2024年 4月 24日 (水)

「ラッキー」をつかむためには、まず数をこなせ

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   他人から賢く思われたい人は「手数を少なく要領よくやること」を重視します。しかし成果を上げる人は、それよりも「確実に数をこなすこと」を先に考えるものです。今回は私が若い頃に、そのことを気づかされた話をしましょう。

   大学を卒業し、銀行員として首都圏の支店に配属。入社2年目のある日、とつぜん融資係から得意先係に配置換えになりました。いわゆる「預金獲り係」です。当時の銀行は集めた預金を貸し出して利ザヤで稼いでおり、その原資稼ぎを命じられたのです。

トップセールスマンは頭を使っていない?

自分なりによく考えたつもりだったけど
自分なりによく考えたつもりだったけど

   上司から言い渡された仕事は、担当地域の定期預金残高を増やすために、「お得意様からの定期預金の追加獲得」と「新規顧客からの預け替え獲得」の2つでした。

   話好きの私にとって、顔見知りのお客様とお話しする仕事は、あまり苦もなくできていましたが、知らない先に飛び込む仕事は経験がなく、なかなか思うように数字は伸びません。

   係替えから3カ月ほどしたある日、課長から「君の地域は預金残高がジリ貧だけど、新規先を回っているの?」と声をかけられました。私は「ちゃんとやっていますよ」と自信をもって答えました。

私「セールストークもバッチリ考えていますから、面談さえできれば絶対うまくいくはずですが、狙っている家は金持ちなので、けっこう敷居が高いんです」
課長「新規訪問件数が少ないように思うけど」
私「じっくり観察して資産家の確率が高そうな家を選んでいるので、仕方ないですよ。それに留守の家も多いから、面談件数が伸びないんです」

   そこまで聞くと課長は、全社連続表彰を受けている先輩のAさんに「何かアドバイスはないか?」と声をかけました。Aさんは私よりも5歳以上も先輩でしたが、高卒で融資経験もなく、預金獲り一筋。正直、あまりパッとした印象を持っていませんでした。

「この人は一日外に出ずっぱりで預金を集めるやり方の人で、机で頭を使って作戦を練っているように見えないし、決して目標にできる先輩じゃない」

   セールストークがうまそうでもないし、預金が集まるのは、よほど地域に恵まれているのだろうと勝手に思っていました。

日々の目標を「獲得」に置かない極意

   しかし自分の日誌を見せると、Aさんはパラパラとめくっただけで、こう言いました。

「無駄な活動が多いよ。それと、頭の使いどころが違うんじゃない?一度行って留守だったら、次回は同じ曜日や時間は外さなきゃダメだ。それに新規訪問を増やすには、移動時間をいかに減らすかも工夫しなきゃ」

   訪問先を門構えで選んでいたことも、「それだけでニーズは分からないし、そんなことより小口でもいいから一件でも多く面談に持ちこむにはどうするかに頭を使うべきだ」と断じられてしまいました。

   帰り道、言われたことを何度も反復するうちに、少しずつ意味が分かってきました。「そうか、ニーズのありそうな家の選別ではなく、いかに数多くの相手に会うかを考えるべきなのか!」。頭をハンマーで叩かれたような衝撃でした。

   その日を境に、私は毎朝必ずAさんと話をして、少しずつヒントをもらいました。中でも参考になったのは、日々の目標の置き方。預金獲得ではなく「新規訪問件数」と「新規面談件数」を掲げ、「これを毎日必ず達成していれば、数字はついてくる」と教えてくれたのです。

   その証拠とも言えるのが、Aさんの担当地域の地図に赤字で書かれた“L”の文字。

「訪問件数が増えると、セールストークすら必要ない“Lucky(ラッキー)”獲得、つまり『出会いがしら獲得』が増える。『銀行さん、ちょうどいいところに来てくれた』ってヤツ。これを増やすことこそ新規営業のだいご味だよ」

   Aさんのやり方を徹底的にマネした私は“L”獲得も増えて、翌期にはめでたく全社表彰を受けました。ちなみにその年、支店で全社表彰を受けたのはAさんと私だけでした。

※営業を中心としたお仕事の悩みについて、筆者がお答えします。

大関 暁夫

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大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。執筆にあたり若手ビジネスマンを中心に仕事中の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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