶望的な気持ちになった。

   部長はA君を励ますように、こう声を掛けたという。

「ここが最前線の現場であることは間違いない。しかし、このままでは営業所の未来がないことも事実だ。現場に未来がないということは、会社にも未来がないということだ」

部長の話を理解できる日は来るのか

   とはいえ、A君がいきなり「新たな発想」で事態を打開しようとしても、そう簡単にできるものではないという。会社や仕事のしくみを理解することが必要だし、人を動かすためには人間関係も築いていかなければならない。

   じゃあ、どうすればいいんですか、と悲しくなったA君が尋ねると、部長は、

「とりあえず、なんか違和感を持ったらノートに書き留めておくようにしたら。思いついた解決策のアイデアもメモするといい。たぶん、働いているうちにアイデアは変わっていくよ」

   一番よくないのは、職場になじむことだけを考えて、違和感を忘れてしまうこと。また、違和感に振り回されて、文句ばっかり言っているのもよくないという。

「マーケティング部の何が悪いのか、やっているうちに分かってくるから。そういうことをよく知ってから、本社に行った方が強みになる」

   ということは、しばらくは現状に不満を持ちながら働かなければならないのか。

   そう尋ねると、部長は「そりゃあ当然だよ。だって、働くってそういうことじゃん!」と明るく笑いながら答えたそうだ。A君は、「言っている意味、ぜんぜん分からないです。理解できる日は来るんですかね」と首をかしげている。

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