「ボランティア休暇を作って!」 社員に詰め寄られました

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   大手企業を中心に、社員が震災ボランティアに参加しやすい休暇制度が設けられている。休暇を取得し、現地で欠かせない役割を果たしている人もいるようだ。

   ある中堅企業では、大手の取り組みは関係ないと思っていた担当者が、社員から不意に「うちでもやるべきだ」と提案を受け、戸惑っている。

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説得力ある主張「我が社の利益にもなる」

――従業員90人ほどのIT企業で人事を担当しています。このたびの震災でさまざまな支援が必要になっていることは重々承知したうえでの相談です。

   5月の連休以降、震災ボランティアに当社の社員が参加しているという噂を耳にしています。土日を利用して参加しており、特に20代の若手が多いようです。

   人事としては現地の安全が気になっていましたが、参加経験者のA君から「うちでもボランティア休暇を作ってください!」と強い調子で提案を受けました。

   現地ではボランティアの数が減少し、人手不足に苦しんでいるとのこと。そんな中、大手企業の社員たちが交代で事務局を担当しているのを見て、「うちの会社でもこれくらいやるべきだ」と思ったのだそうです。

   しかし当社はそこまで人員の余裕もなく、経営者や管理者にも、その手の活動へ理解が深いものはおりません。ただ、A君の、

「いつか我が社も被災するかもしれない。そのときは他社に助けてもらうはず」
「被災地が早く復興すれば、ゆくゆくは我が社の利益にもなる」
「いちど現地に行けば、知らん顔で仕事をしていることの非情さが分かる」

などといった言い分には、なかなか説得力があります。

   とはいえ、ボランティア休暇を設けたら、次々と希望者が出て仕事にならなくなる懸念もあります。ただ、まったく何もしないのも消極的すぎです。当社にどんな選択肢があるものでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
若者の社会貢献志向は高い。頭から否定しないこと

   営利企業が自社の利益追求以外の事柄に、どの程度協力するかは、会社によって考えが異なるでしょう。しかし、いまの若い人の多くは社会貢献に強い関心を持っています。会社への帰属意識やモチベーションを考えると、社員の提案を頭から否定するのは得策でありません。会社の社会貢献活動としてアピールする効果も悪くないはずです。

   大手企業の真似はムリでも、できる範囲で始めてみてはどうでしょう。ボランティア目的の有給休暇を取得しやすくしたり、取得時に会社が無給・有給のボランティア休暇を数日間プラスすることも考えられます。なお、社員の安全や会社の風評などを考え、心得や技術を指導してくれるしっかりした団体を通じて参加し、ボランティア活動保険への加入を勧め、中途半端な気持ちでは現地で歓迎されないことを伝えておいた方がよいでしょう。担当者が一度体験し、制度を設けるメリットを経営者に直接レクチャーすると、意外と乗ってくるかもしれません。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
いっそ会社のプロジェクトとして取り組んでみては

   会社がボランティア休暇を許可する場合、原則無給でもよいと思います。しかし、有給休暇の取得もままならない状況で欠勤扱いとすると、従業員から「がめつすぎる」と思われるかもしれません。たとえば取得期限が切れた前年度の有給休暇を、ボランティアなど特定の目的に使える「積立休暇制度」を作ることも考えられます。新しい休暇制度を設けるより簡便で済みますし、バランスの悪い「休みすぎ社員」の発生も防げます。

   個々人がバラバラに休暇を取得することで仕事のコントロールが難しくなる懸念があるのなら、いっそのこと会社のプロジェクトとして期間を決めて、業務として社員を交代で参加させる方法もあるかもしれません。各部署で参加する人数や日数などを決め、参加後には出張と同様に報告をさせるのです。職場以外での経験が従業員の成長につながる場合もあるでしょうし、個人が単発で行くよりボランティアの成果も上がりやすくなります。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
野崎大輔・尾崎健一:黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術
野崎大輔・尾崎健一:黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術
  • 発売元: 小学館集英社プロダクション
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2011/06/30
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