2024年 4月 26日 (金)

スマートフォンの「3Dカメラ」に夢中

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   最近、スマートフォンに搭載された3Dカメラに夢中なのが、50代の主婦A子さん。少し遅く起きた休日の朝、お気に入りのカメラを試してみようと庭に出てみたところ、先に起きていたご主人が何やらゴソゴソやっています。

   A子さんが「何をしてるの?」と声をかけると、「ちょっとさ、面白いからスマホのカメラで撮ってみてよ。いいかい?」

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休日の朝、庭でカラスを撮影

   言うが早いか、ご主人はA子さんがいる縁側にいそいそと早足で向かってきます。後には、庭にやってくる小鳥たちのために水を張っている小型のお椀が置いてありました。

   しばらく夫婦で静かにしていると、バサバサッと羽音がして、真っ黒な大きなカラスがどこからともなく舞い降りてきました。

「それがね、カラスは特に警戒するような素振りもなく、チョンチョンと跳ねてお椀の方へ行くのよ。私は怖いから、何をしたのよ?って夫に訊いたら…」

   ご主人は、小声で「いいから見てなよ、面白いから。それより、ちゃんと3Dで撮ってる?」と言うばかり。怖がりながらもA子さんは、スマートフォンの背面にあるレンズを向けて撮影を始めました。

「カラスはお椀に溜めてある液体を飲んでて、しばらくしたらフラフラしだしたのよ。ビックリして、あなた何を飲ませたの?って訊くと、夫はクスクス笑いながら『昨日の残りのウィスキー』だって言うじゃない!」

   ご主人は思ったより早く目覚めてしまい、手持ち無沙汰のまま居間に行くと、昨夜飲んでいたウィスキーがビンの底に1cmほど残っていたのを見つけました。その時、スズメやカラスが鳴くのを聞きつけ、思いつきで庭のお椀に注いでみたのだそうです。

「薄い水割りを入れておいたら、最初はスズメが来て一口、二口飲んで飛び去っちゃった。その後にカラスが降りてきたらしいんだけど、どうも気にいったみたいで、いつまでも飲んでて。それで一気に原液のまま入れていたところへ、私が起きてきたのね」

「動画サイトに投稿したらどうかな」

   フラフラと千鳥足になったカラスは、いちどお椀から離れたものの、すぐにまた戻って「飲み直し」ました。

   A子さんからスマホを手渡されたご主人は、カラスに近づいていきました。カラスもそれに気づき、羽を大きく伸ばして飛ぼうとしましたが、脚もとがヨタヨタして、なかなか飛べません。

   気合いを入れるかのように大きくカァーッと一鳴きし、闇雲に羽をバタバタとさせたカラスが、空中を蛇行しながら近くの電柱へ向かって飛んで行くのを見送り、A子さん夫婦は縁側から室内へ戻りました。

「でね、夫がこの動画を動画サイトに投稿したい、って言い出して。世界中の人が見て笑うんじゃないか、100万回も200万回も再生されるんじゃないか、って」

   しかし、投稿の仕方がわかりません。そこで下の娘が大学の部活から帰ってきたら、やり方を訊ねてみることにしました。その日の夜。帰ってきた娘に動画を見せると、案の定、キャッキャと爆笑しています。

「一通り見終えた後で、これを動画サイトに投稿したいんだけどって娘に言ったら、何をバカなことを、って怒られちゃって」

   娘さんいわく、お椀を仕掛ける父親の顔、庭の全景、フラフラと飛んでいくカラスとともに近所の屋根などの様子が映っているからダメだ、と。

「ネットを使う人のなかには、動画から住所を特定し、嫌がらせに来るようなのもいるって。『あたしがストーカー被害にでもあったらどうすんのよ』と、最後は怒られました」

   横で聞いていたご主人も「言われてみれば」と納得し、計画はあえなく中止の憂き目に。ご主人が飲み会などの座興に使い、コピーはさせないということとなりました。

   どんな動画なのか一目見たいと思う身としては何とも残念ですが、娘さんの対応は決して間違いではないとも思います。

   ところがA子さんは、諦めたわけでもなさそうです。「いつか娘がお嫁に行ったら、投稿方法をマスターして世界中の人に見てもらうわ!だって、せっかく3Dで撮ったんだし(笑)」。A子さんは、屈託のない笑顔でそう言いました。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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