「即戦力」だけが理想なのか 「社員の成長が楽しみ」な会社は伸びる

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   人気のファッションサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ・前澤友作社長と3年前に対談したときのことです。話題が事業戦略から社員育成に移ったとき、彼の顔が思わずほころんだことを印象的に覚えています。

   当時から人気が高かったとはいえ、会員数はまだ80万人。それが今では300万人を超えています。取材記事はダイヤモンドオンラインに掲載されていますが、人材育成を農業に例えて語る言葉に、社員に対する深い愛情を感じました。

「人が育ち、活躍し、楽しそうにしているのを見ているのはおもしろいです。家庭菜園でトマトを大事に育てている感覚ですね。ゆっくり成長しているなと…」

「教育」という言葉を使わない若き経営者

   会社の評価システムが成果主義に移り、短期的な業績によって処遇が変わるようになってから、職場における人材育成の考え方も変わりました。

   とにかく目の前の仕事をこなし、効率よく結果を出さないと低い評価になってしまう。そんな恐怖心から、若手社員に関わることを面倒で避けたいことと考えるビジネスパーソンが増えているのは、とても残念なことです。

   でも本当は、本質的なものの考え方を大切にし、通過儀礼的な失敗をさせ、彼らの成長を温かく見守ることは、先輩や上司にとって「得をすること」であるはずです。

   彼らは自分の部下として将来活躍してくれる可能性のある存在。頼れる実力をつけてくれれば、自分のマネジメントが大いにラクになります。

   さらに成長途中の人材の変化は、自分自身の姿を映す鏡にもなります。こういうことに気づかないビジネスパーソンは、仕事をする上での貴重な機会を十分に活かしきれていないことになるでしょう。

   社員の成長を楽しめる雰囲気のある会社は、誰もが成長したがる「伸びしろの大きい会社」です。なお、前澤社長は、何かを教えるといった意味での「社員教育」という言葉を使ったことがないと言っていました。社員の主体性を尊重しつつ、

「なぜそうしたのか」
「お前のカッコいいとはどういうことか」

といった問いを投げかけ、明確に答えられなければ自分の頭で再度考え直してもらうのだそうです。

「課長の器」の違いで人材輩出力に差

   私がかつて取材したある事務機器メーカーでも、管理職の人材育成に対する考え方が、部署の雰囲気や業績に影響していることに気づいたことがありました。

   バリバリのトップ営業マンでスピード出世した35歳のS課長は「最前線の人材は全社の精鋭を集めるか、社外から即戦力を買ってくればいい」と公言し、若手社員ほど面倒な存在はないと言っていました。

「現場の最前線は結果を出すのが仕事。人の成長支援などしている余裕はないですから。そもそも人材は人事部がしっかり面倒を見てくれるのが筋でしょう」

   一方、隣の課の40歳のG課長は、

「仕事は成果を上げつつ、部下の成長も欠かせない。自分の頭で考え、会社の将来を担える存在になって欲しい」

と言っていました。彼は他部署の若手社員からも慕われ、ときには「うちの課でやってみるか」と人材を引き受けていました。

   不思議なことに、精鋭のS部隊と寄せ集めのG部隊では業績がさほど変わらず、ときにはG部隊が上回ることもありました。雰囲気はもちろんG部隊の方がよく、メンバー同士のコミュニケーションが活発にされていました。おそらく何年か後には、人材輩出などの力でG部隊が差をつけていったと思います。

   能力が高く自立して、結果で示す完成された「即戦力社員」――。合理的に考えると、こういう人材を採用するのが理想という考えもある一方で、未完成の人材の成長を温かく見守ることで会社が伸びていく。そういう懐の深いパターンもあるといえるのではないでしょうか。

高城幸司

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。「高城幸司の社長ブログ」
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