休日に仕事のケータイ電話 「気が休まらない。電源切りたい!」

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   パソコンにケータイ電話、スマートフォン…。仕事の環境は高度化し、コミュニケーションの手段は便利になる一方だが、なぜか「仕事が楽になっている」気がしない。

   ある会社では、時間を問わずケータイ電話に連絡を入れる上司に、若手社員が「気の休まるヒマがない」と音を上げている。

無視すると「電話に出んか!」とショートメール

――関東に本社を置く中堅メーカーの人事担当です。先日、営業担当のA君から「上司の課長のことで参っている」と相談を受けました。

   仕事熱心な課長は、気になることがあるとすぐに部下に電話をかけるクセがあるのだとか。それも平日の終業後だけでなく、会社が休みの日でもお構いなし。

   「共有パソコン使いたいんだけど、パスワードなんだっけ」「お客さんからクレーム入ったんだけど、至急確認してくれないか」といった緊急性のある内容ならまだしも、

「いま車に乗ってて、思いついたんだけどさ」
「そういえば、さっきの打ち合わせで言い忘れたんだけど」

といった不急の用事まで電話をかけてくるのだそうです。しばらく無視していると、「電話に出んか!」とショートメールが送られてきます。

   特に耐えられないのは、休みの日にケータイにかかってくる電話。当社は第2土曜日を出勤日にしているので、その週の休みは日曜日だけ。A君は、

「なけなしの休みに、外出中にかかってくるかもと考えると、本当に気が休まらない。電源を切らせてもらいたい」

というのですが、課長に聞くと「お客から急なクレームもあるんだから、出られるようにしてもらわなければ困るよ」。

   A君は「電話に出たら出勤日扱いにしてもらいたいくらい。少なくとも電話に出た分の残業代と休日出勤代は必要ですから」と腹を立ててしまいました。仕事の用件とはいえ1回数分の電話のために、そんなお金を払う必要があるんでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
1分単位でカウントし割増賃金を支払うのが原則

   就業後や休日に仕事に関する電話応対をさせる場合、かける方は「たかが数分」と考えがちですが、受ける方の負担は意外と重いものです。積もり積もると思わぬ長時間になる場合もあるので、1分単位でカウントし、時間外・深夜労働(通常の時給の25%増し)または休日労働(同35%増し)を支払うのが原則です。このことを課長に伝えたら、不急の電話やメールを控えてくれるようになるかもしれません。

   なお、月締めの集計時に、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる端数処理が行政通達によって認められています。A君の場合は、集計すると30分未満になってしまうこともあるかもしれませんが、「常に電源を入れておいて欲しい」とお願いする限り、極力切り捨てない運用をしてあげる考えもあるかと思います。キャビンアテンダントやシステムエンジニアに、対応の有無にかかわらず休日待機・対応分の手当てを支払っているところもあるようです。

臨床心理士・尾崎健一の視点
便利になったからこそ、節度をもった働き方を

   例えば上司から顧客クレームに関する電話がかかってきたとき、それを受けて報告を行ったり、顧客に説明の電話をかけたりする必要が出てきます。合計で10分から20分だったとしても、プライベートの時間に急な仕事の対応が割り込むことによるストレスもありますし、「電話を取り損ねたら大変なことになる」と思うと心理的負担は大きくなります。責任感の強い部下なら「遠出はもちろん、映画館にも不安で入れない」と考えてしまう人もいるでしょう。これでは身体を壊しかねません。

   仕事の種類にもよりますが、原則は「就業時間外には電話対応をさせない」こととし、顧客からの電話もまずは上司が受けて、不急の場合には「休み明けに連絡させますので」ということにすべきでしょう。なお、上司によるケータイへの頻繁な連絡は、行き過ぎるとハラスメントになるおそれもあります。ケータイ電話やメールによって連絡が格段に便利になったからこそ、節度を持った働き方を意識すべきです。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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