パートタイマーに「正社員の給料高すぎ」と文句を言われました

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   企業で働く「非正規」従業員の割合が、4割近くにのぼっているという。仕事の繁閑に対応し不安定な雇用契約で働くのだから、時給換算で正社員より高くてよいはずという意見もあるが、現状はその逆だ。

   ある会社では、パートタイマーが同じラインで働き始めた新入社員の給料が高いことを知り、待遇のアンバランスに不満を抱いているという。

「私たちも同じくらいもらってもいい」

――食品工場で総務を担当しています。先日、パートタイマーのAさんが、自分たちの待遇を見直して欲しいと直談判してきました。

   Aさんはパート主婦たちのリーダー格。仲間のひとりが一緒にラインで働いている新入社員の給料を知ってしまい、それがパートの間で広まって不満が高まっているというのです。

   うちの工場も、昔は正社員中心で回していて、パートは補助的な役割と位置づけられてきました。しかし景気が悪くなり中国との競争も厳しくなる中で、徐々にパートの割合が増え、仕事の内容も重くなってきました。

   また、パート主婦の給料は、これまで夫の収入の補助的なもので、給料が少なくても「まあ仕事があるだけマシよね。ヒマよりいいし」と、不満もいわずに働いてくれていたのです。しかし、リーマンショック以降は夫がリストラや給料カットに遭う人もいて、

「なんでパートと同じ仕事をしてるのに、正社員の方があんなに給料が高いの?私たちも同じくらいもらってもいいはずですよね。もし会社の懐が厳しいのなら、正社員の方を下げればいいんじゃないですか」

などと待遇のアンバランスをシビアに見る人も出てきました。

   念のため工場長に報告すると、「うちでパートをやりたい主婦はいくらでもいるんだ。それに、これ以上コストを上げられないよ」とつれない返事。このまま放置していていいものでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「パートだから」という理由だけで差別はいけない

   パートタイマーと正社員が、もしもまったく同じ役割をもって、同じ仕事をしているのに賃金に差があるとしたら、それは不公平で理不尽なことです。2008年4月1日に施行された改正パート労働法では、そのような差別的な取扱いを禁止し、「パートタイマーだから」という理由だけで基本給を正社員より低くすることは認められなくなりました。もしもそのような取扱いが残っているようでしたら、速やかに是正をしてください。

   ただし、同じ仕事をしているからといって、ただちに基本給を揃えなければならないというわけではありません。責任の度合いや転勤、配置転換の有無などの労働条件、契約期間の定めの有無を総合的に判断し、待遇が異なる合理的な理由があれば、差をつけることは可能です。たとえば新入社員が現場研修の意味で、一定期間現場で働いているだけなのであれば、基本給の違いは認められるでしょう。また、能力の高いパートタイマーには、正社員への転換の道を作るのも一考だと思います。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「同一労働・同一賃金」に挑戦する会社もある

   テレビ番組などでも紹介されていますが、メガネ販売で広島県トップシェアの「メガネ21」という会社は、正社員やパートタイマーといった「身分」による差別を撤廃し、「同一労働・同一賃金」方式を採用しているそうです。時給で働く人も日給で働く人も、男性でも女性でも、勤務年数が同じで同じ時間を働けば、同じ給料を支払うというやり方です。成果主義を理想とすれば不公平という見方もあるでしょうが、待遇に差をつけて社員を競わせることをよしとしない考え方も認められるのではないでしょうか。

   この方針について、会社はウェブサイトで「ほとんどの企業は、『顧客の満足』を第一優先にあげていますが、社員は売上ノルマに追われ、社畜状態」「社員が不幸なのに、お客様を幸せにできるはずはない」と説明しています。パートタイマーなんて使い捨てで当たり前、それが自社のビジネスモデルだと思い込んでいる経営者は、このような会社を参考にして自社のやり方を見直してみてはいかがでしょうか。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

「同一労働・同一賃金」、賛成ですか?
正社員優遇は当然
非正規の方を高くして
同じ能力なら同じ時給を
尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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