「有給休暇の当日申請認めない!」なんて納得いかない

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   有給休暇を取得したいと思っても、職場で取る人もめったになく、「急病にでもかからなければ休めやしない」と嘆く人は少なくないのでは。

   ところが、中には急病の場合でも有給休暇での処理を認めない会社もあるという。ある社員は「誰だって急に体調が悪くなることはあるのに」と不満顔だ。

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急病で欠勤扱いは違法じゃないのか

――小さい製造業の会社に勤務している者です。中途入社で去年から働いている会社の制度について、納得いかないので相談させて下さい。

   この会社は有給休暇を取得する場合、遅くとも3日前には申請することがルールになっています。そのこと自体は入社してから聞いたのですが、まさか自分がおかしな目に遭うとは思っていませんでした。

   先日、朝起きたら目まいがして、熱を測ると38度6分。全身がだるかったので上司に電話を入れました。病院に行ってから自宅療養したいので、有休を取得したいと伝えると、

「だからさ、当日の申請はダメだって言っただろ? 急に休まれたら困るんだよ。健康管理がなってないヤツの休みに、給料は払えないよ」

と返されました。もしそうなると欠勤になり、その分の給料は月末に引かれます。

   納得がいかなかったので、後日総務に「誰だって急病になることはある。それなのに欠勤扱いのペナルティとはどういうことですか?」と苦情を入れましたが、就業規則に書いてあるの一点張り。

   同僚に聞くと、以前は飲み会やテレビ観戦の翌日に仮病で休む人が多く、人手が足りなくなり仕事に困ったのだとか。そのとき社長が「当日申請は認めるな!」という号令をかけ、徹底してきたのだそうです。

   しかし、これまでの会社では、こんな決まりはありませんでした。就業規則に定めていても、労働基準法違反にはならないんでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
違法ではないがモチベーション下がりそう

   労働者から有休取得の申請があったとき、会社は原則として拒否することはできません。しかし業務に多大な影響があるときには「時季変更権」を行使することができます。当日申請を許すと会社は代替要員が確保できず、生産業務などに悪影響を受けるので、申請期日を設け、守れない場合に欠勤扱い(ノーワーク・ノーペイ)とするルールを定めても、直ちに労働基準法には違反するとはいえません。

   しかし急病で会社に行けなくなることは、誰にでもありうること。社員の健康への配慮が足りない印象を与え、不満が出るのも無理もないと思います。会社は万一の場合でもカバーできる体制づくりを心がけたいものです。海外には「シックリーブ」という有給・無給の傷病休暇を年に数日設ける会社があり、家族の看護にも使えるそうです。法定の有休のほかに労使協定などでプラスの休暇を与えられるくらい業務環境を整えると、従業員のモチベーションも高まるのではないでしょうか。

臨床心理士・尾崎健一の視点
感染症の従業員が休みにくくなる弊害ある

   モチベーションの問題がある一方で、業務や職場によっては、あらかじめルールを定めておかなければ従業員の統制が取れなくなり、全体の生産性が大きく下がってしまうことがあります。他の会社がやっていなかったとしても、自社のルールを貫かなければならないこともあります。

   ただし、当日申請を認めないことで有休の取得率が著しく下がるようでは、従業員の健康維持もままならず、かえって体調不良者を増やします。事前申請による計画的取得をあわせて推進し、取得率を上げるような支援をすべきです。

   また、傷病時の休暇を取りにくくすると、インフルエンザなどの感染症にかかった従業員が無理に出社して、他の従業員に感染させるおそれもあります。ひとりも休ませないという姿勢が、かえって大勢の従業員が一斉に休むリスクを高めてしまうわけです。「体調不良などやむを得ない事情の場合には当日申請の有休取得を認める」など、現実的な運用をする配慮も欠かせないでしょう。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
野崎大輔・尾崎健一:黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術
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  • 発売元: 小学館集英社プロダクション
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2011/06/30
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