日本が「寄付大国」になるための2つのポイント

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   世界一の経済大国のアメリカは、世界一の寄付大国でもある。ビル・ゲイツのような金持ちだけでなく、年収数百万円の中流サラリーマン家庭でも、年に十万円程度は寄付するのが普通だ。

   アメリカで最も収入の低い20%の家庭の年収は平均で81万円ほどだが、彼らでさえ年間平均3万5千円弱、つまり月に2900円ほど寄付している。自分自身の生活さえ苦しい人たちが収入の4%を超える寄付をすることについて、元警備員でシングルマザーのターニャはこう説明する。

「カネがない人間のほうが、困っている人の気持ちがよくわかるのよ」(「シアトル・タイムズ」のウェブ版2009年5月23日付けより)

上場企業なみの「情報開示」が欲しい

   一方、日本人はアメリカ人ほど寄付をしない。「困った人がいたら政府が助けるべき」という考えが支配的のようだ。政府のカネも元は我々国民の税金なのだが、かといって「政府が十分カネを出せるよう喜んで税金を払います」という話もあまり聞かない。

   しかし、いろんな人と寄付について話してみると、日本人も実は必ずしも寄付に消極的というわけではないことが分かる。ただ、

「何を基準に、どこへ寄付をしたらよいのか分からない」

という人が多いようだ。そこで、日本でも寄付を盛んにするためのポイントについて書いてみたい。

   ひとつめは、寄付を受け付ける団体がきちんと情報開示を行い、チェックを受ける環境を整えることだ。株式投資をする人は新聞や会社四季報などを使い、各企業について念入りにチェックする。慈善団体についても同じことをしない理由はない。

   広く一般人からカネを集める慈善団体は、上場企業のようなものだ。まともなところなら、きちんと情報開示がなされてしかるべきだろう。

   寄付先進国アメリカでは、慈善団体を「収益を目的としない企業」としてとらえる見方が広まっている。株主も寄付者も、自分の出したカネを有効利用するよう託す点では変わりがない。異なるのは、株主が儲けを望んでいるのに対し、寄付者は人の役に立つことを目的にしているところだ。

   たとえば「国境なき医師団」のサイトをみると、そこには毎年の活動報告書があり、活動の状況、経費の明細、監査報告書などが記されている。こういうツールを活用して実態を納得いくまで十分に検討したいものだ。

   また、米国には各種の寄付団体を比較・評価してくれる機関がある。日本でもそういうところが現れると、どこが寄付に値する団体なのか分かりやすくなり、実際の寄付も進むのではないか。

支援される側のニーズをいかにくみ上げるか

   ふたつめは、支援される人のニーズを実現できる寄付のしくみを作ることだ。何が必要かは支援される本人が一番分かるのだから、それをはっきり言ってもらえればそれに越したことはない。ただ現実には個々の要望を聞いて回ることは難しいので、それをくみ上げるしくみを作ることが必要だろう。

   今回の震災では、「不必要な物資ばかりが届いて困り果てる」という事態を避けるために、各自治体が地域の要望をまとめてインターネットなどで開示を行った。こういう調整は、他の寄付事業においても期待されることだ。

   現状では被災地の宮城県で、仮設住宅に多くの空き家が生じていると報じられている。このような場合でも、当事者のニーズを事前にくみ上げるシステムがあれば、問題は避けられるはずだ。

   善意の寄付金を使う際には、公共事業以上のムダの少なさが求められるだろう。優れた企業は消費者のニーズをくみ上げるのが上手だが、それとまったく同じことが寄付を受け付ける政府や地方自治体、非営利団体にも求められる。

   このほか、アメリカとの比較では税制の問題もあるが、今回指摘した部分がクリアになっていなければ、寄付の文化が健全に育成しないのではないか。

   これからも自然災害に限らず、さまざまな社会問題を解決するために、広く寄付を募って運営する非営利団体の力が必要となる。国頼みでは、いくら待っていても解決されないものもある。今こそ我々は寄付について真剣に考え直すべきだと思う。

小田切 尚登

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小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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