あの会社は「ルックス」で採用しているに違いない

印刷

   不景気で就職、転職環境が冷え込み、求職者の競争が激化している。個人の適性や能力をきちんと評価し、公正な採用選考を行って欲しいものだが、思うように就職先が決まらないと、いろいろと疑心暗鬼にもなる。

   ある会社の採用選考に落ちた女性は、「この会社は求職者の容姿で採用を決めているに違いない」と考え、差別的な扱いをなくすよう訴える場所を探している。

容姿採用は違法じゃないのか、どこかに訴えたい

――転職活動をしている20代女性です。先日、ある広告代理店を受けたのですが、5人くらい採る予定だったらしく、ようやくチャンスが回ってきたと思っていました。

   一次面接を通過し、二次面接は集団面接で、男性5人、女性5人が受けました。女性たちとは帰りにお茶に行き、いろいろ話をして連絡先も交換しました。

   数日後に選考結果の連絡が来ましたが、落ちてしまいました。他の人はどうなったんだろうと思い連絡をしてみたところ、3人は最終選考に進んだようです。

   1つ気にかかったことがあります。残った人たちを思い浮かべると、みんな容姿が良かったんです。面接官もこの3人にはよく質問していました。私ともう1人はそれほど質問されませんでした。

   面接のときの話を聞く限り、受かった3人より私の方が多くのキャリアがあります。面接官から

「この経験があれば即戦力になれますね」

と言われたくらいです。新卒ならまだしも、中途なら容姿は関係ないと思っていたので、残念です。

   こういう差別的な扱いにはすごく納得できません。後に続く人たちのためにも、どこかに訴えたいのですが、受け付けてくれるところはないのでしょうか。そもそも、法律では会社が「仕事に関係ない容姿採用」をすることを禁止していないんでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「外見採用」を確認、指導することは事実上困難

   厚生労働省が示している「採用のためのチェックポイント」は、企業の採用選考は公正に行われるべきであり、「応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しない」ことを求めています。したがって、芸能関係や接客業などを除き、容姿を基準とした採用は「不公正な採用選考」とみなされるおそれがあります。

   とはいえ、実際に容姿採用が行われているかどうか確認するのは簡単ではありません。外見の良し悪しは主観によるところが大きく、「うちは外見で採用していないです」といわれれば証明は困難です。一定の制限はあるものの、会社には採用自由の原則もあります。

   先日、私がハローワークに問い合わせをしたところ、容姿基準の採用に対する明確な罰則はないということでした。もし違反したとしても「指導勧告にとどまる」くらいで「罰金を科せられたケースはない」そうです。どんな場合に指導勧告がありうるかについての答えは得られませんでした。採用された人の理由は、容姿ではなかったかもしれません。自分は容姿が悪いから落ちたと思い込まず、頭を切り替えて別の会社を探した方がいいのではないでしょうか。

臨床心理士・尾崎健一の視点
仕事を丁寧にやりそうな「好感」に焦点を当てる

   人間には、ある顕著な特徴があると、それにひきずられて他の特徴の評価がゆがめられることがあります。これは「ハロー効果」と呼ばれます。学歴が高いだけで人格的に優れていたり仕事の出来がよいと思われたりするのも、この心理的作用によるものです。このような認知バイアスは、相当意識して排除しないと修正が難しいので、容姿が特別に優れた人が採用選考に有利になることは現実にありうるかもしれません。

   とはいえ、モデルのような美形ばかり採用しても、会社は業績を上げることができないでしょうし、そういう人しか就職できないわけでもありません。ルックスを広い意味で「対面した印象」と捉えると、重要なのは単なる美醜だけではない「好感」であることが分かります。質問への対応の仕方、仕草や笑顔、自己表現などの総合が好感をもたらします。姿勢がよいだけできちんとしている人に見られやすいですし、清潔感のある服装や髪型は、生活の質や、仕事を丁寧にやってくれるかどうかの判断材料となります。これらの多くは容姿とは違い、自分で修正できる余地が大きいものです。日頃の生活態度を見直して「好感」を磨きましょう。


>>ヨソでは言えない社内トラブル・記事一覧


(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

お知らせ

注目情報PR
追悼
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中