グランプリ賞金は200万円!「やる気ある人を支援する」リクルートの評判の人事制度

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   ネット界隈で最近話題の「キュレーション」サービス。自分にニーズにマッチした情報に迅速にアクセスするために、検索エンジンだけではなく「人間」を介した評判や選別をする行為が注目されている。

   そんな中、本やマンガ、音楽や映画、ゲームの「オススメBest3」を集めたランキングサイト、「bestmania(ベストマニア)」が2011年10月4日に公開された。実はこのサービス、今年2月にリクルートの社内コンペでグランプリを受賞したばかりのプランだという。

新規事業提案制度から生まれた「ベストマニア」

「ベストマニア」を立ち上げた元リクルート社員、エモーチオ代表取締役の林晃佑さん
「ベストマニア」を立ち上げた元リクルート社員、エモーチオ代表取締役の林晃佑さん

   サイト開設後、2週間でBest3投稿総数は10万個以上にのぼり、ユーザーからの評価も上々のよう。ゆくゆくは日本語以外にも展開し、1000万個の「ベスト」を集めることを目指している。運営会社のエモーチオ代表取締役の林晃佑さんは、サービスの特徴をこう説明する。

「いま求められているのは、濃くて価値のある情報。漠然と好きというだけでなく、『仕事で疲れた30代女性が週末に泣きたいときに見る映画』というように、雑誌の特集のようにニッチだけど、ササる人にはササる情報を集めるサービスにしたい」

   林さんは大学時代にアメリカ留学で刺激を受け、「自分でも新サービスを作りたい」と決意。卒業後に友人3人と就職系サービスを創設した。2年後に事業を売却し、「会社の持つリソースの大きさと、ワイワイガヤガヤした雰囲気に憧れて」、リクルートに中途入社した。

   入社後は、医療関係のウェブサービスのマーケティング職に配属。あるとき上司に「関西方面のクライアント営業が弱い」と不満を漏らしたところ、「じゃ、お前がやれば?」と言われたという。

「大阪に1年通い、ホテル住まいをしながら初めて飛び込み営業をしたのですが、『自分が気づいたことは自分でやってみろ』という経験はすごく勉強になりましたね」

   その後、「公募制社内転職」の制度を使い、結婚情報サービス「ゼクシィ」の事業部を志願して異動。そこで社内の新規事業提案制度「New RING」の存在を知り、かつての事業仲間を集めて応募することにした。

役員が3か月つきっきりでサポート

リクルート経営企画室、「New RING」運営事務局の松尾奈美さん
リクルート経営企画室、「New RING」運営事務局の松尾奈美さん

   林さんが参加した「New RING」とは、「New RECRUIT Innovation Group」の略。単なるアイデアコンテストではなく、提案が承認されると、提案者自身により実際に事業化されるのが特徴だ。すでに30年近く開かれ、現在のメジャー媒体である『ゼクシィ』や『ホットペッパー』『R25』なども、ここから生まれている。

   年に1回、新規事業テーマや経営課題などの「お題」が役員から示され、8月末までに社員がビジネスアイデアを売り込む。9月に1次審査が行われ、これをクリアすると500万円の活動費を与えられる。

   担当役員は企画の「オーナー」となり、経営会議に提案する翌年2月までの3か月間、社員と一緒にプランを練り上げる。グランプリ賞金は200万円。提案リーダーはリクルートおよびグループ会社の社員であれば部署は問わず、他部署・他グループ会社の社員とグループを作ることができる。

   興味深いのは、「入社内定者」でも提案ができることと、提案メンバーに社員以外の参加も許されていることだ。

「新規事業提案を行う上で足りないスキルがあれば、それを持つ社外の方をメンバーとして引き入れて一緒に提案するチームは非常に多い。数年前には内定者が準グランプリとなり、社員に大きな刺激を与えましたよ」(「New RING」事務局の松尾奈美さん)

   社内で事業化される場合が多いが、エモーチオのようにリクルートと提案者が共同出資をして新会社を設立し、別会社として事業を運営することもできる。役員のお題には「○○をターゲットとしたビジネス」といった具体的なものから、「リクルートが他社にやられたら嫌なこと」といった抽象的なものまで幅広くある。

「リクルートは、社員が自分の思いやアイデアを具現化する場。『New RING』は、それを評価し、体現する制度にしたいと思っています」

要求される「圧倒的な当事者意識」

リクルート人事支援室ゼネラルマネジャーの後々(ごご)朋広さん
リクルート人事支援室ゼネラルマネジャーの後々(ごご)朋広さん

   グランプリを受賞するグループに共通するのは、市場の見立てやビジネスモデルの筋のよさだけではない。刻々と変化する事業環境の中で、仮説と失敗の繰り返しにめげず、粘り強くやり遂げるグループが評価されることが多いという。

「もちろん提案内容の確からしさも大事ですが、それ以上に審査員はチームの本気度を見ているのだと思います。人生を賭けて実現したいビジョンを持つメンバーと、それを応援したいと思う審査員。改めてNew RINGは自己実現の場なのだと感じています」(松尾さん)

   一般的な会社では、新規事業案がいろいろな部署から自発的に上がってくることは珍しいが、人事支援室の後々朋広さんに聞くと、企画提出自体には特にインセンティブを設けていないという。

「この会社では、入社してすぐに『君は何をやりたいの?』と尋ねられます。個人の意志を問い、やり切らせる企業文化なので、自分がやりたいこと、すべきことは何かと常に自問しているし、そういう考えを持つ人にとって面白い会社だと思います」

   新入社員が上司から頼まれた仕事をしていると、「君、何でこの仕事をしているの?」と聞かれるそうだ。最初のうちは「人にモノを頼んでおいて、何を言うのか」と面食らうが、そのうち仕事の意味を理解し、自分のものとしてやっているかどうかを問われていると分かるようになる。要求されるのは「圧倒的な当事者意識」だ。

   もしも自分の思いと仕事がかみ合わなくなった人のために、「フロンティア制度」という退職後のキャリア支援策も準備されている。新卒入社の場合は6年半以上、中途入社の場合は5年以上の勤続で、退職時に直近の年収1年分が支給される。

   前述したエモーチオは、林さんをはじめ、「New RING」に立案したメンバー7人全員が退職し、新会社で運営を行っている。林さんは、「ベンチャーキャピタルから資金提供を受けるより自由が利きやすいし、間接部門のサポートも含めて会社のリソースを大いに使えるので、やりたいことのある人にはオススメです」と笑う。

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