仕事場でキャミソール、やめさせられますか?

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   節電を契機として、定めていたドレスコード(服装規程)を緩和する職場が増えているようだ。夏の「冷房病」に悩まされていた女性からは、クールビズに歓迎の声もあがっている。

   一方で、ある会社では女性社員の「軽装化」が進みすぎ、一部の男性社員から「いかがなものか」と声があがるようになっているという。

地方支社の幹部「会社の恥だ」

――中堅メーカーの東京本社で、営業推進課長をしています。今年の夏は節電のため、職場のエアコンの設定温度を28度にし、スタッフはクールビズを励行しています。

   男性社員はノージャケット、ノーネクタイで働くことに慣れてきたようですが、若い女性社員たちが暴走気味で、どうしたものかと思っています。

   営業事務の女性たちの中は、ノースリーブはもちろん、下着のようなキャミソールにサンダル履きで出社するものも現れました。最初見たときはギクッとしましたが、社内で働く分にはいいだろうと放っておきました。

   ところが、地方支社から幹部たちが集まったときに、会議の席で「あいつらの格好は、いったいなんなんだ!?」という意見が相次ぎました。

「常識的に考えて、仕事中のファッションとは思えないな」
「うちの支社では、あんな格好は許していないよ」
「通勤中にお客さまが目にしたら、会社の恥だ」

   会議が終わったあとに、課員の男性に聞いたところ、

「僕が短パンで来たら彼女たち、きっとやめてくれって言いますよね。なのに、なんでオンナはスケスケでもいいんですか。差別ですよね」

とホンネを吐きました。

   しかし、彼女たちに注意するにも、どういう理屈で言えばいいのか迷いますし、そもそも注意すべきかどうか考えあぐねています――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
服装は原則自由。注意するときは就業規則を根拠に

   職場における髪型や服装は、原則自由です。大げさに言えば憲法で保障された「表現の自由」を侵害することはできません。髪を黄色に染めたトラック運転手の解雇が無効とされた判例もありますが、安全性や効率性などの観点から合理的な理由があれば一定の制限をすることはできます。

   今回の場合は節電という名目もあり、涼しい格好をしなければ暑くて能率が落ちるという言い分の方に軍配があがりそうです。もし目に余る部分を注意するとすれば、就業規則の「服装や身なりは常に清潔にし、不快感を与えないよう留意すること」という規定を根拠にすることが考えられます。露出が多く目のやり場に困るということは「不快感を与える服装」に該当し、従わなければ処分の対象になりえます。一方、通勤中の服装は就業時間中ではないので制限することはできません。「もう少し穏当な服装にしてくれないか」と頼むことはできるでしょうが、従わないことで処分することはできません。

臨床心理士・尾崎健一の視点
服装を制限されるとモチベーションが下がる人もいる

   キャミソールを禁止すべきかどうかは、職場で決めることです。どの服装が仕事に適しているかは、会社のカルチャーや仕事の内容、社員の年齢や価値観、顧客の感覚などによって異なります。地方と都市部でも異なるかも知れません。営業事務の女性たちに「君たち、常識的に考えなさい」といっても、常識自体が人によって違うのですから意味がありません。

   逆にいえば、社長や所属長の主観が「職場の基準」になることもありうるでしょう。実際、各社のドレスコード(例:かかとをカバーしないサンダルは不可)に合理的な根拠があるわけではありません。ただ、服装をむやみに制限されるとモチベーションを下げる人がいることも知っておくべきです。全体の仕事の能率があがるなら、自分の趣味に多少合わない人たちがいても大目に見る方が、大物に見られますよ。逆に、仕事の能率が下がっても「自分の秩序」を保ちたがる人は、管理職として有能と言えないという見方もあるかと思います。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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