東電「賃金リストラ計画」の迷走が続くワケ

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   東電のリストラ計画が迷走している。

   東電側が作成したリストラ案に対して、政府の立ちあげた経営チェックのための第三者委員会が「ゆるすぎる」とダメ出しし、今度は枝野経産相が「せめて公務員並みの報酬にすべきだ」と表明すると、同日中に米倉経団連会長が「一方的すぎる」と東電への援護射撃を行ったのだ。

「公務員並み」に見える政府の思惑

   どう迷走しているのか、ざっと整理してみよう。

・どう“ゆるい”の?

   まず第三者委員会の「ゆるい」発言だが、具体的にどこまで下げるべきなのか全然分からない。こんなこと言われたら東電の担当者も困惑するだろう。そもそも、第三者委員会自体も基準が分かっておらず、「世論の空気を読んでガス抜きした」というのが正直なところだろう。

・そもそも、公務員は適正賃金なの?

   「競争がないのだから公務員並みの賃金にしろ」という枝野ロジックは、一見すると筋が通ってはいる。だが、そもそも電力会社以上に競争原理の働いていない公務員の賃金水準を、ここでわざわざ持ちだす意味がまったくわからない。

   仮に他業種の水準に合わせるとすれば、全産業の平均賃金だろう。逆に言えば、中小企業も含めた全産業平均だと削減幅が大きすぎるから、あえて1割程度の引き下げですむ公務員を持ちだしたのだと思われる。大手企業労組を支持基盤にする民主政権にとって、大手と中小の企業規模による格差がクローズアップされる事態は避けたいはずだ。

・税金もらっといて「口出しするな」はないんじゃない?

   米倉会長の発言にいたってはコメントするに値しない。税金を出してもらった以上は、口も手も出されるのは当然のことだろう。株式持ち合いで保有する東電株が紙くずにならなかっただけでも感謝すべきだ。

   以上のコメントから見えてくるのは、誰も東電の賃金水準がいくらであるべきか、明確な基準は持っていないという現実だ。

電力自由化なしに「あるべき水準」は見えない

   そもそも「賃金はいくらであるべきか」という絶対的な基準は存在しない。唯一、根拠のある価格は、労働市場でつけられた値札だが、独占事業である東電にはそれすらない。

   極端な話、賠償金から脱原発のコストまで、全部消費者に丸投げすることだって可能なのだ。

   本来はそれを避けるために会社清算してリストラし、電力の完全自由化で長期的に競争原理を働かせるべきだったのだが、どちらも実施されなかった。迷走の芽はここから始まっている。

   これから10年くらいは、毎年のように昇給やボーナスをめぐって、東電と政府のやり取りはマスコミをにぎわす風物詩となるだろう。そして多くの国民が、答えのない議論に巻き込まれることになるはずだ。はっきりいって、壮大な時間の無駄である。

   個人的には、今からでも遅くはないから、発送電分離による電力自由化だけはすべきだと考える。そうすれば、短期のリストラは無理でも、長期的には電力会社の処遇は、あるべき水準に近づくことになるだろう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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